【読者投稿】台湾と日本−日本人よ、毅然として大義を貫け

静岡県にお住まいの会員、新堀茂氏より長文の投稿原稿をいただいた。その内
容は、李登輝前総統が剔抉された中国の本質論と軌を一にしています。また、台
湾との国交正常化を視野におさめて活動する本会の趣旨とも合致するところ多々
あります。じっくりとお読みください。
 なお、機関誌『日台共栄』にも「会員の声」という投稿コーナーを設けていま
すので、投稿される場合は500字以内でお願いいたします(住所、氏名、年齢、
肩書、電話番号を明記してください)。             (編集部)


台湾と日本−日本人よ、毅然として大義を貫け

                静岡県・医師・66歳 新堀 茂(賛助会員)

■台湾人自らの力で勝ち取った「自由」という宝玉
 戦後60年を経た今日、日本人として我が身、我が国人、我国の在り方を振り返
り、来し方行く末に想いを致す時、更に世界の孤児の身に押し留められたままの
台湾の人達に思いを馳せる時、内心忸怩たるものがある。この星霜を顧みれば傍
観者には時の間であっても、彼の地の人達にとっては何時果てるとも知れない国
民党政権の圧制の下、生命の危機に曝され恐怖の日々を刻んでいたと聞くが、そ
の苦衷たるや察するに余りある。この極限状態の中から数多の艱難辛苦を乗り越
え、営々たる努力の末、漸く今日の安寧と繁栄と自由の地を築き上げたのだ。
 その苦難の時期に、我々日本人は救いの手を彼らに差し伸べたであろうか。否。
世界の如何なる國の人達が手助けをしただろうか。否。誰も皆、対岸の火と座視
していただけではなかったか。今や台湾は世界に冠たる経済繁栄を誇り、死の恐
怖から解き放たれて、限りなき自由を謳歌する日々を獲得したが、これは、誰の
助力を借りることなく台湾人自らの力で勝ち取ったものだ。この宝物を世の何人
たりとも奪うことはできない。
 ところが此処に、この甘美な果実を横暴にも我が物にせんとする者が姿を現す
。中華人民共和国だ。彼らは言う。「その宝玉は俺のものだ。渡さぬと容赦せぬ
ぞ」と。彼らは常々脅しをかけてきたが、此処に反国家分裂法を制定してその意
図を鮮明にした。彼らにどんな権利があって台湾の領有を主張できるのか。そん
なもの有るわけがない。台湾は台湾人のものであって、他の誰のものでもない。
 台湾人は華人の血を受け継いでいると言っても、その文化的遺伝子は既に変異
を遂げていて、あの醜悪極まる中華思想に呪縛されたままの中国人とは全く異な
る思考、習俗、気質、世界観を持つ民族に進化を遂げているのだ。

■全く異質な国民性を持つ台湾と中国
 数千年に亘る中国の歴史を観よ。そして、その歴史に織りなす人間共の所業を
見よ。幾多の王朝が興り、束の間の栄華の後、滅び去る。そして混沌。そのいず
れの時にも絶えることなく死臭が漂う。民人は常に苛政と匪賊の難に苦しみ、死
と飢餓の淵を彷徨い、恒心を得る日は絶えて無し。この悲惨な運命が中国人の国
民性を作り上げたのだ。
 歴代の王朝は四囲の民族を禽獣と蔑み、征服して止むこと無し。大帝国建設へ
の妄執は中国王朝の宿業である。一体この國は世界に範を示す歴史を遺しただろ
うか。否。否。この國人は時代を動かすほどの偉業を成し遂げただろうか。否。
否。否。
 翻って、今日に至る中華人民共和国の歴史を見よ。満州民族の故地を奪い、モ
ンゴル、ウイグルの民を支配下に置き、チベットを侵略し、今や台湾に触手を伸
ばそうとしている。これは、この国が古代中華帝国さながらの病弊を継承したこ
とを如実に示しているのだ。そして内には反右派闘争、大躍進運動、文化大革命
、天安門事件等により無数の犠牲者を次々に生み出している。これをしてまとも
な為政者と言える筈もない。
 共産党一党独裁政権下に置かれた国民は、党による宣伝教化や歪曲された歴史
教育の下での閉ざされた言論空間により、世界情勢や現代の思潮を学ぶ機会すら
持たされていない。更に、市場経済導入による急激な変動は貧富の格差を著しく
拡大し、党幹部や官僚等の汚職、国家資産の私物化は置き去りにされた民衆に嫉
妬と怨嗟を生み、社会不安を一層募らせる。元来、アナーキーな国民には公徳心
等さらさら無く、金銭至上主義に走り、精神的宦官や阿Q達が再生産されている。
 一方、台湾人は既に法秩序の何たるかを知り、自由と民主主義を体得し、近代
合理主義的思考様式を身につけているからには、全く異質な国民性を持つ人達と
運命を共にできよう筈がない。
 そもそも、中国共産党には中国を独裁支配するレジテマシー(正統性)を持っ
てはいないのである。共産党は抗日戦争に勝利したことを根拠にその正統性を主
張するのであろうが、日中戦争を主として戦ったのは国民党軍であって、その功
を戦後共産党が横取りしたに過ぎない。共産党政府が常に反日を言い立てるのは
その負い目があるからであり、失政を国民の目から逸らす為に外敵を求めている
のであろう。

