アジアはキナ臭くなった。北朝鮮のミサイル発射、金正男暗殺、アメリカの先制攻撃、韓国の朴
槿恵大統領罷免とTHAADミサイルの設置など、現状は刻々と変わっている。戦争になれば日本も台
湾も巻き込まれる。台湾の蔡英文総統は情勢変化に対応できていない。
1964年に「台湾人民自救宣言」を発表して逮捕されたあと国民党の監視をかいくぐって台湾を脱
出した彭明敏教授が『台湾に与える備忘録』と言う新書を発表し、11日の新書発表会には多くの政
治家が参加し、台湾の将来について活発な討論が行われた。
発表会で新憲法を制定するか、現憲法を修正するかと聞かれた彭教授は、「制憲も修憲も似たよ
うな問題を抱えているが、大切なことは台湾の領土は台湾澎湖のみと確定すること。領土範囲を確
定しなければいくら討論しても一切無駄だ」と述べた。「中華民国憲法では、中華民国の領土を台
湾、中国大陸のほかにチベットも外蒙古も入れている。こんな憲法は世界では通用しない。領土を
確定しなければ民主国家として世界が認めるはずがない」とも述べた。いろいろな正名制憲論があ
る台湾で、彭教授の意見は核心をついたと言える。
台湾の領土は中国大陸やチベットを含まない。更に、蔡英文は尖閣諸島と南沙群島の太平島
(Itu Abn Island)を台湾(中華民国)の領土と主張するのをやめるべきだ。
●国の基本は領土と国民
中華民国憲法は統治していない領土まで自国の領土としているが、こんな憲法は通用しない。領
土の範囲と同時に、台湾国民は台湾をわが国と認識すべきである。私は「国家の基本」は領土の外
に国民も入れるべきと思う。国民とは祖国を認め、他国の国民ではないと認識する事である。
台湾には自分が台湾人だと言う者が85%、台湾人だが中国人でもあると言う者が12%、自分は中
国人だと言う者が3%いる。おのれは中国人と認めれば台湾独立を認めるはずがない。台湾人であ
り中国人でもあると言うのは蝙蝠のようなものだ。台湾の憲法は領土の範囲を台湾澎湖とする。国
民投票は台湾を祖国と認めるものが投票する。当然のことながら今の台湾では曖昧になっている。
政党も国民と同じである。台湾國の政党なら台湾と中国は違う国だから中台統一を主張すべきで
はない。現在の台湾は領土も国民も曖昧になっている。台湾国民党なら中台統一を主張すべきでは
ない、中国国民党なら追放すべきだ。蔡英文は「台湾=中華民国」を主張すべきではない。国民党
も民進党も国の立場が曖昧だから独立できないのだ。
●中国の恫喝
中国は台湾が独立を主張すれば武力で統一すると恫す。台湾は武力では勝てないが、中国も勝て
ない。米国の態度は曖昧で台湾問題に介入するか、台湾を放棄するか、態度を明らかにしない。確
かなのは中国が武力行使すれば台湾も中国も大損害を受けることだ。
中国は経済断交で台湾を脅すかもしれない。台湾の経済は40%ぐらい中国に頼っている。しかし
経済断交も双方が損害を受けるだけでなく、アメリカや日本、欧州が介入すれば中国の受ける打撃
の方が大きくなる。つまり、経済断交も武力行使も台湾側が一方的に不利で中国側に有利というこ
とではない。台湾が独立主張をしても中国は何もできないのだ。
●被動的対応から主動的対応へ
彭明敏が述べたように台湾独立は最初に領土範囲と国民資格を明確にすべきである。蔡英文政権
は現状維持にこだわりすぎる。中国や国民党の圧力に対応できない。正名制憲は論外、92共識は沈
黙、中国の恫喝に怯え、メディアにも対処できない。アメリカは台湾の現状維持を望んでいるが、
北朝鮮や韓国の情勢が大きく変わっているのに、台湾が被動的な現状を維持できるのか。台湾はア
ジア諸国の情勢に主導的に対応すべきである。
領土を台湾澎湖に限定すれば中華民国憲法に固執する国民党が反対する。反対できないようにす
る方法はある。
第一に、228事件の真相発表で蒋介石の責任を明らかにし、中国人と台湾人の民族の違いを明ら
かにすることだ。中国人は台湾人ではないとわかれば中国人の影響はなくなる。第二に、国民党が
違法に取得した日本時代の資産を取り返して国民党を破産させ消滅する。
そのあとで新憲法の制定に入る。台湾独立を認めない中国国民党や外省人は国外追放する。一つ
ずつやれば中国人は反対できないはずだ。
蔡英文・民進党は情勢変化に主導的対応ができない。台湾人民は蔡英文・民進党に失望したので
次の選挙は独立系政党に期待している。
国外の評論家は台湾の情勢に詳しくないので国民党が政権を取り返すと言う論文が多く、中国の
情勢判断もあてにならない。だがだが台湾人のアイデンティティが明らかになれば国民党が再び政
権を取ることはないだろう。民主主義は後退せず徐々に前進するものである。台湾が再び中国人に
統治されることはないだろう。