和田有一朗・衆議院議員が台湾に関する戸籍と住民票について質疑

 本誌で何度か紹介したように、昨年10月の衆議院総選挙で初当選した和田有一朗(わだ・ゆういちろう)衆議院議員(日本維新の会)は、今年の3月から委員として所属する衆議院外務委員会で台湾や日中共同声明などに関する質疑を立て続けに行っています。

 10月28日の外務委員会では、本会が2010年(平成22年)から取り組んでいる台湾出身者の戸籍問題について質疑しました。

 台湾出身者の戸籍問題とは、台湾出身者が日本人との結婚や養子縁組をする場合、または日本に帰化するなど、その身分に変動があった場合、戸籍における国籍は「中国」、出生地は「中国」「中国台湾省」「中華人民共和国」などと表記される問題です。

 近年、台湾有事のことがかなり取り沙汰されるようになっていますが、和田議員はこの台湾有事に際して、この戸籍のことが中国(中華人民共和国)に「内政干渉」だという理由に使われる危惧について林芳正・外務大臣などに質しました。

 和田議員は住民票においても、台湾に仕事で赴任していた人が日本に帰国したときの転入届では前住所が「中華人民共和国」や「中華人民共和国台湾省」とされている自治体があることや、ロシアが自国領だと主張しているウクライナ4州における住民投票を国内問題として取り扱った事例も併せて紹介しながら、日本が戸籍や住民票という公文書において台湾出身者を「中国」と表記していることは、台湾有事において、日本が中国に「そのようなことをしてはいけない」と牽制した場合、中国から「何を言っているんですか、日本さん、あなたたちは台湾のことを中華人民共和国台湾省と書いているじゃありませんか。法的に台湾が中華人民共和国だと認めているでしょ。内政干渉だと言い返されてしまう。ここら辺で台湾出身者の住民票も戸籍も整理をしなくてはならないのではないか」と質疑しました。

 これに対し、林芳正・外務大臣は「台湾有事という仮定のことに対しての答弁は差し控えさせていただきたい」と、案の定、仮定のことは「差し控えさえていただきます」と切り出し、「ご指摘の住民票事務や戸籍事務を所掌する省庁で検討されると承知をしております。政府としては、台湾との関係は非政府間の実務関係として維持しゆくという従来からの立場を踏まえて、双方の民間窓口機関の対話や取決めを積み上げてきており、引き続き適切に対応してまいりたいと考えています」と答弁しました。

 政府答弁はいつもこうです。質疑と答弁が噛み合わないというより、質疑に対してまともな答弁が返ってこないのです。それでいて「適切に対応してまいりたい」とまるめてしまいます。

 和田議員は、日台間では実質的に経済連携協定(EPA)の分野で、租税条約ともいうべき二重課税を廃止する「日台民間租税取決め」を2015年11月に結んでいることなどが念頭にあったのだと思われますが、いささかあきれ気味に「もう積み上げ切っているんですよね、実は。ピークにきているんです。だから今こういう事態に至りはじめていると私は思うんです」と述べつつ、時間の関係もあり戸籍と住民票問題の質疑を打ち切り次の質疑に移りました。

 これまで台湾出身者の住民票や戸籍の問題は、外国人登録証明書問題と同じように、表記上の問題と認識していた方は少なくないと思います。つまり、「中国(台湾)」や「中華人民共和国台湾省」という表記を「台湾」にすればすむ問題と思っていたのですが、それ以上に日本の国益を損ないかねない重大な問題をはらんでいたことを和田議員の質疑が明らかにしました。

 この表記のままにしておけば、台湾有事が起こったとき、日本は中国から「日本自身が戸籍で台湾出身者の国籍を中国としており、住民票でも台湾から帰国した人の前住所を中華人民共和国としているのだから、公文書で台湾を中国の一部と認めている。だから内政干渉を止めよ」と反論されることは十分に想定されます。

 いまでも中国は事あるごとに「中台関係は内政問題なのだから、日本は内政干渉を止めよ」と言ってきているのですから、今後、住民票や戸籍表記を理由に反論してくるのは必至です。これに対して日本は反論できるのでしょうか。

 住民票や戸籍の表記は、日本自らわが身を縛る愚かな行為です。国益を損ないかねません。加えて、事は台湾人の人権問題でもあります。

 台湾出身者の国籍を中国とする「戸籍法」の改正を早急に進めなければなりません。また、市区町村の自治体で台湾への転出、台湾からの転入で、いまだに前住所を「中華人民共和国」や「中国(台湾)」などと表記している自治体も早急に「台湾」への表記に改める必要があります。

◆和田有一朗議員:衆議院外務委員会質疑 2022年10月28日(金)11時17分〜12時04分(47分) https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54151&media_type= *10月28日の外務委員会は6時間20分55秒で、和田議員の質疑は「2:36:22〜3:23:58」の47分です。 *戸籍や住民票に関する質疑は「3:09:20〜3:17:32」です。

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