日本の台湾報道で光っていたのは、産経新聞の矢板明夫・台北支局長の記事だったのではないだろうか。
また、ネイティブの中国語を話す矢板記者の中国分析の鋭さから、台湾でもテレビに引っ張りだこで、いまや台湾で矢板記者を知らない人はいないだろうというくらいよく知られた名物記者だ。
その矢板記者が本日付で退社するという。
今朝の産経新聞「台湾有情」で触れていた。
矢板記者は、中国・天津市生まれの中国残留日本人2世。
慶應義塾大学文学部卒業後に松下政経塾に入塾(第18期)し、中国社会科学院大学院博士課程修了後に産経新聞に入社している。
2007年から10年間、中国総局特派員をつとめ、2017年からの東京本社外信部次長を経て2020年4月から台北支局長をつとめていた。
本会は今年1月に、新型コロナウイルスの蔓延時期をはさんで4年ぶり日本李登輝学校台湾研修団」を再開した。
秋口に実施予定の次回の研修団では矢板記者にも登壇していただこうと考えていた。
産経新聞で矢板記者の記事を読めなくなるのは残念だが、下記にご紹介する「台湾有情」では、このまま台北に残って執筆活動は続けると書いていたのでホッとした。
この「台湾有情」にもよく表れているように、台湾人の心に寄り添う記事が矢板記者の真骨頂だったと思う。
正念場を迎えた頼清徳政権矢板 明夫(産経新聞台北支局長)【産経新聞「台湾有情」:2024年5月30日】 https://www.sankei.com/article/20240531-XFVMTJOGINMSDNGI4J7YI43FDU/?104603
28日の夕方、小雨がちらつく中、台北市中心部の立法院(国会に相当)の周辺道路は人波で埋まっていた。
この日、立法院の権限を強化する法案を、多数派の野党勢力の主導により短期間で可決したため、少数与党、民主進歩党の支持者ら約2万人が集まり、抗議デモを行っていた。
この法律が施行されると、総統や行政院(政府)の権限が大幅に縮小される。
抗議者たちが最も懸念しているのは、中国の習近平政権が対中融和的な野党勢力を利用して、台湾の政治中枢に対する影響力を拡大することだ。
「台湾を香港にしてはいけない」と涙を浮かべて訴えていた20代男性の姿が印象的だった。
中国政府はわずか数年で、自由と民主主義に基づく香港の社会制度を、異論を許さぬ「中国式」へと強引に改造した。
今は、その牙を台湾にむき始めている。
20日に発足したばかりの頼清徳政権は、いきなり難しい場面に立たされ、その行く末を案じる人が多い。
ところで、今月末に22年勤務した産経新聞を卒業することになった。
台北に残り、台湾海峡の情勢変化を観察しながら引き続き執筆活動をしていく。
北京に10年、台北に4年駐在し、読者の皆さんに支えられた充実した記者人生だった。
また、何かの機会にお目にかかりたい。
(矢板明夫)。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。