■日露戦争と大東亜戦争の意義
 さて、此処で問いたいのは日本人の在るべき姿勢、在らねばならぬ理念である
。台湾人は60年前までは我々日本人の同胞であり、生死を共にして来たのではな
かったか。大東亜戦争敗戦に伴って台湾の支配権を放棄することになったが、日
本国自体存亡の危機にあったとは言え、嘗ての同胞を見捨てたとも言える。台湾
が中国に併呑される危殆に瀕している時、再び手を拱くままで良いものだろうか。
 想っても見よ。嘗て日本は一身を賭して日露戦争を戦い、これに勝利すること
により、西欧列強による植民地支配に呻吟する全世界の諸民族に希望の火を灯し
たのではなかったか。更に言えば、大東亜戦争に於いて、苟も日本は民族自決の
旗を高く掲げて、アジアの人達を鼓舞して戦い、一敗地にまみれたとは言え、戦
後の植民地解放運動にそして諸国の独立に大きく寄与したではなかったか。そし
て現在、この地球上に植民地は消失した。唯一の例外、中国の植民地、チベット
を除いては。
 さりながら世界は今も猶米欧の支配下にあり、第2次世界大戦をファッショに
対する民主主義の勝利と言ったステレオティピカル(固定観念)な歴史観で規定
し、そこから発する戦勝国の利己的で自己正当化に満ちた思潮が牢固として居座
り、異なった視点からの言説はタブー視されてきた。これは我国に於いても際だ
っており、化石の如きマルキシズムの残滓と自虐的な所謂「東京裁判史観」に絡
め取られて口を閉ざすことを強いられてきた。
 しかしながら、これだけは断言できる。もし日本が日露戦争に負けていたら、
そしてもし日本があの時臆したが故に、人種戦争の側面もあった大東亜戦争を乾
坤一擲戦わなかったとしたら、今なお欧米諸国の植民地支配は続いているであろ
うことは想像に難くない。日本は世界の歴史を大きく転換させる一大事業を成し
遂げた事を誇りにして良いのだ。
 この戦争に於ける、ある意味ではより重要な戦場であったインド、ビルマ、マ
レー、インドネシア、フィリピンでは、英、蘭、米軍或いはその植民地軍と戦闘
が行われたのであり、進駐して来た日本軍への原住民の対応は、解放者として歓
迎する國から冷淡な地域までそれぞれ濃淡はあっても、祖国独立を希求する民衆
と力を合わせて戦ったのは歴史的事実であって、これをして侵略戦争と決めつけ
るのは正当ではないし、不正義の戦いとして貶めようとする政治的意図が窺える。
 台湾が中国に統一されることを望むのか、独立を保つことを選択するのかは、
台湾民族自らが決めることである。さりながら共産党一党独裁で、建国以来、選
挙によって政権の正統性を国民に問うたこともない大国パラノイアの中華人民共
和国に、これまで独立を保ってきた台湾が併呑されてこの国の人達が幸せになる
とは到底考えられない。
 現在の中国の経済的繁栄に幻惑される人がいるかも知れないが、この繁栄たる
や、台湾や日本をはじめ諸外国の持ち込んだ資金と技術、経営のノウハウにより
成り立ち、廉価な労働力と為替ダンピングに支えられているのであって、中国独
自の技術開発はなく、やがてブームが去れば破綻を来すことは大いに考えられる。

