3月28日(現地時間)、南米のペルーで武漢肺炎の感染拡大による国境封鎖のため足止めされていた日本人旅行者29人が駐ペルー台北経済文化弁事処の手配によるチャーター機に同乗して出国することができ、一方、4月1日にはロックダウン(都市封鎖)しているインドから邦人とともに12人の台湾人が日本政府の手配した日航機に同乗して出国できました。
産経新聞の本日の社説「主張」はこのことを取り上げ「世界が危機的な状況にある今だからこそ、信頼に足る隣人と協力し合う関係は欠かせない」と強調っしています。
この社説では「日本と台湾は経済、安全保障の両面で、中国とどのような関係を構築していくべきか、似たような課題を負っている。日台は協力して平和と繁栄を保っていく必要がある」とも述べています。
まさに指摘のとおりで、日本と台湾の国益はほぼ一致していて、運命共同体の関係にあります。「情けは人のためならず」と言いますが、日本のためは台湾のため、台湾のためは日本のためという密接な相互関係で日台関係は成り立っています。
しかし、残念ながら、日本には台湾に関する法律が一本もありません。これまでに結び、今後も結ばれる覚書や取決めを法律で担保できない極めて不安定な状態にあります。
昨年3月、蔡英文総統が産経新聞のインタビューに答えて、日台の「安全保障の実務における対話」を求め、「法律上の障害を克服」することに期待感を示しました。台湾から日本へ安全保障対話を要請したのは初めてであり、台湾側から日台関係の新たな枠組みづくりを求めてきたと言えます。
日本はこの蔡英文総統からの要請にまともに答えることができず、菅義偉・内閣官房長官は記者会見で「日本と台湾との間では、非政府間の実務関係を維持していくのが日本政府の立場」と、申し訳なさそうに答えるのが精一杯の現状です。
しかし法治国家として、これまでに結び、今後も結ばれる覚書や取決めの法的基礎を欠いているのですから、政府(行政府)や国会(立法府)は怠慢の誹(そし)りを免れません。
台湾を「重要なパートナー」とする日本なら、台湾との関係を法的に保障し、日台ともに利する「日台交流基本法」を早急に制定すべきではないでしょうか。この法の制定は、蔡英文総統の切なる要望に応えることにもなります。
武漢肺炎問題では、産経社説も述べるように、日台双方が人工呼吸器などの医療機器や治療薬・ワクチン開発など、情報交換の重要性が指摘されています。
医療の空白地帯をなくせという日本の主張は重要です。しかし、言っているだけでは前に進みません。日本が台湾との情報交換を国内法で保障すれば中国も妨害できず、自ずと道が開けてきます。それが本会の政策提言「日台交流基本法」の制定です。武漢肺炎問題は改めてその必要性を知らしめています。
◆ 2019政策提言「『日台交流基本法』を早急に制定せよ」(2019年6月30日) http://www.ritouki.jp/index.php/info/20190630/
—————————————————————————————–新型コロナと台湾 信頼に足る隣人と協力を【産経新聞「主張」:2020年4月5日】
南米・ペルーの新型コロナウイルス対策による国境封鎖で、現地に足止めされていた日本人旅行者らが3月28日、在ペルー台湾代表部が台湾人のために手配したチャーター機に同乗することで出国できた。
菅義偉官房長官は「ペルーおよび台湾側に深い感謝の念を伝えた」と述べた。人道的な立場から日本人に救いの手を差し伸べた台湾に最大限の謝意を表明したい。
同様に国境を封鎖したインドから、今度は日本政府が手配したチャーター機に台湾人が同乗して出国した。台湾からも謝意が伝えられた。世界が危機的な状況にある今だからこそ、信頼に足る隣人と協力し合う関係は欠かせない。
新型ウイルスをめぐっては、台湾の参加を拒んできた世界保健機関(WHO)に対し、安倍晋三首相が「政治的な立場で排除すれば地域全体の健康維持、感染防止は難しい」と主張してきた。
WHOの背後には、政治問題を優先させる中国の存在がある。
感染や防疫、医療に関する詳細な情報は国際的に共有されなくてはならない。中国の一方的な主張で東アジアに空白地帯を生むことは許されない。台湾のWHO本格加盟の実現に向け、日本は運動の先頭に立つべきだ。
台湾は新型ウイルスの封じ込めに一定の成果を収めている。思い切った水際対策や住民へのマスクの円滑な供給、インターネットを用いた自宅学習など台湾の優れた対応から日本は学ぶべきだ。
日本は人工呼吸器など医療機器の増産や新型ウイルス用のワクチン、治療薬の開発に取り組んでいる。これらの分野で台湾への協力を惜しんではなるまい。
日本と台湾は経済、安全保障の両面で、中国とどのような関係を構築していくべきか、似たような課題を負っている。日台は協力して平和と繁栄を保っていく必要がある。
茂木敏充外相は3日の衆院外務委員会で、新型ウイルスの影響で帰国を希望しながら実現していない邦人が約50カ国に約4千人いると明らかにした。
2日にはポーランドの在留邦人150人が同国政府が用意したチャーター便で帰国し、茂木外相が「深い友好関係の象徴となる協力だ」と謝意を伝えた。こうした厚意の輪の広がりが感染拡大の抑止に結び付けば理想的である。
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