ご案内のように本会は8月30日、林省吾氏(日本台湾基進友の会会長)を講師に招き、東京文京区内において第98回台湾セミナーを開催した。
林省吾氏は、中国国民党の立法委員31人と新竹市長を対象とした大罷免運動は、1人もリコールできず不成立に終わった敗因について、大罷免運動は住民運動からはじまったにもかかわらず、運動の主導権が住民から政党に握られたことで「立法委員として適任かどうか」という焦点がボケたことにあったとし、また、民進党が乗り出してきたことで若者たちが投票を抑制したとも指摘。
不成立は現状維持でもあり、収穫は、国民党の資源をけずったことや立法院の暴走を半年間止めたこと、凍結予算の一部を解凍したこと、若いお母さんボランティアが政治活動経験を積んだこと、台湾人アイデンティティがさらに形成されたことなどを挙げた。
一方、国民党は朱立倫主席が凱歌をあげつつも主席の辞意を表明し、次期主席に盧秀燕・台中市長を挙げるも盧市長は拒否。
結局、国民党を牛耳っているのは親中派の「花蓮王」こと傅●■立法委員(党団総召集人。
国会対策委員長に相当)であることがあぶり出され、このことも運動の成果だと強調した。
(●=山偏に昆 ■=草冠に其)
また、不成立だったからと言って、中国による浸透工作が止まるわけではなく、前へ進むようにしたいと述べ、中国による浸透工作の実態についていろいろな例を挙げて説明した。
驚いたことに、台湾の若者たちに捲舌音(巻き舌)を交える者が増えていることや、民衆党は比例区当選の8人を次の半期で入れ替えるが、その中に李貞秀という中華民国籍の中國人妻もいることを紹介。
また、テレビ愛知の番組が本人が話していない「蒋介石は台湾民主化の父」などと翻訳に紛れ込ませた事件や、台北市内で五星紅旗をかざしながら「台湾は中国のもの」と街頭演説した日本人のことも紹介、中国の浸透工作は台湾ばかりでなく日本にも及んでいると言及した。
大方の参加者は、台湾の中国国民党や台湾民衆党に中国の魔の手が深く静かに伸びていることを知り、大罷免運動を起こさなければならなかった理由に納得したようだった。
台湾新聞の記事を下記に紹介したい。
国民党の立法委員らに対するリコールはすべて不成立李登輝友の会がセミナー開催 林省吾氏が講演【台湾新聞:2025年9月1日】https://taiwannews.jp/2025/09/%e5%9b%bd%e6%b0%91%e5%85%9a%e3%81%ae%e7%ab%8b%e6%b3%95%e5%a7%94%e5%93%a1%e3%82%89%e3%81%ab%e5%af%be%e3%81%99%e3%82%8b%e3%83%aa%e3%82%b3%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%81%af%e3%81%99%e3%81%b9%e3%81%a6%e4%b8%8d/
【東京訊】日台友好団体の「日本李登輝友の会」は8月30日、東京都内で第98回セミナーを開催した。
今回は「日本台湾寄進友の会」の林省吾会長が、7月26日、8月23日に投票が行われた「大罷免(リコール)運動」について講演した。
台湾寄進は台湾で2016年に成立した独立派の政党。
民進党に協力的な立場をとっている。
セミナーには約40人が集まり、熱心に耳を傾けた。
昨年1月の立法委員(国会議員、定数113)の選挙で、与党の民進党は51議席にとどまり、野党側(国民党52議席、民衆党8議席)を下回った。
このため、「総統は民進党、国会は野党」というねじれになっている。
親中派の国民党を中心に、野党側は頼清徳政権を掣肘(せいちゅう)する法案を次々と国会に提出したほか、今年1月には防衛力強化をめざした政府予算案を大幅に削減する修正案を強行採決した。
こうした状況に反中派の市民団体などが反発して、公職選挙人員罷免法に基づいて、国民党議員31人と新竹市長を罷免対象として大罷免運動が始まり、「反共護台」(台湾を中国から守ろう)をスローガンに全土で盛り上がった。
事前の予想では、過去の総統選挙などの得票率では民進党は40%ほどにとどまり(2024年総統選挙の頼総統の得票率は40.05%)、当初から罷免の成立が危惧されていた。
このため、頼政権がなぜ大罷免に踏み切ったか疑問がわく。
林氏はこうした疑問に「大罷免運動は(上からの)民進党主導で始まったのではなく、下からの市民レベルから起こってきた」と説明した。
林氏は運動期間中、台湾各地の市民団体の事務所を回ってきたとして「運動を担っていた人々の中に、今まで政治活動に参加したことがないような20代、30代の女性が目立っていた。
私の推測だが、親中路線に走る国民党が頼政権の足を引っ張っている状況に、母親たちが自分の子どもの未来を考え、危機感を持ったのではないか」と現地取材の感想を語った。
林氏は大罷免運動の背景に民進党内部の問題もあったとして、「頼清徳総統と、国会議員団をまとめる立場の柯建銘・総召(院内総務)に確執があり、柯氏が大罷免に乗り、頼総統が(民進党の)国会議員団をコントロールできなかった」と説明した。
国会議員31人が罷免対象となった国民党は受けて立った。
結局、与党、野党とも党を挙げての全面対決になった。
投票の結果は事前の予想通り、すべて罷免は不成立になった。
頼政権には打撃となり、林氏は「頼清徳総統は、政権運営はいっそう困難になった。
それでも今まで政治活動に参加したことがなかった市民が参加した意義は大きい」と結論付けた。
台湾メディアによると、すべて不成立の結果を受けて、国民党の朱立倫・党主席は記者会見を開き、事実上の勝利宣言を行った。
そのうえで、「おごる(頼清徳)政権に対して人民が警鐘を鳴らした」、「台湾は二度と(政治的な)空転を起こしてはならず、分裂してはいけない」などと述べて、大罷免に走った民進党を強く批判した。
市民の中には「国民党議員に少し緊張感をもたらせた。
大罷免運動は悪いことではなかったと思う」という指摘もある。
次の大きな与野党対決は、来年11月の全22県市で行われる県市長・地方議員を選ぶ統一地方選挙となる。
2025.09.01
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