ある林建良氏(メルマガ「台湾の声」編集長、台湾団結連盟日本代表)が「『台湾独立』
の秘策はチベット族、ウイグル族との連携にある」と題し、烈々たる論考を発表してい
る。
馬英九政権後の台湾をテーマに、台湾と中国の急接近が今後どういう展開を見せてい
くのか、「92年コンセンサス」を中国が受け入れた狙いを明らかにしつつ、台中直行便
協定は「台湾の投降文書」とズバリ指摘。
また、林氏がさりげなく「尖閣列島の日本領海で起きた」と書く6月10日未明の台湾
遊魚船と海保巡視船との衝突沈没事故については、中国の影が見え隠れしていることと
ともに、「非は台湾側にあるにもかかわらず……日本政府は事件当初から極めて低姿勢
で臨み、領海を侵犯されながらも賠償と謝罪をしてしまった」ことが台湾に与えた影響
は大きいと指摘する。
なぜなら「中国の力さえ借りれば、日本はすぐに退散するという印象を台湾人に与え
てしまったから」であり、それは頼りにならない「日本よりも中国に近づくことは当然
の選択だとの誤った認識が台湾で広まりかねない」からで、それが中国の「悪勢力」の
跋扈跳梁を助長することになると剔抉し、この問題でこれまでにあまり指摘されていな
い論点を提示している。
林建良氏のこの論考のポイントの一つは、日本人に、台湾に大きな影響力を与えてき
た日本が「中国への配慮ではなく、日本自身の国益の観点に立って、台湾を真正面に見
つめていくことこそ、台湾の国益に合致する」ことを理解してもらうことにある。
そこで、ではこれからの台湾独立派はどうするかという問題を取り上げ、「中華民国
体制打倒という初心に戻るべきだ」として、諄々とその理由を開陳する。この論考の最
大の読みどころと言ってよい。
その具体策として、台湾独立の最大の障害であり、全人類の敵でもある中国を無害化
するために「民主化と少数民族の分離独立運動」を進めていくことを提案している。そ
れがこの論考のタイトルにもなっているのだが、いささか特集「ダライ・ラマ14世に異
議あり」に引き付けすぎたきらいがないでもない。
やはりこの論考の最大のポイントは、なぜ独立勢力と言われた民進党政権下で台湾の
独立建国が進まなかったのかを明らかにした点にあるのではないだろうか。台湾の独立
建国への道筋はまた日本の国益と合致している点にあることを、改めて知らしめてくれ
る。馬英九政権の本質もよく分かる。一読をお勧めしたい。
(メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)
■書名 「わしズム」27号(SAPIO増刊・夏号)
■発行 小学館
■定価 1,100円(税込)
■発売 7月30日
http://www.bk1.jp/product/03029678