■中国の不幸の根源は中華思想
 視点を変えて、一国を統治することとは如何なることか考察してみよう。為政
者の為すべきことは他国を侵すことなく、内には国民の安寧を保ち福利を計るこ
とに尽きる。外敵から自国民を守り、苟も自国民を迫害することなく、飢えさせ
ること無きよう努めることができなければ、統治者の資格はない。必ずしも議会
制民主主義が唯一至上のものではなく、独裁国であろうが、君主制であろうが、
帝国であろうが、これさえ行えばそれで良いのであって、政体の如何を問う必要
はないし、他国が容喙すべきことでもない。
 國の体制を問わず、より良い統治を行うには、自ずから適切な人口と領土の規
模とが決まってくる。現在の世界を見渡してみれば、繁栄している国々は数百万
人から数千万人の人口を擁する中小国であることがすぐ見て取れる。フィンラン
ドもシンガポールも台湾もオランダもスウェーデンも小国に属するが、否、むし
ろ小国であるからこそ繁栄していると言う方が正しい。英国、ドイツ、フランス
でさえ人口や領土の規模はそれほど大きくないではないか。
 一方、超大国を見てみよ。ソ連邦は既に崩壊した。ロシアの民話「あるイワン
の馬鹿」を地でいって、自ら滅びたのだ。その後裔のロシアを見よ。今もなお大
国への妄執故にもがき続けて統治能さえ疑える。インドはどうだ、ブラジルはど
うだ、インドネシアはどうだ。国家の経営は極めて困難であろう事が容易に想像
できる。そして中国は、今のままでは統治不能だ。
 中国の不幸の根源は中華思想にある。大中華帝国へのオブセッション(妄想)
にある。チベットを侵略して暴虐の限りを尽して植民化したとて何の得があると
いうのだ。新彊ウイグル地区のような不毛の土地を領土にしても、何ら生産性は
上がらず財政負担がますばかりであるし、不羈の民、回教徒のキルギス人を統治
するなど自ら苦労を買って出るようなものだ。13億の民をどうやって養っていこ
うというのだ。
 誰か彼らにいい加減に迷妄から目を覚ませと言ってやってくれ。中国大陸がヨ
ーロッパのように台湾ぐらいの大きさの国々に分かれていたら、それらの国々も
周囲の諸国もどれほど幸せだったか計り知れない。繁栄する國が多くできるだろ
うし、たとえ貧しくても足を知る幸せな人達の國となるだろう。

■アメリカは台湾の独立を支援するのか
 ところで、アメリカである。米国とは一体何物か。米国は帝国である。領土的
野心を一見見せていないが、世界を支配せずにおれない使命感に突き動かされて
いる姿は、紛れもなく帝国そのものである。米国をして大帝国たらしめている究
極的なものは、クレディット、即ち信用である。或いは幻影と言っても良いかも
知れない。広大な領土、強大な軍事力、限りなく豊かで誰もが夢を叶えることの
できる國、アメリカ。自由と民主主義を世界に唱道し、市場経済体制を押し進め
る世界の支配者である。これを支えるものはドル紙幣である。
 一方、このドルをクレディットするのが大帝国を作り上げているこのような装
置なのである。ドルは言うまでもなく印刷した紙切れに過ぎない。だから米国政
府はドル紙幣をどんどん刷りまくる。国民も政府も借金が嵩むのを気にせずジャ
ンジャン使う。何しろドルは信用されているのだから。日本も中国も台湾も東南
アジア諸国も、ドルをしこたま貯め込んでいる。抜き差しならぬほど入れ込んで
いる日本は、何時の日にか起こる破綻に脅えながら。
 世界の警官アメリカはまた、台湾と日本の庇護者でもある。あくまでもアメリ
カの国益に叶う限りに於いてであるが、今のところ中国に対する抑止力になって
いることは間違いない。この国の望むところは現状維持であって、台湾の独立を
積極的に応援するなどあり得ない。ただ帝国の常として対抗者の存在を赦さない
だろうから、中国の武力攻撃は何とか押し留めてくれるだろうが、結局、台湾は
自らの力で守りきる覚悟が必要だろう。

