刻辞任せよ」とする憤怒のメッセージをフェイスブックで発表された。
李元総統は選挙結果について「本当に人民の勝利だろうか。台湾の民主が本当に勝利したのだろ
うか」と問いかけ、台湾が直面している現状を指摘。そして、畳みかけるように問いかける。「台
湾の人民が勝利したというのであれば、我々は失業や低賃金にあえぐ必要はないのか……なぜこの
ような無能な総統がまだ総統の座に居座っているのか」と。
そこで「人々よ、決めなければならない時が来たのだ」と指摘、だから「我々は無能な馬英九政
権に対して自分たちの声をあげようではないか」と訴える。
ゾクゾクするほどの気合いが伝わってくる、烈々たる獅子吼のごときメッセージだ。李元総統は
本気だ。
統一地方選挙の投開票が行われた11月29日で、思い出したことがある。実は、李元総統が生まれ
た新暦の1923(大正12)年1月15日は旧暦では11月29日に当たる。かつて蔡焜燦氏などが11月29日
に誕生会を開いたこともあり、李元総統にとって11月29日は特別な思いがこもる日だ。まさにこの
日に台湾の民意が明らかになったのである。
李元総統の並々ならぬ決意がこのメッセージから伝わってくる。その全文の邦訳を下記に紹介し
たい。目を離せない状況が台湾で続く。
◆李登輝元総統facebook[2014年12月9日21:22]
https://www.facebook.com/tenghuilee/posts/736438659743608?pnref=story
◇ ◇ ◇
馬英九は総統を即刻辞任せよ
【李登輝総統プレスリリース:2014年12月9日】
先日の地方選挙の結果、台湾の有権者は無能な馬英九政権にNoを突き付けた。これについて、台
湾人民の勝利だとか、台湾民主の勝利だという人もいる。しかし、これは本当に人民の勝利だろう
か。台湾の民主が本当に勝利したのだろうか。
目下、世界の情勢は急速に変化しており、台湾もまた時々刻々変わり続ける時代に突入した。経
済成長が停滞するだけでなく、民主政治もまた厳しい局面に置かれている。加えて、中国の存在
が、台湾を史上空前の危機に直面させる要因となっている。
台湾はかつて奇跡ともいわれる経済発展を成し遂げた。しかし、もはや奇跡は望むべくもない。
この十数年、台湾と中国の経済交流によって台湾の技術、資産、資源は中国に続々と流出し、台湾
に残されたのは一部の不良企業が残していった債務のみという始末だ。
あまつさえ、中国に媚び入り、台湾人を締め上げることも厭わず、大胆にも馬政府の対中政策を
主導して台湾の人々の利益を売り渡そうという企業さえ存在する。
さらに憎悪すべきは、政商の立場を利用して土地を転がし、偽装食品を販売することで台湾の
人々の食住の安全を奪った財閥の存在だ。
彼らは人々の死活問題などまったく意に介さないばかりか、さらにはメディアまで手中に収め、
台湾の人々を洗脳し、心を弄ぶことで中国に貢いでいる。
こうした彼らの行為によって台湾の失業率は高止まりして下降せず、給与水準は低下し、生活が
苦しくなる原因となっている。それによって台湾社会の貧富の格差も拡がりつつあり、もはや社会
の平等という正義は存在しない。若者はより弱者となり、夢も希望も失ってしまっている。
かつて台湾は民主化第三の波のなかで、静かなる革命を打ち立てて東洋の奇跡を起こしたにもか
かわらず、現在では民主主義が後退する危機を迎えている。
すでに民主制度が長年にわたって定着してきたとはいえ、近年、政権を掌握した者たちは人民の
声に全く耳を傾けようとはしない。そして、形ばかりは民主主義の、実際には独断専行の独裁的な
やり方を推し進めているのだ。
先日、与党が党内で決定した規約を用いて国会議員の去就を操作しているのを目にしたが、こう
したやり方は人民の利益に真っ向から反するものであり、主権在民の意義を完全に失わせるもの
だ。
人民が密室協議によって決められた政策に疑義を提出した際も、政党間の対立問題にすり替えら
れてしまった。また、与党が司法を用いて相手を攻撃したり、警察力によって改革を求める学生を
殴打し流血させるようなやり方もまた目の当たりにした。
本来であれば民主主義の基盤となるべき公正な司法が政権の獲得や維持の道具と成り果て、民主
主義を蝕む道具となっている。
こうしたことから、私は問いたい。台湾の人民が勝利したというのであれば、我々は失業や低賃
金にあえぐ必要はないのか、安心できる食品を口にできない食品危機を心配することはないのか、
一般の庶民には手の届くことのない不動産価格を嘆くことはないのか。
台湾の人民が勝利したというのであれば、政商とも言うべき企業集団が中国で引き続き暴利を貪
ることはないのか、無能な政党が不当に搾取した党財産を利用し、司法を操作して政権を維持する
ことはないのか、人々を苦しめる総統が今後も政権を掌握するのか、なぜこのような無能な総統が
まだ総統の座に居座っているのか。
有権者は投票によって馬英九政権に対し、無能という批判を突き付けた。馬英九をはじめとする
グループは、職位にしがみついて権力を保持し続けたいがためだけに党の改革を表明しているが、
古い酒を古い革袋に入れるだけで、そもそも改革の意思すらないのだ。
台湾の人民よ、台湾はもはや変わらなければならない時を迎えた。台湾の運命を握っているのは
我々だ。我々は前へ進みたいのか、それとも後退して谷底へ落ちたいのか。
人々よ、決めなければならない時が来たのだ。変わらなければならない時はとっくに過ぎてい
る。我々は無能な馬英九政権に対して自分たちの声をあげようではないか。
馬英九は即刻、総統を辞任せよ。台湾がこれからも前進するために、馬英九は今すぐ総統を辞任
せよ。
【翻訳:日本李登輝友の会台北事務所】