江ノ電と平渓線がつなぐ日台交流PVが完成  まるやま もえる(映像作家・ライター)

黒部峡谷鉄道と阿里山森林鉄道が姉妹提携したのは2年前の2013年4月20日だった。その直後の4
月23日、江ノ島電鉄と平渓線が観光連携協定を結んでいる。以来、平渓線もしくは江ノ島電鉄の使
用済み一日乗車券を、もう一方の路線の指定駅で提示すると、当日使用可能な一日乗車券と交換す
るサービスを行ってきている。

 その利用者数は、新北市観光旅遊局によると、今年4月末までに1万人近くに達していると好評
だ。昨年も1年間の延長措置がとられたが、今年も来年3月31日まで再延長されることになった。

 江ノ島電鉄はこの人気をさらに盛り上げようと、台湾との交流を促すプロモーションビデオ(P
V)制作を映像作家のまるやまもえる氏に依頼、このたびPV「旅をしませんか 要一起去旅行
[口馬]」が完成した。まるやま氏がPVの内容や台湾人観光客に人気の江ノ電についてつづってい
るので下記に紹介したい。

◆旅をしませんか 要一起去旅行[口馬]〜台湾/平渓線・日本/江ノ電編〜【5分】
 https://youtu.be/ejq3HoHCIX8

 まるやま氏は江ノ電以外にも、日本のローカル線が台湾のローカル線と姉妹提携していることを
紹介している。本誌では何度か紹介しているが、改めて紹介してみたい。

 ちなみに、江ノ電と平渓線と同じように、阿里山森林鉄道と黒部峡谷鉄道も無料乗車券相互交換
キャンペーン(2015年4月28日〜11月30日)を実施し、西武鉄道と台湾鉄路管理局は6月9日の「鉄
路節」(鉄道の日)に合わせて記念乗車券を日台同時に販売する。

 また、秋田の鳥海山ろく線を運営する由利高原鉄道も姉妹鉄道協定1周年を記念した乗車券を発
売中で、平渓線を運営する台湾鉄路管理局も6月9日の「鉄路節」に鳥海山ろく線の列車を印刷した
記念切符を発売する予定だという。

1)1986年01月25日 大井川鐵道と阿里山森林鉄道が姉妹鉄道提携
2)2013年04月20日 黒部峡谷鉄道と阿里山森林鉄道が姉妹提携
3)2013年04月23日 江ノ電と平渓線が観光連携協定
4)2013年10月13日 JR四国の松山駅と台湾鉄道の松山駅が姉妹駅提携
5)2014年04月30日 秋田の鳥海山ろく線(由利高原鉄道)と平渓線が姉妹鉄道協定
6)2014年10月28日 千葉のいすみ線と集集線(台湾鉄道)が姉妹鉄道協定
7)2014年12月22日 山陽電鉄と宜蘭線(台湾鉄道)が姉妹鉄道協定
8)2014年12月22日 山陽電鉄の亀山駅と宜蘭線(台湾鉄道)の亀山駅が姉妹駅提携
9)2015年02月12日 東京駅と新竹駅が姉妹駅提携
10)2015年02月26日 京浜急行電鉄と台湾鉄路管理局が友好鉄道協定を締結
11)2015年03月14日 西武ホールディングスと台湾鉄路管理局が友好協定を締結
12)2015年03月14日 西武鉄道が台湾鉄路管理局と姉妹鉄道協定を締結


まるやま もえる(映像作家・ライター)
日本と台湾 『旅をしませんか』江ノ電と平渓線がつなぐ日台交流PVが完成
【ハフィントンポスト:2015年4月28日】

http://www.huffingtonpost.jp/moeru-maruyama/japan-taiwan_b_7148824.html

 鎌倉〜藤沢間を走る人気ローカル線・江ノ島電鉄(以下、江ノ電)から依頼を受け、台湾との交
流を促すショートムービーを制作した。

 音楽は、楽曲を通して江ノ電とも縁の深い「空気公団」。

 今回のために代表曲「旅をしませんか」に中国語の歌詞を加えて、セルフリメイクしていただい
た。

 キーをあげて明るい雰囲気になった山崎ゆかりさんの声と、ゲストボーカルとして参加した台湾
人歌手、シ・インイン(史茵茵 Ying-ying Shin)さんの声が絶妙にマッチしていて、とても気持
ちの良い女性ツインボーカルに仕上がっている。

