人々の期待するところであり、日本と台湾の双方の「国益」に合致するだけでなく、安全
保障にもつながる重要な側面を持つ。尖閣問題を利用して日台関係に楔(くさび)を打ち
込んで日台の分断化を謀ろうとする中国の覇権的野望を打ち砕くためにも、日台漁業協定
の締結が急がれるのだ。
しかし、10月1日、昨日(10月3日)に東京都内で開かれる予定だった第17回日台漁業交
渉が日延べされたと、産経新聞は伝えた。
すでに本誌で、8月15日の「啓豊2号上陸事件」をきっかけに、台湾側から日本に漁業交
渉を持ちかけた経緯を詳述した。
確かに、日本側の対応は間が悪かったとしか言いようがない。交流協会台北事務所が9月
13日に出したプレスリリースまでは順調だったと言っていいだろうが、9月23日の交流協会
台北事務所へのデモや25日の尖閣諸島に向けた漁船による海上デモで一気に潮目が変わっ
た。馬英九総統が国内向けの人気取りパフォーマンスに意を注ぎ、内閣改造で楊進添・外
交部長(外務大臣に相当)が交替する時期と重なった。
9月25日、今井正・交流協会理事長が訪台して楊部長と会談したものの、楊部長は27日に
次の外交部長と交替する直前だった。漁業協議の再開日程について合意に至らなかったの
も無理はない。
9月27日、前駐EU代表の林永楽氏が新しい外交部長に就任、その第一声は「日本側とは
引き続き漁業交渉を進める」だった。
その林永楽・外交部長は昨日の記者会見で、日本側と漁業協定について交渉しているこ
とを明かし、「日本側も開催に意欲的で、双方の意思疎通は非常に順調」だと述べたとい
う。中央通信社が記者会見の内容を伝えているので下記に紹介したい。
林外交部長 「台日漁業協力問題で交渉中」
【中央通信社:2012年10月3日】
(台北 3日 中央社)外交部の林永楽部長は3日午前の記者会見で、次回の第17回台日漁
業協力会談の開催見通しについて、交渉は順調であると述べた。
林氏は、日本側も開催に意欲的で、双方の意思疎通は非常に順調であり、今回の交渉で
漁業者の操業権益が保障されるよう具体的な成果を出すため、引き続き日本側と協議を重
ねるとした。
また、駐日代表(大使に相当)の沈斯淳氏が日本に戻る時期については、現在検討中だ
が、今回の帰国の目的であった総統への報告や国家安全会議、立法院などでの報告業務は
一段落しており、かなり早いうちに戻るだろうとの見通しを示した。