れ、「李登輝先生来日の意義」と題して講演しました。
東京神田ロータリークラブの例会は毎週木曜日の昼、九段のホテルグランドパレスで
開催しており、午後1時より30分間を卓話の時間とし、毎回、ゲストのスピーチを行っ
ているそうです。
この日の卓話は、日本李登輝友の会理事で、東京神田ロータリークラブに所属する宇
都宮鐵彦氏の紹介によるものです。
一昨日、東京神田ロータリークラブのホームページにもその要旨が掲載されましたの
で、ここにご紹介いたします。 (編集部)
■東京神田ロータリークラブ
http://tokyo-kanda-rc.jp/
李登輝先生来日の意義
日本李登輝友の会事務局長 柚原正敬氏
日本李登輝友の会は、平成14年に作家の阿川弘之さんを初代会長として設立されまし
た。現在は拓殖大学元総長の小田村四郎会長の下、1500人の会員が所属している台湾と
の交流団体です。
台湾と日本の交流は、1990年代後半から非常に盛んになりました。昨年は116万人が日
本から台湾に行き、130万人が台湾から日本に来ています。ちなみに中国から来た人は80
万人で、母数である人口は中国13億人に対して台湾は2300万人と、大きく違います。こ
れには、愛知万博をきっかけにビザが不要になったことが大きく関係しています。
そんな中で、今回、李登輝さんが来日されました。李登輝氏が正式に台湾の総統に就
かれたのは1990年です。台湾では蒋介石の時代から38年間戒厳令が布かれて、自由な言
論や集会等はすべて禁止されていました。この戒厳令が解かれたのは蒋経国時代の終わ
りの1987年で、蒋経国の死後、副総統であった李登輝氏が総統に就任しました。当時は
彼がどんな政治をするのかと世界中が注目する中で、李登輝氏は憲法を改正するなど次
々と民主化に取り組み、1996年には国民が直接選挙で総統を選ぶという画期的な制度を
導入しました。これは、台湾の民主化を象徴する大きな出来事です。
日本と中国は1972年に日中共同声明を発しています。その中で、中国政府は「台湾は
中国の不可分の領土の一部である」と言っていますが、それに対して日本政府は「理解
し、尊重する」と言っているだけで、「承認する」とは言っていません。ところが、徐
々に「一つの中国」政策なるものが登場してきて、日本政府はそれを尊重するという立
場を取ったため、台湾では民主化が進んでいるにもかかわらず、その現状が認識できな
いという状況が90年代後半まで続いていました。そこで、私どもは新しい台湾との交流
を図るために「日本李登輝友の会」を設立した次第です。
李登輝氏はご存じのとおり京大の農学部を卒業されています。その後、今回を含めて
5回来日していますが、平成13年には岡山で心臓のカテーテル手術を受けようとしたの
に対して、政府の許可が出たのは来日直前でした。今回の来日は後藤新平賞の受賞式に
出席されるためでもあったのですが、李登輝氏は以前から靖国神社に参拝することを希
望されており、飛行機の中でそれをマスコミに発表されたために、日本に到着されてか
らの記者会見ではそのことに質問が集中してしまいました。
そのときに「一緒に参拝しませんか」と声を掛けてくださったのが、作家の曽野綾子
さんです。曽野さんは李登輝氏と同じくクリスチャンで、李登輝ご夫妻とは台湾の大地
震の際に日本財団の理事長として義援金を持って行かれて以来のおつきあいだそうで、
「クリスチャンが靖国神社に参拝して悪いわけがないし、まして李登輝さんは実兄をな
くしておられるご遺族なのだから」とおっしゃっていました。このときもマスコミが大
きく取り上げて書き立てたので中国が反発してくるだろうと思っていたのですが、予想
に反して何も起こりませんでした。当時の安倍首相は「人には信仰の自由があるから」
とおっしゃったのみです。
今回の来日で、李登輝氏は講演と東京訪問、記者会見、奥の細道の散策、そして靖国
神社の参拝を実現されました。奥の細道に関してはまだ半分回られただけなので、ご本
人も「次回に持ち越しますが、そのときはよろしく」とおっしゃっています。ただし、
本来はどこを訪問されても、誰とお会いになっても構わないはずで、政治家や閣僚との
面談についてはまだ実現していません。
日本政府の台湾に対する姿勢を見ていると、平成14年以降、台湾を容認する方向に変
わってきたように思います。例えば台湾の運転免許があれば日本でも運転ができるよう
にするなど、中国とは違った措置を取り始めました。今後、台湾自体が揺れる可能性も
ありますが、日本、アメリカ、オーストラリア、インド等が台湾の動きを支援するよう
な形になれば、台湾の現在の国際的な閉塞状況が破られる方向に動くのではないかと思
っています。そのためにも、私どもは微力ではありますが、皆様のお力添えをいただき
ながら、今後も活動を推進していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。