ている立法委員の蕭美琴氏。1971年、神戸生まれの台南育ちで、蔡氏の側近中の側近と言われる。
花蓮県は中国国民党の鉄壁ともいわれる票田だが、蕭美琴氏が2度目の挑戦で五分五分の戦いを
していることを産経新聞が伝えている。
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立法委員選、国民党の牙城に挑む女性候補 蔡氏側近の蕭氏が善戦
変わる風向き、対中関係も影響
【産経新聞:2015年12月16日】
台湾の立法委員選の行方が注目される中、激戦区の一つに挙がるのが東部の花蓮県(全県1区)
だ。長く与党、中国国民党系の「不敗県」とされながら、野党、民主進歩党の蔡英文主席の側近女
性候補が「五分五分」(台湾メディア)と善戦している。目立った産業がなく中国人観光客への依
存が高まる中、選挙戦の現場で何が起きているのかを探った。(花蓮 田中靖人)
「花蓮は長く中央から軽視されてきた。両岸(中台)関係は現状維持でいいが、花蓮の現状維持
は許されない」
軍民共用の花蓮空港や県政府(県庁)がある中心部から南へ約80キロの農村、玉里鎮。民進党の
蕭美琴(44)氏は12日、約300人の支持者を前に声を上げた。壇上には、地元行政の末端を担う里
長15人のうち11人が並んだ。民進党籍は1人もなく、国民党籍の里長(67)は「蕭氏は何でも助け
てくれる。党ではなく人を選ぶ」と語った。
◆かつて「民進支持」と口にすらできず
蕭氏は、2010年の補選に落下傘で出馬し落選した。12年には比例区で当選し、今回は2度目の挑
戦。蔡氏との「近さ」と「真面目さ」を前面に打ち出す。
山岳地の台湾東部は戦後、開発が遅れた。観光と農業、石材業以外に産業がない花蓮は「軍公教
(軍人、公務員、教員)」の比率が高く、支持者の比率は国民党7割対民進党3割とされる。民進党
は08年の選挙区改正以降、立法委員選で勝てていない。当時も党主席だった蔡氏の最側近として
「身をささげた」という蕭氏は、「かつては民進党支持を口にすることもはばかられた花蓮で、国
民党員も私を支持してくれる」と変化を感じている。
馬英九政権は08年に中国大陸からの団体観光を解禁。開放景勝地のタロコ峡谷がある花蓮は、今
では来訪者の6割を占める中国人目当てのホテルが駅前に新築され、道路整備も観光地が優先され
ている印象だ。
◆「中国、下手に手を出せば逆効果」
蕭氏は東南アジアの富裕層や日本人を狙った観光の多様化や農業の高付加価値化などを訴えてい
る。中国当局が観光業者らを通じて選挙に介入することを警戒しつつ、「世論調査で民進党が大幅
にリードする中、中国が下手に手を出せば逆効果になる」とみる。
一方、国民党の現職、王廷升氏(50)は10年の補選で蕭氏を破って当選し、現在2期目。県政界
で40年以上活躍した前県長、王慶豊氏(82)の息子で、「王家の2代目」と「プリンス」をかけた
「小王子」と呼ばれる。
◆国民党の実績強調、逆転を期す
王廷升氏は13日、花蓮市郊外の吉安郷で約400人を集め集会を開いた。王氏は過去に国民党が
行った鉄道や道路などの建設の成果を強調。自身を「花蓮生まれ花蓮育ちだ」として、「蕭氏の心
は花蓮にない」とライバルを批判した上で、「蔡英文氏が総統になり民進党が国会の過半数を取れ
ば、両岸(中台)のビジネスチャンスは水泡に帰す」と危機感をあおった。
総統府の国策顧問を務める父親の王慶豊氏は取材に対し、馬政権が12年に定めた10カ年400億台
湾元(約1500億円)の東部開発計画は「馬総統が私の意見を尊重してくれた結果だ」と強調。選対
幹部も国民党への逆風と出遅れを認めつつも「地力はこちらが上。王慶豊氏も息子の票固めに乗り
出した」と巻き返しを期している。