 それにしても、神奈川を走るローカル線の江ノ電が、どうして台湾との交流を促すPVをつくっ
たのか。

 実は江ノ電では、2年前から台湾のローカル線・平渓線と「乗車券交流」というキャンペーンを
相互に行っており、江ノ電の1日乗車券「のりおりくん」の使用済みチケットを持っていくと、平
渓線の1日乗車券と。平渓線の使用済み1日乗車券を持ってくると「のりおりくん」と、それぞれ交
換してもらえることになっている(つい先日、期間が2016年3月末まで延長された)。

 特に台湾からの利用客が予想以上に多く、ゴールデンウイーク前後には1万人を突破する見込み
なのだという。

 乗車券交流の発案者である、江ノ島電鉄観光企画部部長代理・中沢俊之氏の話し。

「はじめに台湾鉄路管理局から『観光鉄道のつながりでなにかできないか』と打診をいただいたこ
とがきっかけで、この『乗車券交流』というアイディアを思いつきました。おそらく世界的にも前
例のない施策だと思いますが、おかげさまで大変好評をいただいております。

 実のところ内訳は台湾からのお客様が95%を占め、訪台はわずか5%に過ぎないというアンバラ
ンスな状態ではありますが、こうした取り組みを継続していくことがインバウンド(訪日外国人旅
行者)誘客のさらなる拡大につながると考えています」

 「乗車券交流」とはいうものの乗車券の価格は江ノ電の方が高いため、平渓線からの利用客のほ
うがかなりお得になる(つまり江ノ電側の負担が大きい)のだが、江ノ電側にメリットがないわけ
ではない。

 というのも、ここ数年で江ノ電は台湾人観光客が非常に増えているからだ。

 特に人気なのが漫画「スラムダンク」の舞台となったことで知られる鎌倉高校前駅の踏切で、こ
こでは平日の日中でも、アニメの舞台を背景に記念撮影をする若い台湾人観光客の姿で賑わってい
る。

 この機会に彼らに一日乗車券を使ってもらい、江ノ電周辺の魅力を充分に味わってもらうこと
は、やがて何倍もの価値となって江ノ電に返ってくるに違いない。

 江ノ電に限らず、ここ数年の日本人と台湾人は、まるで相思相愛の恋人のようだ。

 日本の書店では、ハワイやオーストラリアなど人気観光地を凌ぐほどの台湾ガイド本が並び、特
に女性向けの雑誌では頻繁に台湾特集が組まれている。

 また台湾からの訪日外客数(観光客・商用客・その他客の合計)も増加の一途をたどっており、
2012年には1,465,753人だったのが、2014年には2,829,821人とほぼ倍増。

 同様に中国が1,425,100人から2,409,158人に増加しているが、総数では台湾が上回ってさえい
る。人口比で考えた場合、台湾人の日本好きは突出していると言っていいだろう。

 ちなみに韓国からの訪日外客数は2,042,775人から2,755,313人と微増にとどまっている。(出
典:日本政府観光局 ※2014年のデータは暫定値)

 江ノ電の取り組みが一定の成果をあげたことが影響したのか、同様に日台の鉄道が提携するケー
スも増えている。

 2014年には、千葉のローカル線・いすみ鉄道と集集線、山陽電車と宜蘭線がそれぞれ姉妹鉄道協
定を結び、今年に入ってからは京浜急行電鉄と西武ホールディングスが、それぞれ台湾鉄路管理局
との友好協定を結んだ。

 また駅レベルでは、JR四国の松山駅と台鉄・松山駅、JR東日本の東京駅と台鉄・新竹駅が友好関
係を結んでいる。

 集集線、宜蘭線などは平渓線同様に、独特のローカルな雰囲気があり、鉄道写真マニアにとって
も非常に魅力の高い路線といえるだろう。

 ローカル線から拡がる日台の新しい友好の行方に期待したい。


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・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
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