河崎眞澄著『李登輝秘録』が文庫となりお求めやすく

 本会に入会を希望する方や入会直後の方などから、よく「台湾について知るために一番いい本はなんですか」と質問される。

 そのときは、必ず司馬遼太郎著『台湾紀行』と蔡焜燦著『台湾人と日本精神』を紹介している。内容的に優れているという理由はもちろんだが、両書とも文庫版があるので廉価で手に入れられるということもある。本会では、どれほど内容が優れていても5,000円を超えるような高価な本はお勧めしていない。

 李登輝元総統が亡くなる直前の2020年7月、李元総統自身が「日本の新聞記者が冷徹な目で、台湾がたどった民主化への苦難の道を、ここまで明確に綴った記事は例がない」と推薦の辞を寄せた、当時、産経新聞論説委員だった河崎眞澄氏の『李登輝秘録』が出版された。

 このほど文庫となった。出版当時、本会会員にもお勧めしたが、本書には李登輝に関する知られざる秘話とともに、台湾が民主化に成功した軌跡も解き明かされている。

 新聞記者らしい読みやすい筆致なので、政治や歴史に関心のある初心者なら十分に理解できる。

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—————————————————————————————–『李登輝秘録』河崎眞澄著 台湾民主化にかけた生涯【産経新聞:2023年9月30日】

『李登輝秘録』河崎眞澄著(産経NF文庫・1150円)

 台湾の李登輝元総統が97歳で死去して3年余りがたった。中国の圧力にさらされ、台湾と日本はいまも激流の中にいる。李氏は現代の日本人よりもずっと古式ゆかしく端正な日本語を用いて、「日本はアジアの、世界のリーダーでなければならない」と日本人を鼓舞してきた。

 台湾と上海という海峡の両岸で産経新聞支局長を歴任した著者は本書で、李氏が大正から令和へと生き抜いた軌跡をたどり、その生涯を通じて台湾と日本を考えることで、中国や米国など関係国も含む地域の近現代史を浮き彫りにしている。

 著者は、李氏や関係者の証言、新たに発掘した資料などから、これまでほとんど知られていない「史実」も掘り起こした。中でも1995年、中国が台湾沖に向けて軍事演習と称し、弾道ミサイルを発射して武力威嚇。李氏の側近を通じて、その舞台裏に迫る場面は読み応えある。

 来年1月に投開票される次期総統選の結果は、台湾の趨勢(すうせい)を決める重大な分岐点になる。民主主義を求める国際社会のあらゆるリーダー、そして市民が、祈るような気持ちで選挙戦の行方を見守っている。李氏が生涯をかけた台湾民主化の歩みを、いまこそ本書でかみしめたい。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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