日本李登輝友の会の皆さまへ  李 安[女尼](李登輝基金会理事長)

 12月18日の「日台共栄の夕べ」で披露された李登輝基金会董事長(理事長に相当)の李安[女尼]さんからのメッセージはとても深い内容で、会員の皆さまはじめ本誌読者にもぜひ知っていただきたく、ここにご紹介します。

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日本李登輝友の会の皆さまへ

                                 李 安[女尼](李登輝基金会理事長)

 李登輝基金会の董事長を務めております李安[女尼]です。生前は父の李登輝が大変お世話になり誠にありがとうございました。

 今般、日本李登輝友の会より「2022年 日台共栄の夕べ」にご招待をいただき、大変光栄に思っております。しかしながら、総統夫人たる母が高齢でそばにいてあげたいことから、直接出席することは叶わず、かわりにこの文章で皆さまにご挨拶することをお許しください。

 皆さまが今でも父の李登輝に思いを寄せてくださっていることとは別に、日本李登輝友の会も李登輝基金会も、お互いに大きな試練を迎えていると、心の中で感じています。 というのも、これまでは父が羅針盤として存在してくれていたのですが、そんな父も天に帰ってしまったからです。ですから、日本李登輝友の会にせよ、李登輝基金会にせよ、李登輝精神とその影響力がこれからも生き続けるよう、いかにして将来の運営の意義と価値を社会に示すことが問われていると思うのです。

 このことは、2年前に李登輝基金会の董事長に就任した際、最初に頭に浮かんだ疑問でした。当時、李登輝という人物は唯一無二のかけがえのない存在であり、たとえ実の娘の私にとってさえも、非常に重要で難しい問題だと思っていたのです。

 しかし、悩んでいるうちに私はフッと思い至ったのです。私に課せられたのは、李登輝の役割を「演じる」とか「真似る」のではなく、李登輝の精神から学ぶことであり、それを広めていくことにあると悟ったのでした。日本李登輝友の会と李登輝基金会の未来にとって、私たちの使命は、さまざまなチャネルやモデルを通じて、台湾と日本の関係をさらに深めていくことです。というのも、今日の日台友好は、ある意味で「李登輝の遺産」の一部とさえ言えるからです。

 1972年、日本政府は台湾との正式な外交関係の終了を発表しましたが、これは覆すことのできない歴史的事実です。しかしながら、それから半世紀が過ぎ、日台の特殊な歴史的つながりと、多くの人々の努力により、台湾と日本の関係はますます緊密になり、現在では「日台友好」のピークを迎えています。まさに父の李登輝は「日台友好」の中心的人物であり、総統を退任後も幾度となく日本を訪れています。父の日本への思いは、いわゆる「古き良き時代」だけでなく、むしろ両国の将来を見据えたものでした。

 私は父の中に、「正直」「無私」「滅私奉公」などの大切な価値観を見てきました。しかし、これらの重要な「価値」の多くは、戦後、歴史の戦争を始めたのは確かに日本ですが、父の目には、日本が過去の良い「価値観」の多くを否定し、自信を失っているように映り、それを取り戻させようということが日本に対する最大の関心事であったようにと思います。

 父は、日本が再びしっかりと立ち上がることを望んでいました。そして、台湾がアジアにおける日本の最も強固で誠実な友人であることを認識していたのです。 もちろん、「日台友好」の絶頂期にある今日でも、いくつかの問題は存在しています。しかし、どんなに仲の良い恋人同士や夫婦でも、ときには喧嘩をするように、重要なのは率直に問題に向き合い、これからの道を共に歩んでいくことが大切なのです。こうした方向性のもと、日本李登輝友の会と李登輝基金会は協力して、台湾と日本の関係における父の努力と功績を引き継いでいくことを強く希望します。本日、この場をお借りして、日本李登輝友の会との今後の協力関係について、いくつかの提言を申し上げたいと思います。

 第一に、「日本李登輝学校台湾研修団」の再開です。

 2003年から2019年まで、日本李登輝学校は合計32回の台湾研修団を実施し、いずれも実り多い成果を挙げました。参加者全員が最も楽しみにしているのは、李登輝総統の直々の授業でありましたが、父が亡くなり、最強の講師もいなくなってしまいました。しかし、台湾と日本の関係を止めることは出来ません。日本李登輝学校を再開し、厳選した素晴らしい講師陣によって複数の視点から台湾を学び、特により多くの若者が日本の李登輝友の会に参加したいと思う内容を提供したいと考えています

 第二に、学術交流の活発化です。

 これまで、日本李登輝友の会も李登輝基金会も、それぞれ学術シンポジウムを開催してきました。しかし、今後は、お互いに協力して合同でセミナーを開催したり、さらには会員を派遣して互いの論文の発表や批評に参加することができればと願っています。例えば、現在、李登輝基金会は毎年大きな学術シンポジウムを開催していますが、日本の李登輝友の会の関係者にも参加、発表、コメントをお願いしたいと思っています。

 第三に、芸術・文化交流の拡大

 私が理事長に就任して以来、李登輝基金会は2回、それぞれ李登輝総統の生涯と日台50年の関係をテーマにしたコンサートを開催し、大変好評を得ました。 音楽・芸術は国境を越えたコミュニケーション媒体であり、それをうまく活用すれば、台湾と日本の関係にも交流の場が増えると思っています。

 第四に、李登輝記念図書館の設立を支援することです。

 現在、李登輝基金会は、台湾大学の旧法学部キャンパス内に李登輝記念図書館の設立を進めています。父の生涯に関する資料や書籍の収集、展示のほか、将来的には追悼の場としても活用される予定です。李登輝基金会はこの目標に向かって努力を続けていきますが、日本李登輝友の会もこの壮大なビジョンに賛同していただけることを願っています。

 以上、長々と述べましたが、これからの李登輝基金会と日本李登輝友の会のいっそうの協力関係が進むことを願っています。

 最後になりますが、まもなく迎える新しい年が台湾も日本も平和で安定したものであるとともに、本日のイベントの成功と盛会、日本李登輝友の会の皆さんのご健勝をお祈りしてご挨拶といたします。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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