■台湾と共に立ち上がるのが日本の大義
 さて、日本である。日本は米国の属国である。日本は自ら國を守ることを放棄
して米国の庇護下の安穏に慣れ、戦後60年になるにも拘らず、自主自尊の気概も
失われている。国防は米軍の指揮下にあり、外交はひたすら事勿れ主義に徹して
思考停止し、後は米国国務省にお伺いを立てるばかり、経済政策も金融制度も構
造改革も、アメリカから毎年突き付けられる改革の宿題をこなすことで追いまく
られている体たらくである。これでは独立国とは言えまい。
 さりながら、日本の思潮の中にも漸くにして左翼的思考の軛(くびき)から脱
して本来在るべき國の姿を模索する声が高まり、憲法改正を行って普通の國に立
ち戻る試みを始めている。日米安保条約が存在するとは言え、自分の國は自分で
守るのは当然の営為であって、日本国軍が米軍の指揮下に置かれることや、米軍
の基地が日本全土に配置されている等といった異常な状態から一日も早く脱却し
なければならない。そして、日本の伝統や風土を無視したアメリカン・スタンダ
ードの押しつけや、米国国内法も駆使して強引に押しまくる通商代表部の遣り口
を拒否できるだけの力を身につけなければならない。
 中国の歴史を通覧すれば、秦・漢帝国、唐、明、清等の帝国も版図を拡げたと
は言え、周辺国の抵抗によって無限の拡張は全て押し留められて来たことは明ら
かである。中華人民共和国が「一つの中国」をスローガンにして台湾を吸収する
ことを断固阻止しなければならない。
 台湾と共に立ち上がるのは我々日本人の貫くべき大義であり、天命である。日
本政府は近隣諸国に対して友好を唱え、ODAや借款等による札束外交に終始し
、徒に譲歩を重ねるばかり、懐に刃を飲む如き真の外交を避けてきた。今や決断
の時である。決然として対峙する事を躊躇ってはならない。近年の中国の日本に
対する所業は既に敵対行動と言って良い。日本も対敵戦略を策定すべきであるし
、少なくとも中国への外交思想の転換を計り、対応策を練り直さなければならな
い。
 日本政府は国連の改革を提唱し、何を血迷ったか安保理の常任理事国に立候補
しているが、これほどナンセンスなことはない。国連の現状はスキャンダルにま
みれ、官僚は跋扈し、金食い虫と化し、有効なことは何一つ決めることができな
い。そもそも国際連合とは第2次世界大戦戦勝国の集まりであるのに、大金払っ
てまで席を同じくするべきではないし、まして日本を対象にした敵国条項まで残
されている。我国を敗者の位置に永遠に据え置き、悪の烙印を押したまま戦後の
体制を固定するものである。
 仮に常任理事国になったところで、中国が、否、米国にしろ他の理事国にしろ
拒否権を与える等とても考えられない。札束を振り回して票を集めるのを止めて
、台湾と共に全く別の組織を創ったらどうか。
 また、政府は東アジア共同体を提案しているが、これも愚劣極まりない。日本
も台湾も東南アジア諸国もアメリカ帝国の翼の下に生きているのに、米国抜きの
案など通る筈もない。まして狷介不羈な中国が共同体を牛耳って、新しい中華帝
国を築き上げる手助けをするだけであろう。そんなことではなく、日本と台湾が
米国を盟主にして東南アジア諸国、インドやオーストラリア、ニュージーランド
と共に安全保障連合体を創り、中国の膨張を封じ込める方策を立てる事が急務で
ある。
 もう一度繰り返す。
 台湾人は嘗て日本人の同胞であった。そして今も猶、日本人を愛し慕ってくれ
る唯一の國、人達である。その人達を見捨てて良いものだろうか。日本は嘗て民
族自決を叫び、植民地解放を唱え、亡国をも覚悟して戦った。その時、台湾人は
銃を手にして共に戦ってくれた。彼らに日本人は大きな借りがある。台湾が戦い
に巻き込まれた時、日本人は立ち上がって運命を共にする道義的責任があること
を銘記しなければならない。                (6月2日記)


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