日本とオーストラリアが「円滑化協定」を締結し「共同声明」を発表

 1月6日、岸田文雄首相とスコット・モリソン・オーストラリア連邦首相は、全29条からなる「日豪円滑化協定」(日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定)を締結した。

 外務省によれば「日豪円滑化協定は、日豪の一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続及び同部隊の地位等を定める協定」であり、「この協定は、両国部隊間の協力活動の実施を円滑にし、両国間の安全保障・防衛協力を更に促進するとともに、日豪両国によるインド太平洋地域の平和と安定への一層の貢献を可能にするもの」だと説明している。

 外務省が発表した「概要紙」によれば「日豪間では、2007年3月の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」の発出以降、自衛隊とオーストラリア国防軍との間の共同訓練や災害救助等を通じた協力が一層緊密化している。これらの活動を円滑に実施するため、日豪両政府は、2014年7月の日豪首脳会談において、日豪間で各種手続や法的地位等について定めるため、本協定交渉の開始を決定した」という。

 自衛隊とオーストラリア国防軍が共同訓練などで相互訪問する際「相手国に滞在する自衛隊と豪州軍の課税免除や事件・事故の裁判管轄権など法的地位を事前に定めることで、相互訪問のたびに調整する必要がなくなる」(産経新聞)という。

 毎日新聞は「日本と他国との間には、米兵の日本国内での法的地位などを定めた日米地位協定があるが、双方の部隊に適用される円滑化協定の署名は初めて」と伝え、「スムーズな部隊派遣につなげる狙いがある」と報じている。

 両首脳はまた24項からなる「日豪共同声明」も発表し、「威圧的な行動に反対し、有害な偽情報に対抗することに改めてコミット」(第6項)し「南シナ海における状況に関する深刻な懸念」(第12項)や「地域の平和と安定を損なう東シナ海における状況に関する深刻な懸念」(第13項)を表明するとともに、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決」(第14項)について改めて表明している。

 下記に「日豪円滑化協定」と「日豪首脳共同声明」を紹介するとともに、産経新聞がかなり詳しく報じているのでその記事をご紹介したい。

・日豪円滑化協定(日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に 関する日本国とオーストラリアとの間の協定) https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100283785.pdf

・日豪首脳共同声明 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100283825.pdf

—————————————————————————————–日豪 共同訓練を円滑化 首脳会議 中国念頭、協定署名【産経新聞:2022年1月7日】https://www.sankei.com/article/20220106-EWA6OP6EW5K4JDKLDQOCUSV7G4/?906506

 岸田文雄首相は6日、オーストラリアのモリソン首相とテレビ会議方式で会談した。両首相は自衛隊と豪軍が共同訓練などで相互訪問する際の手続きを簡素化する円滑化協定に署名した。相手国に滞在する自衛隊と豪州軍の課税免除や事件・事故の裁判管轄権など法的地位を事前に定めることで、相互訪問のたびに調整する必要がなくなる。また、両首脳は経済安全保障分野での協力強化や、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調することなどを盛り込んだ共同声明も発表した。

 日米地位協定を除き、日本が2国間で相手国軍の法的地位を定めた協定に署名したのは初めて。

 岸田首相は会談で「オーストラリアとの安全保障協力関係は、米国以外のパートナーとの協力のモデルになっている」と強調。モリソン氏は「日本はアジア地域で最も密接なパートナーとなっている」と述べた。

 両首相は、東・南シナ海における中国の「威圧的な一方的行動」に強く反対を表明。新疆ウイグル自治区における人権侵害に「深刻な懸念」を共有し、香港における自由の侵害に「重大な懸念」を表明した。北朝鮮による核・ミサイル開発を非難し、拉致問題の即時解決を求めた。

 経済安保については、1)違法な技術移転への対処2)強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)構築3)重要インフラの保護−での協力を強化することで一致。サイバーや資源安全保障の分野でも連携強化を確認した。中国がオーストラリア産食品の輸入制限を行っていることを踏まえ、経済的威圧に対抗することでも足並みをそろえた。

 また、平成19年に両政府がまとめた安全保障協力に関する共同宣言について、改定に向けた作業を進めることで合意。両首相が担当部局に作業を指示し、「可能な限り早期」に発表するとした。

日豪、防衛協力強化へ 円滑化協定

 日豪両政府が自衛隊と豪軍の相互訪問に関する円滑化協定に署名したことで、両国の防衛協力をさらに強化する素地が整った。これまでは共同訓練や人道支援・災害救助など友好関係の深化を目指す活動が中心となっていたが、日本側には中国の脅威を踏まえ、オーストラリアの地政学上の利点を活用した戦略的な協力を求める声もある。(杉本康士)=1面参照

 円滑化協定は、豪軍が日本国内で活動する際や、自衛隊がオーストラリアで活動する際の課税免除や法的地位を定める。これまで相互訪問のたびに両国間で調整していたため、準備に時間がかかっていた。今後は共同訓練や災害救助などが迅速に行える。日本側担当者は「千人、2千人の大規模なオペレーションも推進が可能になる」と語る。

「日豪円滑化協定の署名と今回の会談により、日豪関係が一層飛躍していくと確信している」

 岸田文雄首相は6日のモリソン首相との会談で、こう強調した。両政府は今後、具体的な防衛協力の在り方を協議し、安全保障協力に関する共同宣言をまとめる方針だ。

 日本側にはオーストラリアの「地の利」を生かした協力への期待もある。中国は射程1500キロ超の東風(DF)21Dや、約4千キロのDF26など中距離ミサイルを大量配備しており、日本列島を射程に収めている。これに対し、オーストラリアはほぼ射程圏外にあり、自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35など高価な装備をオーストラリアに訓練などで展開することで、仮に有事となった場合でも、戦闘初期の打撃を回避できるというわけだ。

 日豪間では令和元年に豪空軍のFA18戦闘機が北海道の千歳基地を拠点に航空自衛隊戦闘機と共同訓練を行っているが、戦闘機部隊の相互訪問は実績に乏しい。防衛省関係者は「戦闘機を持っていくとなれば、手続きも煩雑になる」と説明するが、円滑化協定が発効すれば柔軟な運用が可能となる。政府は年末に国家安保戦略など戦略3文書の改定を控えており、日豪協力の強化を組み込んだ防衛態勢の構築も考えられる。

──────────────────────────────────────※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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