日本人教師が台湾人の教え子に出した手紙が届いた「海角七号」みたいな実話

こういうことが日本と台湾の間では起こる。約80年も前、台湾で教鞭を執っていた106歳になる
先生がかつての生徒に手紙を送った。しかし、それは戦前の住所。郵便教員が探し回って、ようや
く届けた……。

 映画「海角七号」を地でゆくようなこの奇跡の物語を、日本と台湾の懸け橋になる会世話人の喜
早天海(きそう・たかひろ)氏がメルマガ「はるかなり台湾」で「台湾映画『KANO』と『海角
七号』」と題して紹介しています。

 なお、106歳になる先生、高木波恵さんが出された実際の手紙、楊漢宗さん宛の表書きなどの写
真は「自由時報」で紹介されたのですが、その写真などを紹介した「Pen-Box」というブログもあ
りましたので併せてご紹介します。まさに「映画みたいな実話」です。

 ちなみに、喜早さんが紹介している高木波恵さんが記事として紹介された「全国紙」とは朝日新
聞です。高木波恵さんの写真も掲載していますので、この記事も併せてご紹介します。

◆日本と台湾の間で起きた「映画みたいな実話」【Pen-Box:2015年3月23日】
 http://blogs.yahoo.co.jp/bakumatsu1/13101917.html

◆日本と台湾の間で起きた「映画みたいな実話」 その2【Pen-Box:2015年3月25日】
 http://blogs.yahoo.co.jp/bakumatsu1/13105654.html

◆台湾球児の甲子園V、ラジオに祈った 高木さん【朝日新聞:2015年2月20日】
 http://digital.asahi.com/articles/ASH2L5QNQH2LTLVB00N.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH2L5QNQH2LTLVB00N


台湾映画「KANO」と「海角七号」
【メルマガ「はるかなり台湾」:2015年3月26日】

 いま甲子園では選抜高校野球大会が行われていますが、テレビ中継に夢中になっている人も多い
かと思います。

 熊本に住んでいる今年106歳になる高木波恵さん(以下おばあちゃんと呼びます)もその一人
で、おばあちゃんは大の高校野球ファン。

 熊本で先月21日に「KANO」の映画が公開される前日に、全国紙の県内版におばあちゃんのこ
とが紹介されました。彼女は、戦前台湾で暮らしており、女学生のころから高校野球に夢中になっ
ていると言いますから、もう一世紀に及ぶファンなのです。

 そして、おばあちゃんが若かりし頃、いまの台中市内にある烏日公学校(現烏日国民小学校)の
教諭として台湾の子供たちに約10年間教えていたのです。

 日本で新聞記事になった5日後の25日、烏日郵便局に日本から一通の手紙が寄せられました。そ
して今月23日にこの手紙のことが台湾でも新聞に大きく載ったのです。以下、現地の新聞によって
その内容を記しましょう。

                  *   *   *

 106歳の高齢の日本人高木波恵先生が映画「KANO」に関する報道を読んでいるうちに76年
前、烏日で教壇に立っていた時の思い出がよみがえり、教え子のみんながまだ元気かどうか知りた
くて、娘さんに代筆してもらって教え子の楊漢宗さん(89歳)あてに手紙を出したのでした。

 でも、封筒に書かれた宛先は古い住所だったために、今は昔の住居表示と変わっており、郵便屋
さんは届けることができずにいました(このあたりは海角7号の映画とそっくりです)。

 郵便配達員の郭柏村さんは同僚の廖さん、李さん、陳さんらと相談して差出人に返すかどうか検
討していると、陳さんは「この手紙は厚くてかつ毛筆で書かれているのできっと大事な手紙に違い
い」と判断し、みんなで協力し合って受取人に何とか届けようとなったそうです。

 その後、役場などに行って問い合わせるも、個人情報保護法に阻まれ教えてもらえず、結局、時
間がかかっても一軒一軒あたって聞くほかになく、郵便屋さんの苦労が報われたのは3月8日のこと
でした。それは、烏日区栄泉里のもと里長だった楊本容さんの父親が受取人の楊さんだということ
が分かったからです。

配達員の郭さんが楊さん宅を訪れた時、

「ごめん下さい。お母さん、こんにちは。ちょっと伺いますが、こちらに楊漢宗さんという方い
らっしゃいますか?」と、聞いたら「いますよ。」との返事。

 この瞬間、郭さんは「ああ、よかった。やったあ!」と思ったことでしょう。

 この辺の気持ちを、郭さんは「何度も探したけど、この住所は現存しない古い住所だったので、
探し当てるまでの過程が「海角7号」と同じストーリーで、自分でも何か妙な感じがしていた」と
言っていました。

 それにしても台湾の郵便屋さんはすごいですよね。後日のネットの書き込みにも「彼らは本物の
プロだ」とありましたが。全くそのとおりだと思います。

 受取人の楊さんは病気のため療養中で、応対に出た息子さんは「高木先生は2,3年生の時の担任
の先生で、ぼくの親父は当時級長だったので、先生は特に印象に残っていたのかも。それで親父に
連絡してきたんじゃないかな」と語っていました。

 この手紙は、2枚の便せんに毛筆で書かれてあり、ラジオで嘉義農林の決勝戦を聞いたことなど
の思い出や先生が教え子を思う心にあふれており、烏日公学校の卒業写真2枚も同封されていて、
楊さんを通じて他の教え子さんたちの消息も知りたいと記されておりました。

 病の父親に代わって、楊本容さんは手紙の中に書いてあるリストから8名のクラスメートと連絡
がとれ、先生に手紙を出すようにお願いしたそうです。お父さんの同級生だった蔡さんも楊さん宅
を訪れ、高木先生は美人でまじめな先生だったと思い出を語り「必ず手紙を出しますよ」と言った
そうです。

 時あたかも桜の季節に、教え子さんから近日中に手紙が届くことでしょう。おばあちゃん、いや
高木先生にとって今年の春は最良の春になるようです。

 どうか健康に留意して、日本一いや世界一を目指して長生きされることを心から望んでいます。


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