台湾歌壇のこと  柚原 正敬(「日本歌壇」同人)

【日本歌壇(第22号):平成24年6月1日発行】

 もう20年近く前のことになる。出版社に勤めてゐたときの平成5年1月、森田忠明(もり
た・ただあき)さんに指南役をお願ひして、社内で「壱岐坂歌会(いきさかかかい)」と
いふ歌会を催し始めた。私にはこれが初めての歌会であり、歌を詠むのも初めてと言つて
いいことだつた。

 社内で催してゐるから休むわけにもいかず、毎月1回の歌会のために歌を詠むのは、苦痛
と言へば苦痛、楽しみと言えば楽しみだつた。自分なりにうまく詠めたと思へる歌を作つ
たときには、それだけで達成感があつた。それが天・地・人のいづれかに選ばれようもの
なら、歌会の後の飲み会は本当に楽しかつた。筑波に吟行に出たことなども、楽しい思ひ
出としてよく憶えてゐる。

 この歌会に参加した成果は、後日、森田さんの手を煩はせてまとめていただいた『國風
(くにぶり)』(平成10年、展転社)といふ櫻風亭歌會との合同歌集に収められてゐる。

 この歌会は6年ほども続いただらうか、私が出版社を辞する直前に解散した。それ以来、
歌から遠ざかつてゐた。ところが、2年前の平成22年の正月、靖國神社で森田さんと久しぶ
りにお会ひして一献傾けてゐるとき、「日本歌壇」の話に及んだ。壱岐坂歌会を思ひ出し
て妙に歌心をくすぐられ、誘はれるまま同人となり、再び歌を詠む機会を与へていただゐ
た。

 同人に加はつて間もなく、日頃から懇意にしていただいてゐる台湾の蔡焜燦氏にそのこ
とを伝へる機会があつた。蔡氏は「台湾歌壇」の代表を務められてゐる。さうすると「あ
んたも歌を詠むのか、日本人だね。森田忠明さんとは会つたことがあるのでよく覚えてゐ
る。いづれ台湾歌壇と交流しよう」といふ電話をいただいた。

 そのことを森田さんにお伝へすると、日本歌壇と命名したのは台湾歌壇を意識してのこ
とだといふ。

 その年の11月に訪台した折、蔡氏にお会ひする機会があつた。すると台湾歌壇に入るや
う勧められ、断る理由も見つからないので同人に加へていただいた。あれよあれよといふ
間に、日本と台湾の2つの歌会に加はるやうになる平成22年だつた。

 そこで、日本歌壇が交流しようとしてゐる台湾歌壇について記してみたい。

 台湾歌壇を創設したのは、『台湾萬葉集』を著した孤蓬万里こと呉建堂氏である。1967
(昭和42)年11月のことだ。未だ台湾には戒厳令が布かれ、台湾といふ名称もタブーとさ
れてゐた時代だつたから、呉氏ら同好の士11人は「台北短歌研究会」といふ名称で始め、
翌年1月「台北歌壇」第1輯を刊行してゐる。

 その呉氏がまづ『台湾万葉集』(全3巻)の上巻『花をこぼして』を出版したのは昭和56
年のことで、63年に中巻『台湾万葉集』、平成5年に下巻『台湾万葉集』を出版。この下巻
に目を留め、朝日新聞の連載「折々の歌」で紹介したのは詩人の大岡信氏だつた。

  万葉の流れこの地に留めむと生命(いのち)のかぎり短歌(うた)詠みゆかむ

  短歌(うた)とふをいのちの限り詠みつがむ異国の文芸(ふみ)と人笑ふとも

 反響は大きく、呉氏は『台湾万葉集』で菊池寛賞を受賞し、また平成8年の宮中歌会にも
招かれてゐる。

 この呉建堂氏の後を継いだのが、剣道仲間で飲み友達だつた蔡焜燦氏だ。蔡氏は、呉氏
が命名したかつたといふ「台湾歌壇」に正名してゐる。

 現在、約100名の同人を擁し、毎月第4日曜日に歌会を開いてゐる。毎回の参加者は50人
を超え、最近は若い台湾人や台湾在住の若い日本人が同人に加はりつつある。この盛況ぶ
りは、年1回、同人が1年間に発表した歌や最近作などを掲載する『台湾歌壇』を発行し、
また事務局長の三宅教子さんが歌集『光を恋ひて』を、同人の蘇楠榮氏も『南島に息吹
く』を出版するなど、同人たちの旺盛な作歌活動が齎してゐるやうに見受けられる。

 総じてその特徴を挙げれば、機知や諧謔に溢れ、人生を前向きに捉へる愉快な歌が多
い。素朴で稚拙かと思はれがちかもしれないが、分け入り過ぎた日本の現代短歌が忘れて
ゐる野太さがあるやうに思はれる。

 それだけに、日本歌壇と一脈も二脈も通じ合ふものがあるやうな気がしてならず、蔡焜
燦代表がお元気なうちに交流の機会は自づから訪れるものと思つてゐる。

                              (「日本歌壇」同人)


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