李登輝元総統追悼:「一国二制度」の欺瞞を見抜いていた李登輝元総統

 李登輝元総統は先見の明があると評され、亡くなられた後もそういう評価を散見します。本会台北事務所のフェイスブックがその一例として、香港が中国に返還される1年以上前の1996年1月、台湾を訪問したイギリスのサッチャー前首相に「台湾が一国二制度を受け入れることは絶対にない」と述べていたことを紹介しています。

 イギリスが1997年7月1日に香港を中国(中華人民共和国)に返還したとき、中国の共産党政権は、香港を一国二制度の特別行政区としてとし、香港の資本主義制度は50年間維持されると自ら声明を出したにもかかわらず、香港返還23年目の本年7月1日、香港国家安全維持法を制定して前言を翻したことは周知のとおりです。

 中国のことをよく知る李登輝元総統は、中国が一国二制度を守るはずがないと見越していたこともさることながら、台湾は事実上の独立国で、一度たりとて中国の統治下に入ったことはなく、香港と台湾の違いを深く認識していた証とも言えるかと思います。

 中国をよく知る蔡英文総統も李元総統の考えを引き継いでいるからこそ、習近平・中国国家主席が2019年1月2日の「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念大会において、台湾に関して平和統一の実現や一国二制度適用、「一つの中国」原則の堅持などを表明した際、間髪を置かず「我々はいまだかつて『92コンセンサス』を受け入れたことがない」「中国に対して、勇気をもって民主主義への一歩を踏み出すよう呼びかける」とする談話を発表できたのだろうと思います。

—————————————————————————————–「一国二制度」の欺瞞を見抜いていた李登輝元総統【日本李登輝友の会 台北事務所:2020年8月12日】https://m.facebook.com/login.php?next=https%3A%2F%2Fm.facebook.com%2Fritouki.tw%2F%3Fref%3Dbr_rs&refsrc=https%3A%2F%2Fm.facebook.com%2Fritouki.tw%2F%3Fref%3Dbr_rs&ref=br_rs&_rdr

 1996年1月17日、英国のマーガレット・サッチャー前首相が台湾を訪問し李登輝総統と会見した。

 香港返還まであと1年半という時期に行われた会談で、李総統は次のように述べた。

「中国は『一国二制度』によって香港を統治するというが、私たち中華民国(台湾)がこの方式を受け入れることは絶対にない。 中華民国(台湾)と香港はまったく異なるものである。(中略)中華民国は台湾に存在し、また存在するだけでなくますます発展している。これは歴史の事実であり決して否定できないものだ」

 当時、現職の総統として中華民国の立場を尊重するため、細心の注意を払いつつ発言していることがよく分かる内容だ。しかし、李登輝総統がこの時点でもはや中国の「一国二制度」の欺瞞を見抜いていた証左だとも言える。

 あれから20数年、李登輝が総統として進めた民主化はますます深まり、中国に返還された香港の民主と自由は殺された。

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