月刊「歴史街道」5月号が「児玉源太郎と台湾」を総力特集

4月6日発売の月刊「歴史街道」が「児玉源太郎と台湾」と銘打った総力特集を組んでいる。読み
応えがある。

 総論は、山内昌之・東大名誉教授による「ともに近代化を目指そう…『明治人の志』が台湾に奇
跡を呼んだ」で、「先が見えた男」児玉源太郎が台湾総督としてどのような志を抱いて台湾経営に
当たったのかを論じている。山内氏は児玉神社建立のエピソードなども挙げながら、そこに「日本
統治の真実が窺える」と記す。

 また、この3月まで本会副会長だった京都大学名誉教授の中西輝政氏は「合理主義と廉潔な人間
性…『国づくりの達人』が台湾の近代を切り開いた」と題し、朝鮮半島の統治と比較して、台湾の
近代化を手がけ、推進した指導者に児玉源太郎がいたことは「決定的だった」と指摘している。

 この総力特集では、「近代化に挑んだ六人の男たち」として、表題の児玉源太郎(江宮隆之氏執
筆)をはじめ、児玉総督の民政長官だった後藤新平(植松三十里氏執筆)、後藤の懇願を受けて台
湾糖業の発展に尽くした新渡戸稲造(松田十刻氏執筆)、烏山頭ダムを建設した八田與一(四條た
か子氏執筆)というよく知られている4人の他、台湾縦貫鉄道の敷設に邁進した「台湾鉄道の父」
と称される長谷川謹介(はせがわ・きんすけ)と、芝山巌学堂で台湾人教育に従事するも芝山巌事
件で犠牲となった六士先生の一人である平井数馬(ひらい・かずま)の2人も取り上げられてい
る。

 長谷川謹介も平井数馬も、台湾に関心の深い方なら知っているかもしれないが、後藤や八田ほど
には知られていない。この2人を紹介しているのは、『台湾に生きている「日本」』や『古写真が
語る台湾 日本統治時代の50年』などで台湾関係者にはおなじみの片倉佳史氏。

 その他にも、「東部開拓の父」とたたえられる賀田金三郎(かだ・きんざぶろう)や日月譚の畔
に「台湾電力の父」として胸像が建つ松木幹一郎(まつき・かんいちろう)、後に昭和天皇にも献
上されたコーヒー栽培に取り組んだ「台湾コーヒーの父」国田正二(くにだ・しょうじ)など、日
本ではほとんど知られていないものの、台湾ではいまでも敬愛されている日本人も紹介している。
その点で、目配りの行き届いた台湾特集と言ってよい。

 もちろん、「台湾紅茶の父」の新井耕吉郎や「蓬莱米の父」磯永吉、「蓬莱米の母」末永仁、稲
作発展を支えた平沢亀一郎など、今でも台湾で敬愛されている日本人は少なくない。児玉総督や後
藤新平の時代には、台湾の上下水道を整備した浜野弥四郎もいる。それらの人々を紹介したら、雑
誌の特集では収まらない。

 この「歴史街道」5月号のポイントは、児玉源太郎を通して「日本の台湾統治の真実」を知らし
めることにある。まずは一読をお勧めしたい。
 
◆月刊「歴史街道」5月号(4月6日発売 定価:680円)
 https://www.php.co.jp/magazine/rekishikaido/


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