日本はAPEC首脳会議で台湾のTPP加入を全力で後押しすべき

 昨日の本誌で、TSMC(台湾積体電路製造)が熊本に半導体製造の新工場建設を正式発表したことを伝えた際、10月12日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に、台湾からは今年もTSMC創業者で2018年に引退した張忠謀(モリス・チャン)氏が4年連続で出席することと、蔡英文総統と一緒に臨んだ11月2日の記者会見で、張氏がTPP加入に触れ、「TPPの要求水準が高いことに言及した上で、台湾のレベルはそれに非常に近いと指摘。蔡総統の考えを会議の場で参加国・地域に伝えていくと意気込んだ」(中央通信社)と報じていることを紹介した。

 今朝(11月11日)の産経新聞は社説に当たる「主張」でAPEC首脳会議を取り上げ、TPPに参加する11カ国がすべてAPECのメンバーであることから、張忠謀氏には「新型コロナウイルス禍や気候変動など国際社会が連携して対応すべき諸課題に、台湾がいかに貢献できるかを発信してもらいたい」と期待を述べ、また、蔡英文総統が日本の支持を求めていることに対し「日本はこの期待に応えて、台湾の加入を全力で後押しすべきだ」と提言している。

 この「主張」で「『台湾』の呼称使用」のことに触れている。実は、台湾のAPEC加盟名称は、オリンピックや経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)などと同じ「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」。

 そうなった事情について、11月7日付の毎日新聞は下記のように報じている。

<台湾は李登輝総統時代の1991年、APECに中国と同時加盟した。だが93年から始まった首脳会議に台湾の総統は一度も出席できていない。中国が、台湾の加入条件としてAPEC側と1)「中華台北」(チャイニーズ・タイペイ)の名義で加入2)会議には経済部局のみの出席を認める──ことで合意した、としているためだ。>

 やはり、APECでも中国が台湾の加盟に圧力をかけたという、おぞましくも由々しき経緯だ。だから産経新聞は「『台湾』の呼称使用も、国際機関へのオブザーバー参加も嫌がる中国の異様さが際立つことになる」と指摘したのだろう。

 中国は1949年の建国以来、一度たりとも台湾を統治したことはない。中国は国連から台湾を巧妙な工作で追い出し、その席に座ったことをもって台湾を自国領と主張しているに過ぎない。この一方的な中国の主張を国際機関が受け入れる時代はすでに終わっている。APECにおいても台湾正名がなされるときが来ている。

—————————————————————————————–APEC首脳会議 台湾の存在感を確立せよ【産経新聞「主張」:2021年11月11日】

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、貿易・投資の自由化や地域経済の最終的な統合に向けて、日本や米国、中国など21カ国・地域が連携していく場である。

 中国の反対によって国連を含むほとんどの国際的な枠組みから排除されてきた台湾にとっては、世界に向けて意見を表明できる数少ない場でもある。

 12日にオンライン形式でAPEC首脳会議が開催される。台湾はこの機会を存分に生かし、新型コロナウイルス禍や気候変動など国際社会が連携して対応すべき諸課題に、台湾がいかに貢献できるかを発信してもらいたい。

 そうすることで、「台湾」の呼称使用も、国際機関へのオブザーバー参加も嫌がる中国の異様さが際立つことになるはずだ。

 APECにおいても、台湾の行動は中国の圧力で大きく制限されている。台湾は1991年に中国と同時加盟したが、首脳会議に総統が出たことは一度もない。今回の代表は世界的半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)の創業者、張忠謀氏である。

 12日の首脳会議がとりわけ注目されるのは、今年9月、中国と台湾が相次いで環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加入申請した直後であるということだ。TPPに参加する11カ国は、すべてAPECのメンバーでもある。

 台湾の蔡英文総統は2016年の総統選時にTPP加入を公約とした。加入申請後は、準備は万全だとして日本語のツイッターでも支持を訴えている。日本はこの期待に応えて、台湾の加入を全力で後押しすべきだ。

 ちょうど1年前、中国の習近平国家主席がTPP参加を検討する考えを唐突に表明したのも、習氏がオンラインで出席したAPEC首脳会議の場だった。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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