天に唾する科学的根拠に基づかない中国の「処理水」海洋放出批判

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を8月24日に開始すると発表した22日、中国政府に呼び出されて抗議を受けた日本の垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国大使は、毅然と次のように反論したという。

<「科学的根拠に基づかない主張を行っていることは残念だ」と述べ、中国が日本産水産物などに対する事実上の輸入規制を敷いたことにも「科学的根拠に基づかない措置は受け入れられない」と、真っ向から反論した。

 垂氏はさらに、中国側が処理水を「核汚染水」と呼んでいることについても、「日本が海洋放出するのは『汚染水』ではなく、『ALPS(多核種除去設備)処理水』であり、中国側はこの用語を使うべきである」と強く求めた。>(8月22日「夕刊フジ」)

 セシウムやストロンチウム、プルトニウムなどの放射性物質を取り除く装置である「多核種除去設備」は、英語でAdvanced Liquid Processing Systemといい、その頭文字から処理された水は「ALPS(アルプス)処理水」と呼ばれる。

 垂秀夫大使については本誌でも、理非曲直をわきまえたチャイナスクール出身者らしからぬ硬骨漢ぶりについて触れたことがある。垂氏は日本台湾交流協会台北事務所勤務も長く、香港領事館にも勤務経験があるキャリアだ。昨年9月に駐中国大使に任ぜられている。

 科学的根拠に基づかない中国の批判は、天に唾する、自分の首を締める結果に終わることは目に見えているようだ。

 8月25日付の「Record China」は「放射線に詳しい専門家で、中国原子能科学研究院で8年、オランダのエネルギー研究センター(ECN)核エネルギー部門で5年勤めた李剣芒(リー・ジエンマン)氏は24日、中国のSNS・微博(ウェイボー)に『この問題について私は少し知識がある』として、自身の見解を論じ、『福島から排出されるトリチウムの総量は心配するに値しない』と述べたところ、SNSアカウントが封鎖された」と、台湾メディアの三立新聞網の記事を紹介している。

 さらに、8月29日付の「Record China」は、中国のあるネットユーザーが中国・上海市の自宅で放射線量を測定したところ「『数値は福島の3.0マイクロシーベルトよりもひどく、最高で9.7マイクロシーベルトになった。本当に驚いた。中国中央テレビ(CCTV)のニュースによると東京の数値は0.01マイクロシーベルト。うちは東京の976倍になる』とし、『カウンターは半年前に購入したが、まさか自宅で(数値が)爆発すると思わなかった。もう頭が痛い』とつづった」という台湾メディアのNewtalkの記事を紹介していた。

 放射線に詳しい専門家のSNSアカウントがなぜ封鎖されたのかという疑問は、不都合な真実を隠そうとしている中国政府への不信感を招き、中国の自宅マンションの放射線量がなぜ福島や東京より高いのかという疑問は、不動産業者への不信感を生み、不動産不況に追い打ちをかけることになるようだ。

◆垂秀夫駐中国大使、処理水イチャモンの中国一蹴 「核汚染水」表現の変更も求める チャイナスクールに珍しい物言う外交官 【夕刊フジ:2023年8月23日】 https://www.zakzak.co.jp/article/20230823-F6ABJYF4SVMURF3MC67Q4P2Y44/2/

◆「日本の処理水海洋放出は心配ない」と投稿、中国専門家のアカウントが封鎖される─台湾メディア  【Record China:2023年8月25日】 https://www.recordchina.co.jp/newsinfo?id=919487

◆上海の自宅で放射線量を測定したら東京の976倍に!?─台湾メディア 【Record China:2023年8月29日】 https://www.recordchina.co.jp/b919625-s25-c30-d0052.html

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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