東日本大震災のときに、台湾から心を寄せられる「台湾歌壇」の方々の歌も紹介したこと
があります。
最近は、嬉しいことに台湾の若い世代の同人が増えるとともに、台湾に住む日本人の同
人も増えています。本会理事や会員で同人になっている方も数人います。かくいう編集子
も同人の末席を汚しています。
初代代表をつとめた『台湾万葉集』の呉建堂(ご・けんどう)氏が宮中歌会に招かれた
り、前代表の鄭[土良]耀さんが昨年秋の叙勲で旭日双光章を受章されるなど、日本での
評価もすこぶる高い。同人の蘇楠栄氏や事務局長の黄教子さんなどが歌集を出し、代表の
蔡焜燦先生も『今昔秀歌百撰』に寄稿するなど、それぞれに活躍していることも、その活
力となって若い世代や日本人をも魅了しているようです。
毎月第4日曜日の午前11時から「月例歌会」を國王大飯店の2階で開いています。毎回、
50名から60名の同人が参加し、司会進行役は事務局長の黄教子さん。歌会の後の講評は北
島徹先生(開南大学應用日語學系教授)。
月例歌会の一週間後、黄教子さんから次回の歌会の通知が送られてきますが、必ずその
月の提出歌(詠草)が掲載され、黄教子さんの報告がついています。毎月100名を超える同
人に歌会の通知を送付するのは大変なことですが、こういう地道な活動が活力の源となっ
ているようです。そして、年に1回は『台湾歌壇』という大部の冊子を出版しています。
8月の歌会は去る8月25日に開かれ、そこに私どもも訪台ではお世話になる台中で「日本
と台湾の懸け橋になる会世話人」をつとめる喜早天海(きそう・たかひろ)氏が久しぶり
に参加し、その感想をつづっているのでご紹介します。
ちなみに、ここに出てくる「有川さん」とは、有川真由美(ありかわ・まゆみ)さんの
ことで、2007年、平野久美子さんや中村信子さんらと屏東県の『日本人作家の屏東滞在に
よる創作活動』に参加し、それ以後、台湾と日本の関わりの取材を続けてズッポリ台湾に
はまり、2010年3月より高雄市に住んで作家・写真家として活動している方です。
喜早氏が紹介している有川さんのホームページは下記。また、「台北ナビ」が台湾歌壇
のことを詳しく紹介しています。
◆アリマユ、日々の旅「台湾歌壇の会と、台北への旅」[2013/8/26] http://arimayu.blogspot.jp/2013/08/blog-post_26.html
◆「台湾歌壇」〜台湾短歌の会〜[台北ナビ:2012/3/22] http://www.taipeinavi.com/special/5039632
台湾歌壇の例会に参加して
【メルマガ「遥かなり台湾」:2013年8月31日】
去る25日に久しぶりに台湾歌壇の月例会に参加しました。以前参加した時は年配者が圧
倒的に多く、日本人はあまりいませんでした。それが今回行ってみたら、なんと若い人も
多く、日本人の姿も意外と多く見られました。会場内には何名かの顔なじみの人もいて何
となく古巣に帰ってきたような感じ。そして、そこで二つの思いもよらないことに出くわ
しました。
その一つは食事をしている時この前のWBC台湾戦のDVDが放映されたことです。
YouTubeに「台湾チームお辞儀の秘密」があるのを見つけて、それを4月28日に僕のメルマ
ガで配信したことがあるんですが、まさかこのyoutubeを作った人が台湾歌壇に参加してい
るとは。あまりにも奇遇で早速名刺交換した次第です。
もう一つは高雄から来たという日本人女性と知り合ったことです。その人は「有川で
す」言って名刺をくれました。その人の名刺を見て驚きました。というのは、肩書きに作
家、写真家と書かれてあったからです。ぼくも一応物書きのまね事をしていますが、本物
の作家にあったのは初めてです。
その有川さんも短歌を作って、毎月1つ、会に送ることを自分に課しているとか。
月例会では、どの会員の作品かわからないように番号を打った短歌中から自分の気に入
った作品を2点選んで各人が発表。最後に司会者が名前を明かし、作品の得票数を知らせた
り講評したりしていく方法で会を進めていくのです。
有川さんは自分のブログで当日のことを下記のように記していました。
≪今回は90ほどの短歌のなかから、2番目の得票をいただいた。うれしい。「これから
も、ガンバレ〜!」と、先輩方に言われているよう。
お恥ずかしいが、作った歌は……
古き友変わらないねと笑ひ合ひ目じりのしわに歳月覚ゆ
いえいえ、あなたのことではありませんから。
これを見ている同級生のあなた。
この夏、久しぶりに会ったあなた。
でも、そんなしわを見て、「あ〜、いい顔になったな」とも思ったりもして。
歌壇の会には80代の先輩方が多い。
私の「歳月」なんて、まだまだ。
目じりのしわなんて、まだまだ浅いのかも。
ちなみに、いちばん得票数が多かったのは・・・
歌会にでる日の足の軽きこと歌は下手でも楽しみあまた
日常の感情を素直に詠んだ歌が、毎回、人気。ほかに、こんな歌が共感を得ていた。
悲しくてみあげた空に朝の月そっと私を見ていてくれた
五年ぶりの帰省に親の姿なそ老犬ぽちの我にすり寄る
八月の熱き青空思ひ出す昭和一桁知るぞ十五日
8月はなぜか悲哀を含んだ歌に惹かれてしまう・・・
そうだ。短歌を書きためよう。
そして、いつか、自分で撮った写真と一緒に本を出そう……。
なんてすごい野望。まだ始めたばかりなのに。
でも、そんな野望って、楽しくしてくれるではないの。≫
皆さん、すごいと思いませんか。台湾には日本語を上手に話すだけでなく、このように
短歌を詠んでいるグループだけでなく、川柳を詠んだり、詩吟まで興ずる人たちの会まで
あるですから、日本人は負けそう。全く脱帽してしまいますよね。台北に来たら、士林夜
市だけでなくこういった会にも(ちなみに短歌の会は第4日曜日)あなたもぜひ参加してみ
ませんか。