長)の主催によりに台北市内の国賓大飯店で開かれたシンポジウム「アジア太平洋地域の
安全と台湾海峡の平和」で登壇して挨拶している。
ここにそのスピーチの全文を紹介したい。
ご挨拶「日台関係の強化とアジア太平洋地域の安定」
日本国衆議院議員 菅 義偉
ただいまご紹介いただきました、衆議院議員の菅義偉と申します。
本日は「アジア太平洋地域の安全と台湾海峡の平和」国際会議が台湾安保協会の主催に
より、このように盛大に開催されますことを心からお祝い申し上げます。この会議にお招
きいただき、出席できますことを大変誇らしく思います。
◆前回の訪台
私は、昨年の4月にも台湾に来て、本日ご出席の王金平立法院院長、許世楷前駐日代表、
そして馬英九総統といった方々と会談いたしました。それに続いて今年も台湾に来れたこ
とを大変うれしく思います。
◆自己紹介、横浜と台湾
私は、約5年前に総務大臣としてこちらの安倍総理大臣をおささえしました。日本の総務
大臣は、放送や郵便のどの情報通信、地方自治、行政の監督などを担当しています。現在
は、日本の下院にあたる衆議院の議院運営委員会の筆頭理事を務めています。本日はよろ
しくお願いします。
私の選挙区は横浜市で、日本最大の中華街があり、私も、横浜在住の台湾出身の方々の
会、横浜華僑総会(施梨鵬会長)とは親しく交流しています。また、横浜にある横浜中華学
院は孫文先生が提唱されて創立された海外唯一の国父記念校だと聞いています。横浜と台
湾の関係はとても親密ですので、皆様にも是非お越しいただきたいと思います。
◆東日本大震災への支援
スピーチするにあたり、まず皆様にお礼を申し上げなければなりません。今年の3月11日
に起こりました東日本大震災では、台湾は救援隊の派遣や、救援物資、そして200億円を超
える義援金をいただきました。これは、世界最大規模で、それも民間の方々が少しずつ出
し合ってくれたものが中心だと聞いています。馬総統は、「1999年の台湾中部地震、2009
年の台湾南部大水害のときに日本がいち早く支援したことへの恩返し」だとおっしゃって
いました。温かいご支援に心から御礼申し上げます。
◆東アジアの安全保障と最近の日本外交
日本ではちょうど2年前にわれわれ自民党から現在の民主党に政権交代がありました。詳
細は後に話される安倍先生にゆずりますが、民主党は、日米中の三角外交なるものを持ち
出して、外交が迷走します。
沖縄の普天間基地移設問題で日米関係が悪くなり、日中関係も尖閣諸島周辺領海におけ
る漁船衝突事件などでこちらも悪くなりました。
台湾との関係も同じです。安倍内閣をはじめ、自民党はこれまで台湾との友好関係を大
事にしてきました。しかし残念なことに、民主党政権となってから議員交流が非常に減っ
ています。台湾と日本の関係は、この会議のタイトルでもある「アジア太平洋地域の安全
と台湾海峡の平和」にとってとても重要です。
言うまでもなく、中国の軍事力が東アジアの安全に取って最大の脅威となっています。
今も1000〜1200基の短距離弾道ミサイルが台湾に向けられ、近年では東シナ海や南シナ海
で海洋への権益確保のために示威行為を繰り返しています。この共通の脅威に対して、周
辺諸国は協力して臨まなければなりません。特に、自由、民主主義など価値観を同じくす
る、台湾、日本、アメリカなどの緊密な連携が、軍事力を膨張させる中国へ対応するには
非常に重要です。
安全保障に関しては、この後の安倍先生がお話されますのでこれぐらいにして、私はそ
れ以外の、日本と台湾の文化交流などについてお話したいと思います。
◆国民の意識
日本と台湾の国民感情がお互いに非常に良好なことは、意識調査で明らかです。今年5月
に日本で行われた意識調査では、「台湾のことを身近に感じます」かという質問に、とて
も身近に感じるが19%、どちらかといえば身近に感じる48%、合わせて3分の2の日本人が
台湾を身近に感じています。「台湾を信頼していますか」との問いには、多少は信頼して
いる64%、非常に信頼している20%、合わせて84%のひとが台湾に信頼を寄せています。
これは、2年前の同様の調査と比べてそれぞれ10%以上よくなっています。
台湾における2010年の調査でも、最も好きな国はどこかとの問いには、日本が52%と2位
のアメリカ8%を大きく引き離しています(台湾が最も親しくすべき国:日本31%、中国
33%)。昨年に、台湾に来た際の会談の中でも、戦前の半世紀50年にも及ぶ日本の統治につ
いて、感情的な評価でなく、インフラ、農業の整備などを客観的に評価していただいてい
ると感じました。世論調査でもそれが表れているのでしょうか、日本にとっては非常にあ
りがたいことです。
◆経済、観光
経済的にも親密です。日本にとって台湾は第4位の貿易相手、台湾にとって日本は第2位
の貿易相手です。2007年には日本の技術を導入した新幹線が成功を収めています。人の交
流も活発で、年間双方からそれぞれ100万人、合計200万人を超え人々が日本と台湾を行き
来しています。昨年にはそれぞれ都心に近い、羽田─松山空港便が就航し、成田─桃園空
港便に比べて片道2時間便利になっていて、さらに交流が盛んになることが期待されます。
◆美術品公開促進法
さらに、文化交流も大きく進むことが期待されます。今年の3月に、日本で「海外美術品
公開促進法」が日本で成立しました。これは、海外から借りた美術品を他の人に取られな
いようにする法律です。つまり、日本で故宮博物館の展示を実施中に、中国がそれらの文
化財が自分たちのものであると主張し、訴訟を起こしたとしても、裁判所はそれらを差し
押さえることができなくなりました。これによって、日本でも人気のある故宮博物館の日
本での展示会が実現に大きく前進しました。
◆のど自慢
また、もうひとつ、日本のNHKに人気番組である、のど自慢が10月2日に台北市の国父記
念館で開かれることになりました。のど自慢は、これまで世界11都市で開かれていました
が、予算の関係などから2005年を最後に海外での開催が止まっていました。横浜在住の呉
正男さんという方が熱心に活動されていて、私がNHKを所管する総務大臣のときに、「ぜひ
台湾でのど自慢を!」という熱いご要望をいただきました。私は、海外公演を再開の検討
と、再開するときには台湾で開くことをNHKに指示していましたので、今回実現することは
大変うれしいです。(観覧、出場の申し込みは終了)
◆おわりに
日本と台湾は自由、民主主義などの価値観を同じくしています。これからさらに、日本
と台湾が、隣人としてより親しく関係を深めることが、両者の発展にのみならず、アジア
太平洋地域の安全、安定、平和にとって必要不可欠です。私も、本日ご列席の皆様ととも
に日本と台湾の友好に力を尽くすことをお誓い申し上げ、お祝いのスピーチといたします。