大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾  武田 安恵(日経ビジネス記者)

中国の文化観光省は7月31日、47都市の住民に認めていた台湾への個人旅行を8月1日から「当面の両岸関係に鑑み」一時停止すると発表した。

 本誌でもこのことを伝えたときに「中国が個人旅行を停止するのは初めてのことだそうで、ほとんどのメディアは『個人旅行の停止を公表するのは異例』と報じ、その狙いを『総統選をにらんだ蔡英文政権への圧力』としている」と伝えた。

 その後、台湾はどうなったのだろうか。韓国のように騒いでいるのだろうか。

 中央通信社は、中国からの宿泊客はこれまで全体の4割強を占めていたという台北の「円山大飯店」は日本人や韓国人旅行客の誘致を強化することで新たな市場開拓に力を注いでいると報じ、林育生董事長の「対策を練っていたため、打撃はそこまで大きくならない」との談話を紹介、中国のこのような圧力は織り込み済みとする台湾のたくましい一面を紹介している。

 日経ビジネスの武田安恵記者も「台湾の観光業は中国大陸に依存しない構造へと転換しつつある」と指摘している。その記事を下記にご紹介したい。

—————————————————————————————–大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾  武田安恵(日経ビジネス記者)【日経ビジネス:2019年8月19日】

 中国政府が8月1日に中国大陸から台湾への個人旅行を停止してから半月あまりが経過した。台湾メディアによれば、足元では、中国個人客が1日単位で貸し切ることの多い観光タクシーの利用に落ち込みが目立っているとのことだが、ホテルや飲食店などへの影響はなお未知数のようだ。

 今回の中国政府の動きには2020年1月に実施予定の台湾総統選が背景にあると考えられている。「一つの中国」原則を認めない蔡英文政権に圧力をかけることで、彼女の再選を阻止しようとする狙いがあると言われている。また7月に蔡総統がカリブ海諸国への外遊の途中、米ニューヨークに長期滞在したり、米国から武器を購入したりと、米トランプ政権と親密な関係をアピールする動きも、中国の強硬姿勢につながった。

 加えて、多くの台湾メディアが、香港の民主派市民のデモとの関係を報じている。中国大陸から台湾に渡航すると、本土では流れていない香港デモの情報に接する機会が多くなる。情報統制の観点から自由な渡航を制限しようとする意図があるとの見方だ。

 もっとも、台湾側は今回の中国大陸の個人観光客の渡航禁止を冷静に受け止めている。08年に当時の馬英九総統が中国大陸の観光客の台湾訪問を認めて以降、中国大陸からの旅行者数は増加の一途をたどってきた。12年には200万人を突破し、15年には343万7000人まで増加した。

 しかし、16年に蔡英文政権が発足すると、16年284万人、17年209万人、18年205万人と減少した。旅行者数の減少は、中国政府が台湾へのけん制を目的に、意図的にビザの発給を抑制した結果ではないかとも言われている。それでも台湾を訪れる旅行者数は中国大陸からがナンバーワン。台湾交通部観光局の統計によると2位の日本(144万人)を大きく引き離している。

 16年に中国大陸からの客足が遠のいた際、台湾の観光産業は大きなダメージを受けた。台湾では中国大陸からの観光客を「陸客」と呼ぶが、「陸客専門」をうたうホテルやレストランの中には倒産したところもあった。当時の反省を踏まえ、台湾では韓国や東南アジアからの旅行客を中心にビジネスを展開する動きが加速した。

 台湾の当局も、中国大陸に依存しない経済成長を目指すスローガン「新南向政策」を掲げ、こうした動きを後押ししている。対象となる東南アジア、南アジア、ニュージーランド、オーストラリアの計18カ国に対し、観光分野のプロモーションを強化。現在、東南アジア諸国から台湾を訪れる旅行客に対してビザ申請手続きを簡素化したり、免除したりする動きを加速させている。

 大陸からの旅行客の落ち込みを東南アジアで補う構図は、訪台旅行者数の推移からも見て取れる。16年に1000万人を突破して以降、その勢いは衰えず、17年1072万人、18年は1106万人と大陸からの旅行者数の減少にもかかわらず、全体の訪台旅行者は増えている。

 中国当局による今回の措置がいつまで続き、どの程度影響が出るのかは、まだ分からない。一つだけ言えるのは、台湾の観光業は中国大陸に依存しない構造へと転換しつつあるということだ。

              ◇     ◇     ◇

武田安恵(たけだ・やすえ)2006年、東京大学大学院学際情報学府修了。専門はジャーナリズム、メディア論。入社後、日経マネー編集部を経て2011年4月より日経ビジネス記者。主な担当はマクロ経済、金融、マーケット。海外記事の翻訳を掲載するページ「世界鳥瞰」の記事翻訳・編集も手がける。特技は空手(松涛館流二段)、趣味はミュージカル鑑賞。主な著書に『私のマネー黄金哲学』(日経BP出版センター、2010年)。


【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

*台湾ビール(缶)は在庫が少なく、お申し込みの受付は卸元に在庫を確認してからご連絡しますの
 で、お振り込みは確認後にお願いします。【2016年12月8日】

● 美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【常時受付】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、宅配便の都合により、恐縮ですが1件につき
 1,000円(税込)を別途ご負担いただきます。【2014年11月14日】

● 台湾土産の定番パイナップルケーキとマンゴーケーキのお申し込み【常時受付】
  2,900円+送料600円(共に税込、常温便)[同一先へお届けの場合、10箱まで600円]
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/2018pineapplecake/

● 最高級珍味 台湾産天然カラスミのご案内【常時受付】
  4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)[同一先へお届けの場合、10枚まで700円]
  http://www.ritouki.jp/index.php/info/20160427karasumi/
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/20160427karasumi/

● 書籍お申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・松本洽盛編著『むかし「日本人」いま「台湾人」』 *new
・浅野和生編著『日台関係を繋いだ台湾の人びと(1)・(2)』
・渡辺利夫著『決定版・脱亜論─今こそ明治維新のリアリズムに学べ』
・呉密察(故宮博物院長)監修『台湾史小事典』(第三版)  *在庫僅少
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』 *在庫僅少
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

● 台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

*第1号〜第15号(最新刊)まですべてそろいました。【2017年6月8日】

● 映画DVDお申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『海の彼方』
・『台湾萬歳』
・『湾生回家』
・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『台湾人生

● 講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・2018年 李登輝元総統沖縄ご訪問(2018年6月23日・24日)*new
・2014年 李登輝元総統ご来日(2014年9月19日〜25日)
・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
・入会申し込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(渡辺利夫会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1
 Twitter:https://twitter.com/jritouki

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:00110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。



投稿日

カテゴリー:

投稿者: