日本人のパイナップル観をくつがえした台湾産パイナップル

 日本では台湾産パイナップルが受け入れられ始めた。中国が輸入を禁止したことで、当初は台湾支援の温情が先だっていたが、現在は少々高くてもうまいから食べるというように変化してきたようだ。

 台湾産のマンゴーやライチを10年以上案内している本会でも、多くの方からのご要望に応え、今年の3月25日から4月5日まで初めて案内した。

 果肉が柔らかくてみずみずしく、苦みやえぐみもなく、芯まで食べられる台湾産パイナップルは大好評だった。見栄えがするし、日持ちするという点でも好評だった。

 編集子にも数か所からお贈りいただいた。いずれもブランド品の金鑽パイナップルで、2kg近くもある大きく立派なパイナップルだった。とても食べきれる数ではないので、知人やご近所、スタッフなどに配って食べていただいた。

 反響は上々だった。「あれほどパイナップルがうまいとは知らなかった」「果肉が柔らかくて甘くて、ホントに芯まで食べられるのでビックリした。食べ応えがあるね」「酸味と甘みがちょうどいい感じで、酒のつまみにもなる」「トゲトゲは痛いのかと思ったら痛くないんだね」等々、予想以上の反響だった。

 大きくて重いだけに、持ち運びなどにはいささか苦労したが、このような声を聞けば嬉しくなる。日本人のパイナップル観をくつがえしたとも言える台湾産パイナップル。来年も台湾産パイナップルをご案内する予定だ。

 産経新聞の矢板明夫・台北支局長が、中国で輸入禁止にされた台湾産パイナップルは、日本で「ブランド化」に成功したと伝え、ハタは広く認知されるまでには至っていないと現況をレポートしている。

 ちなみに、このレポートで矢板支局長は、ツイッターにパイナップルを手にした写真を投稿した安倍元総理のエピソードを紹介している。このパイナップルは、金美齢さんが贈った台湾産パイナップル。この投稿の影響力は大きかった。

—————————————————————————————–台湾産パイン、日本でブランド化成功  矢板 明夫(産経新聞台北支局長)【産経新聞:2023年6月1日】https://www.sankei.com/article/20230601-OB5SIRAKQZM23ATD2CWFTBVQDM/?684948

 台湾の蔡英文政権への圧力を強めている中国政府はここ数年、理不尽な理由で台湾産パイナップルや高級魚ハタなどへの禁輸措置をとってきた。苦境に立たされた台湾の農水産業を支援しようと、日本の貿易関係者は積極的に台湾産品の受け入れを進めている。パイナップルの輸入は軌道に乗ったが、ハタはいまだに苦戦中だ。主要産地の屏東(へいとう)からその現状を報告する。(屏東 矢板明夫、写真も)

 台湾高速鉄道の最も南に位置するターミナル駅「左営」から車でさらに南へ約1時間走ると、台湾最大のパイナップル産地に到着する。5月下旬のある午後、屏東県内埔郷(ないほきょう)の農園で数人の若者が雑草取りにいそしんでいた。地元の果物農家を取りまとめる龍潭(りゅうたん)果菜生産合作社(組合)の理事長、何秉洋(か・へいよう)氏は「台湾も最近、農家の後継ぎ不足に直面している。ここで働いているのは、フィリピンやインドネシアから来た研修生が多い」と話す。

 この農園で生産するパイナップルは日本へ輸出する予定だ。屏東県では毎年12万トン以上のパイナップルが生産され、台湾全体の約3分の1を占める。

 2021年2月、中国が「害虫の検出」を理由に台湾産パイナップルの輸入を停止すると突然発表した。「目の前が真っ暗になった」と何氏は当時のショックを振り返る。

 20年まで中国は台湾産パイナップルの最大の輸出先で、毎年4万トン以上が取引されており、輸出総量の9割前後を占めていた。「害虫検出」は中国側の口実で、中国と距離を置く蔡政権への「政治的嫌がらせ」とみられている。屏東県幹部によると、指摘を受けた後、台湾側は何度も検査したが問題は見当たらなかったという。

