広辞苑問題・権威ある辞書の重大な誤り
台湾 三宅 教子
毎回「台湾の声」ご送付くださり有難うございます。
地球儀の件はまったく驚きますが、例えば私の手元に在りますカシオの電子辞書
EX-word の広辞苑で「日中共同声明」を引きますとこのように出ています。
「1972年9月、北京で、田中角栄首相・大平正芳外相と中華人民共和国の周恩来首相・
姫鵬飛街娼とが調印した声明。戦争状態終結と日中の国交回復を表明したほか、 日本
は中華人民共和国を唯一の正統政府と認め、台湾がこれに帰属することを承認し、中国
は賠償請求を放棄した」
ここで問題なのは「台湾がこれに帰属することを承認し」ですが、日本は「理解し尊
重する」と表明しただけで、その後も今に至るまでこの態度を変えていないはずです。
広辞苑のように権威ある辞書がこのような重大な誤りを犯しています。
日本の方もよくご存じの黄昭堂先生が、台湾国際放送で「戦後台湾の民主化運動史」
を毎週水曜日に放送してくださっていますが、「日中共同声明」のところを下記のよう
に話しておられます。
……この72年の日中国交ですね、どういう内容かと言うと、日本と中国との間に「日
中共同声明」というものが出されます。この日中共同声明の肝心なところは何かと言い
ますと、中国政府は「自分たちが中国を代表する唯一の合法政府である。そして台湾は
中国の領土の一部である」これが中国の立場なんです。で、この中国の立場に対して日
本は「中国の立場を十分に理解し尊重する」、これが日中共同声明の一番大事な所なん
です。
これはどういうことかと言うと、日本は中国の言いなりになったわけではない、中国
が「台湾は中国の一部である」と言う言い方に対して日本は「あ、左様でございますか。
それは私たちも承認します」と言ったわけではないんですよ。承認とはいわないんです
よ。「あなた方の言っている立場を十分に理解し尊重する」と。「解った」というだけ
ですよ。それを認めましょうとは言っておりません。
だからこの立場と言うのは、以後1972年以降も日本政府はずーっとこの立場を続けま
す。
「承認する」と「理解し尊重する」は、国際政治の上で大きな相違があることを、共
通認識にしてゆきたいと思います。
また「カイロ宣言」にしても、ルーズヴェルト米国大統領、チャーチル英国首相、蒋
介石主席三者の署名もないもので、正式な「宣言」とは言えないことは、今では台湾の
多くの方々が知るところです。
これも同じく、広辞苑では「……カイロにおいて会談し発表した宣言」となっていま
す。
このような表記はまだまだたくさんあると思います。私たちは正しい情報が知りたい
わけで、誤りをみんなで探して、正しい情報が提供される方向へ是正してゆくことが大
切だと思います。