呉正男氏などソ連に不当抑留された台湾出身元日本兵を描いた台湾映画「氷封的記憶」

去る1月17日、本会理事で元信用組合横浜華銀理事長の呉正男さん(97歳)などソ連抑留の台湾出身元日本兵の戦後などを描いた台湾のドキュメンタリー映画「氷封的記憶(Memories Frozen in Time)」の上映会が横浜市内で開かれた。

1945年8月の終戦後、当時のソ連は日本軍人など57万人から70万人をシベリヤやモンゴル、カザフスタンなどに強制連行し、ダム建設などの過酷な労働に従事させ、6万人以上の人々が非業の死を遂げている。

強制抑留された中に台湾出身者は19名いることが判明しているそうだが、正確な数字は分かっていない。

この映画ではそのうちの3名を登場させている。

当日の会場には本会や台湾協会、東京台湾の会などの関係者が多数参加し、許明淳監督をはじめ、映画に登場する呉正男さんや、台湾において祖父、陳以文さんのシベリヤ抑留の足跡を追った『零下六十八度』を出版した台湾史研究家の陳力航さん、許丙・貴族院勅選議員の子息で、やはりシベリアに抑留された許敏信さんを父とする作詞家の許瑛子さんなどが登壇し、許監督とともにトークイベントに臨んだ。

映画「氷封的記憶」は2022年に打ち合わせが始められ、2023年に撮影を開始し、台湾、日本、ロシアを訪れて関連遺構や台湾人元日本兵とその家族らを取材するなど約3年をかけて2025年に完成し、12月9日に台湾でプレミア試写会が開かれている。

映画には許監督の息子さんも登場する。

許監督は上映会が終わってからのトークイベントで、作品をきっかけに台湾が置かれている状況や将来に関する世代を超えた対話をしてもらいからだと息子さんを映画に登場させた理由を話し、また、自分は何者なのかというアイデンティティの問題に直面したことを語り、独裁者の昔には戻りたくない旨を話した。

下記に紹介する記事では「許明淳監督が、巡回上映会や特別講座などを開いて台湾でもあまり知られていない時代に翻弄(ほんろう)された台湾人元日本兵の歴史を伝える取り組みを続けている」と報じている。

2022年12月、日本では二宮和也氏が主演をつとめた映画「ラーゲリより愛を込めて」が上映され、観客動員200万人を突破する大ヒットを記録した。

昨年8月には、TBSテレビでも放送された。

「氷封的記憶」で取り上げた呉正男さんたちは、「ラーゲリより愛を込めて」の山本幡男(やまもと・はたお)さんと同じく当時は日本人だった。

台湾映画「氷封的記憶」は、台湾出身元日本兵の歴史を描いた貴重な作品だ。

日本でもせめて巡回上映会を開き、観る機会をつくってもらいたいと切望している。


シベリア抑留経験の台湾人元日本兵 記録映画監督が歴史伝える【中央通信社:2026年2月15日】https://japan.focustaiwan.tw/culture/202602150002

(台北中央社)第2次世界大戦後にシベリアで抑留された台湾人元日本兵を題材にしたドキュメンタリー作品「氷封的記憶」を手掛けた許明淳監督が、巡回上映会や特別講座などを開いて、台湾でもあまり知られていない時代に翻弄(ほんろう)された台湾人元日本兵の歴史を伝える取り組みを続けている。

許監督は、台湾が置かれている状況や将来に関する世代を超えた対話をしてもらい、国家の在り方やアイデンティティーを探りながら、より多くの共通認識を形成してほしいと願いを語っている。

作品は許監督が史料を精査し、台湾、日本、ロシアを訪れて関連遺構や台湾人元日本兵とその家族らを取材するなど、約3年かけて制作した。

第2次大戦で従軍した台湾人は約20万人いるとされ、うちシベリア抑留を経験した人は少なくとも19人いたことが分かっている。

抑留を経験した台湾人元日本兵は、台湾に戻った後、当時の中華民国政府から「潜在的な共産党のスパイ」と見なされ、その多くが自身の経験を語らず、沈黙を強いられた。

それだけでなく、共産党やロシアに批判的な教育を受けた子世代との間に認識の隔たりが生じたとされている。

許監督は、上映会や特別講座を開くことについて、作品をきっかけに対話の機会を作りたいからだと話す。

作品に登場した台湾人元日本兵はいずれも自ら志願して従軍したが、捕虜となったことで、人生が大きく変えられてしまった一方、中国による戦争の脅威に直面する現在の台湾では、中国を「敵」と見なすかどうかの時点でさまざまな意見があると指摘する。

作品では、シベリア抑留を経験した陳以文さんの経験をまとめた書籍「零下六十八度」を出版した台湾史研究家の陳力航さんが歴史顧問を務めた。

力航さんは以文さんの孫で、実際に自身と父親、以文さんとの間にも認識の隔たりがあったと話す。

作品を通じた対話の機会について、別の世代とのつながりや別の世代の人々がどのように戦争の記憶と向き合ったかを知ることができるとし、世代間の理解に寄与するとの見方を示している。

(呉書緯/編集:齊藤啓介)。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


投稿日

カテゴリー:

投稿者: