台湾有事は日本有事を証明した中国軍の軍事演習

 台湾を取り囲むように行われた中国軍による演習と称する台湾威圧行動は、弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下し、この弾道ミサイルには陸軍に配備されている新型の長距離ロケット砲PHL16が含まれ、与那国島のレーダーサイトなどを標的としていたことが判明した。

 毎日新聞は、防衛省防衛研究所の門間理良(もんま・りら)地域研究部長の「台湾有事が日本の有事にもなりうる」とのコメントを掲載した。

 下記にその記事をご紹介するが、改めて「台湾有事は日本有事すなわち、日米同盟の有事でもある」と喝破した「慧眼の士」安倍晋三・元総理を失ったことが悔やまれる。今後、まっとうな理念と世界的なスケールの戦略を立てられる政治家はそうそう現れないだろう。

—————————————————————————————–専門家「台湾有事は日本の有事」 EEZにミサイル、中国の狙い【毎日新聞:2022年8月7日】https://mainichi.jp/articles/20220807/k00/00m/030/228000c

 中国軍による大規模軍事演習で、軍用機や軍艦が相次いで台湾海峡の中間線を越えた。中間線は、中台の事実上の停戦ラインとされ、中間線越えが繰り返されるのは極めて異例。今後、中国軍による中間線越えの動きが常態化することが懸念され、台湾海峡の軍事的緊張がさらに高まる可能性がある。

 中国の習近平指導部は、4〜7日に台湾周辺の6カ所の海空域で実弾射撃訓練を伴う演習を実施。台湾国防部(国防省)によると、7日午前の軍事演習では、多数の中国の軍用機や軍艦、ドローンが台湾海峡周辺で活動した。台湾本島や台湾の軍艦への攻撃を想定した統合演習とみられる。台湾軍は中国軍の動きを監視し、軍艦を派遣するなどして警戒にあたった。4〜6日の演習では、多数の軍機や軍艦が中間線を越えている。

 台湾国防部はこれまで、中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入した際、進入経路などを公表してきた。発表によると、従来、多くの中国軍機が中間線を避けるようなかたちでADIZに進入する傾向がみられていた。しかし、軍事演習開始前の3日、中国軍機延べ22機、その後も4日に延べ22機、5日に延べ30機、6日に延べ14機が、連続して中間線を越えた。こうした中国軍機の挑発行為が相次ぐことで、台湾軍は緊急発進(スクランブル)に追われることになる。中国側には台湾軍を消耗させる狙いもありそうだ。

 台湾メディアによると、中国軍の演習は台湾周辺の6カ所の海空域で、台湾を取り囲むような形で設定。中国が台湾に武力侵攻する際の戦略として挙げられる「台湾封鎖」が、実際にどのように行われるかが垣間見えたとの指摘もある。中国の軍事専門家は「台湾封鎖を行うための軍事力を十分に備えている」と強調した。【台北・岡村崇】

◆「有事」で日本への攻撃想定か

 防衛省防衛研究所の門間理良・地域研究部長の話

 中国は、大規模軍事演習を実施することで、1995〜96年の台湾海峡危機の時よりも軍事力を飛躍的に強化させていることをアピールした形だ。

 演習は、台湾周辺の6カ所の海空域で、台湾本島を取り囲むような形で実施された。北部の3カ所は台北直撃を、南部は台湾軍の北部増援阻止をそれぞれ狙った動きと推測される。また、複数の弾道ミサイルを東部の海域に着弾させたことから、米海軍の介入を妨げる狙いが透ける。

 注目すべきは、弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したことだ。台湾有事の際に日本への攻撃を想定していることがわかる。中国側には、今回のミサイル発射で日本の反応を探ろうとしている可能性もある。政府はこうした軍事行動を断固として許さない姿勢を示すとともに、台湾有事が日本の有事にもなりうることを日本国民に周知させる必要性がある。

 中国の習近平指導部は、ペロシ米下院議長の訪台への対抗措置として、今回の大規模演習に踏み切った。連日、中国の軍用機や軍艦が台湾海峡の中間線を越えている。これまで、中間線を越える動きは少なかったが、中国は今回の軍事演習を機に、台湾海峡の中間線を越えることを常態化させるのではないか。そうなれば、さらに台湾海峡の緊張が高まることは必至だ。台湾海峡を巡り、確実にフェーズが上がった。95〜96年の台湾海峡危機に次ぐ、第4次台湾海峡危機といえるだろう。【聞き手・岡村崇】

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