「日本李登輝友の会・沖縄県支部設立に寄せて」と題されたこのご祝辞には、なぜ沖縄県支部が沖縄本島ではなく石垣市に設立されたのか、沖縄本島の現状や台湾との歴史的背景にも言及されていて、李登輝元総統が沖縄に深い関心を寄せられていることに改めて感銘を深くしました。
李元総統が支部設立に際し、ご祝辞を寄せられたのは初めてのことです。「沖縄県支部こそが、台湾と日本との交流をますます深化させる旗手となることを信じてやみません」というお言葉に、石垣市に設立された沖縄県支部へ寄せられた期待の大きさが現れているようです。下記にご紹介します。
なお、掲載に際しては漢数字を算用数字に改めましたことをお断りします。
—————————————————————————————–日本李登輝友の会・沖縄県支部設立に寄せて
2017年10月12日 李 登輝
本日、日本李登輝友の会・沖縄県支部が設立されるにあたり、大きな喜びとともにお祝いの言葉をお贈りしたいと思います。
支部長に就任される大浜一郎先生、吉村乗勝・事務局長、そして会場にお集まりの皆さま、改めましてこんにちは!
昨年7月、私が石垣島を訪れた際には、一方ならぬお世話になり、大変有意義な訪問となりました。ここに、改めて感謝申し上げます。
今般、日本李登輝友の会の第27番目の支部として沖縄県支部が設立されることは大変うれしく、光栄であるばかりか、ここ石垣島の地に支部が設けられることは、大きな意義のあるものと感じています。
沖縄本島は、その歴史的経緯や、米軍基地を有するなどの要因もあり、政治的に非常に複雑な様相を呈しています。
こうした環境では、日本という国家の存在に直結する安全保障や、台湾との交流発展について、冷静な議論を進めることが出来ません。
そうした喧騒から離れ、かつ台湾とも密接な関係を有する八重山地域の中心たる石垣島に沖縄県支部を設立し、冷静な視点で日台関係の緊密化や、日本の安全保障について議論を交わすことは大変有意義なことだと感じています。
事実、沖縄県のなかでも特に石垣島は、歴史的にも文化的にも、産業の面でも台湾と密接な歴史を有しています。
昨年、石垣島を訪問した際、講演のなかでもお話ししましたが、石垣島と台湾の密接な関係は、台湾が日本の統治下に組み込まれて間もなくの頃からすでに始まりました。
台湾と日本内地を結ぶ航路が開設されたことで、石垣島は日台間の往来におけるハブの機能を担うこととなり、台湾との貿易や往来はかなり盛んになっていきました。
戦前までは、パイナップル産業などに従事する台湾からの移民が多数移住するとともに、水牛が持ち込まれ、農業を手伝いました。
聞くところによると、この台湾の水牛の子孫たちが、八重山地域で現在も牛車を曳いて観光客を楽しませていると聞いています。
また、戦後にあっても、戦争によって衰退した石垣島のパイナップル産業を復興に導くのに、台湾の人々の大きな貢献があったことも聞いております。
石垣を中心とする八重山地域の歴史を見れば、本日設立された日本李登輝友の会・沖縄県支部こそが、台湾と日本との交流をますます深化させる旗手となることを信じてやみません。
昨年、私が石垣でお話しした「石垣島の歴史発展から提言する日台交流のモデル」が、沖縄県支部を中心として実践されていくことを大いに期待して、私のお祝いの言葉といたします。
本日は誠におめでとうございます。