1923(大正12)年生まれだから満89歳だ。
1月13日夜、民進党の総統選挙対策本部がある新北市板橋の第一体育場で開かれた選挙戦
最後の蔡英文候補の集会には8万人を超える人々が押し寄せた。小雨がぱらつき、かなりの
寒さだったにもかかわらず、午後6時から始まったこの集会には続々と支援者が駆けつけ、
瞬く間にスタンドまでぎっしりと埋まった。
あと一時間ほどで集会も終わりというころ、蔡氏が登壇して会場は大変な盛り上がりを
見せた。ところが、もっと会場をわかせた場面が最後の最後に飛び出した。蔡氏や副総統
候補の蘇嘉全氏、謝長廷氏や蘇貞昌氏ら歴代の主席経験者など全員が立ち並んだ舞台に、
突如、李登輝元総統が登壇した。午後9時15分だった。
舞台の左袖から、マフラーをまいた李元総統がにこやかに手を振って登壇するや、会場
には地響きが走るほどの熱狂が渦巻いた。術後、公の場への初めての登場がこの集会とな
った。李元総統が「これからの台湾は君たちに任せたい」と演説、それから蔡氏と蘇氏の
腕を取って高々と掲げ、蔡氏をひしと抱きしめる。慈父が愛娘を胸に抱いたようで、蔡氏
は今にも泣き出さんばかりだった。
この場面は、「独立媒体」というインターネット放送がYouTubeにアップしているので、
下記からご覧いただきたいが、会場を埋めた人々は誰もが、これで蔡氏の勝利を確信した
はずだ。
しかし、結果は周知のとおり、予想を超える80万票近くの差が開いて馬英九候補が勝利
した。どうして負けたのか、李元総統は17日、台北市内の台湾料理店において台湾メディ
アと懇談し、敗因について語った。昨日の産経新聞がそれを伝えているので紹介したい。
台湾の報道によれば、この席で李元総統は「また頑張ればよい、次は勝てる」と述べた
という。また「集会場での演説などを思い出し、感極まった様子でしばし言葉に詰まる場
面も見られた」というが、満89歳を迎えた李登輝元総統の心からの「愛台湾」に触れたよ
うで改めて敬意を表したい。
◆ 李登輝:讓蔡英文帶領國家實現人民的願望【獨立媒體】
http://www.youtube.com/watch?v=1rNdgwGE3lw&feature=youtu.be
李登輝元総統が「大企業の支持などが影響」と分析
【産経新聞:平成24(2012)年1月18日】
【台北=吉村剛史】台湾の李登輝元総統は17日、台湾メディアとの食事会で、総統選の
結果に関し、馬英九総統が再選された背景には「(対中ビジネスを手がける)大企業が相
次いで支持」したことがあり、最大野党・民主進歩党の蔡英文主席の敗因は「陳水扁政権
時代の腐敗の印象が影響した」と総括した。
さらに春節(旧正月)直前の投開票日程は、「期末試験の学生や労働者が帰郷投票でき
なかった」と問題視。一方、馬氏が訴えた「中台関係の安定」が勝利に結びついたかどう
かは「一般有権者は生活への影響をあまり感じていない」として否定した。
李氏は総統選最終盤では民進党の集会で壇上に立つなど蔡氏を応援。「民主社会なので
仕方がない」と結果を受け止めつつも、前回から大幅に票差を縮めた民進党は「次回は勝
てる」とし、2016年総統選への期待をみせた。