日本人よ、誇りを持ちなさい [蔡 焜燦]

「日本精神」を取り戻して欲しい

 3月28日発行の本誌第729号で、日本でもよく知られる「愛日家」の蔡焜燦氏が3月25
日に発売された月刊「宝島」5月号に、「日本人よ、誇りを持ちなさい」と題して寄稿
していることをお伝えしました。ここにその全文をご紹介します。

 その折、同誌に有川真由美さん(フォトジャーナリスト、元南日本新聞フェリア編集
者)が「日本に恋する台湾−日本人が知らない台湾人の片思い」と題して寄稿している
ことも併せてお伝えしました。

 すでに月刊「宝島」は6月号が発売中ですが、有川さんのレポートは多くの写真とと
もに、日本から消えてしまいつつある「古き良き日本」が台湾にはしっかり息づいてい
ることを伝えていますので、の未見方はぜひご一読を!         (編集部)


【月刊「宝島」2008年5月号】

日本人よ、誇りを持ちなさい─「日本精神」を取り戻して欲しい

                                   蔡 焜燦

 蔡焜燦氏は司馬遼太郎の『街道をゆく 台湾紀行』に登場する「老台北」として広く
知られている台湾実業界の重鎮だ。そんな蔡氏は、現代の日本人に「もっと胸を張りな
さい」とエールを送る。

 日本人は、日本人としての誇りを失くしてしまった。我々「元日本人」(終戦まで台
湾人は日本人だった)は、日本人であったことを誇りにし、日本がどんなにすばらしい
国かを知っているというのに─。

 1901年、台湾で初めて後藤新平、新渡戸稲造の命令で近代的な製糖工場が造られた。
昭和20年までに26の工場が散らばって、当時の台湾経済を支えていた。日本人はものづ
くりを教えてくれました。

 台湾の公学校には台湾人が多かったが、内地から来た先生は差別なく、かわいがって
くれ、中国という国にはない「公」と「私」を教えてくれた。公私の区別が日本人には
あった。しかし、そろそろ薄れてきたところがあるけれども。

 私の母校は台湾の清水小学校といいますが、昭和10年当時日本本土のどこにもなかっ
た校内有線放送の設備がありました。わらべ歌、神話、歴史、ラジオドラマ、模範道徳、
詩吟、藤原義江のテノールなど約400枚のレコードが揃っていた。この内容を最近、「綜
合教育読本」という本で復刻しました。「あなた方の先人は、台湾でこんなにすばらし
い教育をしていた」と知らせたかったからです。

 台湾で「日本精神」とは勤勉で正直、約束を守るなど諸々のいいことを表す言葉。か
つて日本人が台湾でこれだけのことをやったという事実、台湾で神様になった日本人が
たくさんいるという事実、世界に類ない歴史をもう一度、かみしめ、消化して、誇りを
もってほしい。

 最近、「親学」という言葉が出てきています。いまの日本は、子どもの教育ではなく、
親としての教育を始めなきゃいけない。ちょっと悲しいが、そういう時代になってしま
った。

 親学の第一歩は、自分の国にプライドが持てるように、歴史を勉強すること。次に日
本独特の文化。いま道徳を教える徳育という言葉が使われるが、特別に教えることでは
ない。教えている間に身にしみこむこと。先生たちも教育しなければならない。

 でも「本を読め、本を読め」と言っても、読まない人は読まない。まいったね。だか
ら、国を愛する心ですよ。まずは自分の故郷から。心のある人が集まって、いまのお父
さん、お母さんたちに教えることです。

 私は20年間やってきたことがある。日本から政治家やお偉いさんが来ても相手にしな
いが、若者が来ると、食わせて飲ませて、未成年には飲むなといって「君たちは私にも
う一宿一飯の義理がある。返せ」という。若者は「どうやって返すんだ、わからない」
というので、「自分の国を愛せ、そうでなければ隣国、世界各国を愛せない」と。

 一昨年、ある団体が来て、また「返せ一」とやったら、「ありがとうございました。
台湾にこういう事実があるとは知りませんでした。私の一宿一飯のお返しは、台湾と日
本の架け橋になることです」といった学生がいた。

 それからだんだん、手ごたえのある若者たちが台湾に来るようになった。20年後の、
社会の中堅になる40歳ぐらいに向けて投資してきたつもりだが、もう結果は表れている。

 10年ぐらい前から、国を愛しているという日本の若者たちが出てきている。それを増
やさないといけない。2年前には教育基本法で「愛国心」が議論されて「我が国と郷土
を愛する」となった。一歩前進です。50年で汚染された教育は、50年かけて取り返す。
ゆっくり、ゆっくり、急がずに子どもたちを教育する。49歳で死んだ織田信長が死ぬ前
に言っているでしょ。50年なんてつかの間ですよ。


■蔡 焜燦 1927年生まれ。半導体デザイン会社「偉詮電子」元会長。「台北李登輝之
 友会」名誉会長。少年航空兵として志願し陸軍航空学校に入学した年、奈良で終戦を
 迎える。名著『台湾人と日本精神』(小学館)の著者

■月刊宝島 2008年5月号─沈むな日本!
 http://www.tkj.jp/mag/mag_001.html
 2008年3月25日発売、特別定価:630円



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