 毎年春から初夏まではパイナップルの出荷期だ。中国の輸入停止を受け、台湾の生産者は地元当局の協力を得て「加工食品の生産量を増やす」「冷凍する」「学校給食に利用する」などの工夫を重ねたが、消化しきれなかった。新しい輸出先を探す中で目を付けたのが日本だった。

 日本国内のパイナップル消費量は年間約18万トンだが、うち9割以上がフィリピン産だった。台湾産は単価の高さなどを理由に輸入業者に敬遠されていた。しかし「台湾の生産農家が苦境に立たされている」とのニュースが伝えられると、「台湾支援の輪」が日本各地に広がった。

 安倍晋三元首相にはとても感謝している」と何氏はいう。安倍氏は21年4月、ツイッターに台湾産パイナップルを手にした写真を投稿し「今日のデザートはパイナップル。とっても美味(おい)しそう」と書き込んだ。蔡総統はすぐに「是非とも台湾パイナップルをご堪能ください!」と応じ、このやり取りが日台メディアで大きく取り上げられた。

 その宣伝効果もあってか、日本が21年に輸入した台湾産パイナップルは1.7 6万トンと前年比8倍以上に急増。22年も1.8万トン前後を維持し、23年は3月末までに約6千トンを記録した。

 台湾産果物の輸入業者、井上剛氏によると、当初は台湾への温情でパイナップルを買う日本人が多かった。後に「筋が少なく芯まで甘い」という特徴が広く知れ渡り、高級パイナップルとのイメージが定着して「ブランド化」に成功したという。井上氏は「台湾産パイナップルの日本輸入は今、ビジネスとして完全に成り立っている」と話す。

 一方で、台湾側も鮮度を保つための輸送時間の短縮やコスト削減など努力を重ねている。

 いま台湾側関係者が最も望むのは、台湾の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への早期加盟だ。

 日本とフィリピンは経済連携協定(EPA)を結んでおり、フィリピン産パイナップルに関税はかからないが、台湾産には17%の関税が課される。台湾がTPPに加盟すれば関税は撤廃される見通しだ。「日本の消費者に安くておいしいパイナップルをより多く届けたい」。台湾の農家たちの願いだ。

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 中国当局は昨年6月には、台湾産の高級魚「ハタ」の輸入を中止した。禁止薬物の成分を検出したことを理由にしているが、2021年に「害虫検出」を理由に禁輸したパイナップルと同じく政治的な圧力とみられている。ハタもパイナップルも、主要産地は南部の屏東県。この地は台湾の与党、民主進歩党の支持者が多く「民進党の牙城」と呼ばれており、中国側が狙い撃ちした形だ。

 中国側の突然の措置により、輸出予定だった数千トンのハタは行き先がなくなった。養殖業者たちが途方に暮れていたころ、日本の魚養殖業者や大手スーパーの経営者が名乗りを上げ、ハタの輸入を決断した。「民主主義の魚を食べて台湾を応援しよう」。これが合言葉になった。

 屏東県政府(県庁)で昨年7月、日本の業者がハタを3トン購入する契約の調印式が行われた。台湾側も新しいマーケットの開拓に高い期待を寄せた。しかし、クエの仲間であるハタの値段は高く、1キロ1万円を超えることもある。そのうえ日本近海ではほとんど生息していない魚のため、調理法も伝えなければならず、関係者は販売に苦労した。

 山口県のスーパー「丸久(まるきゅう)」は昨年12月、ハタの刺し身や切り身を一斉に売り出す販売キャンペーンを展開し、一定の効果を挙げた。ただ一般市民に広く認知されるまでには至っていない。

 ハタの日本への輸出を手がける台湾の貿易会社経営者、檀上典子氏は「鮮度を保つ難しさ、日台の魚のさばき方の違い、円安などさまざまな要素が重なっており、山積している問題を一つずつ解決しなければならない」と苦労を明かす。

 一方、日本の大手回転ずしチェーンが昨年12月、台湾の業者や漁協とハタ購入の覚書を締結した。ハタは鍋料理の食材と考えられてきたが、すしのネタとしての活用は新しい試みだ。台湾の行政院(内閣に相当)農業委員会の関係者は「ハタの味と歯応えを日本の皆さんにぜひ味わってほしい」と話している。

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※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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