台湾政策を衆院選の争点にせよ  ロバート・D・エルドリッヂ

【世界日報「View point」:2021年10月4日】

◆4年以内に中国が侵攻か 衛星攻撃能力が優位な期間に

 今年秋に行われる衆議院議員総選挙は、筆者から見れば、日本をはじめインド太平洋地域や世界の行方を決める最も重要な選挙だ。なぜなら、当選される衆院議員の4年間の任期は、中国が台湾を侵攻する時期と重なるからだ。従って、日本の有権者は、台湾を支持し、中国政府に断固として反対する政治家を今回こそ選ばなくてはならない。

 このままでは台湾が失われるだけではなく、日本も危なくなる。台湾の有事は日本の有事なのである。さらに、インド太平洋地域の今後の100年を決め、世界の情勢を大きく左右すると言っても過言ではない。

◆日米台は「運命共同体」

 ここで大胆な提案をするが、その前に、なぜ中国は、今後4年の間に台湾に侵略するかを説明したい。

 あまり知られていないが、中国は、宇宙戦争に非常に注目し、ミサイルやレーザーの研究・開発によって人工衛星の攻撃能力を上げてきた。今からおよそ15年前、SC19の直接上昇方式のミサイルを発射して、自国の人工衛星を爆発させた。以降、少なくとも過去6年間、4回ほど類似の実験を行っている。

 近代戦争では、衛星なしで戦えない。全地球測位システム(GPS)をはじめ、通信などは人工衛星に頼っている。中国が相手の衛星を無能化し、相手の軍隊を無力化することで、戦争が始まってすぐに降伏させることができる。相手は見えない、聞こえない、動けない状態に陥るからだ。

 トランプ政権が誕生するまでアメリカは長年、中国を甘く見てきた。しかも、その宇宙産業を手伝ってきた。さらに、米国をはじめ、日本やヨーロッパで産業スパイなどの活動によってその技術を盗んだ中国は、宇宙産業分野で急速に伸びた。アメリカはようやく人工衛星を守るようなシステムの研究・開発に力を入れてきたが、衛星防衛システムが配備できるのは、早くて2026年中との見通しだ。

 ということは、近代戦争に必要な衛星攻撃能力の面で有利な今の中国にとって、しばらくの間は、いつでも台湾を侵攻できる態勢にある。中国で来年2月に行われる冬季オリンピックや10月の共産党全国代表大会が終わってから26年までの間、中国が台湾に侵攻すると多くの専門家はみている。

 さらに言えば、その前半になるのではないかと筆者は危惧している。つまり、今度の総選挙で当選される衆院議員の任期の間、中国が台湾の攻略作戦を開始する可能性が高いということだ。

 その場合、日本の国会はどのように対応するだろうか。

 現在は、何も準備ができていない。日米の作戦計画はない。日本版の「台湾関係法」や「台湾基本法」「台湾交流法」などもない。もちろん、日本は台湾の国家承認をしていない(アメリカもそうだ)。従って、安全保障の対話もしていないし、軍事演習も行っていない。防災訓練さえしていない。

 これは非常に残念だ。なぜなら、民主主義、自由主義、人権の尊重など、同様な価値観を持っている日米台は「運命共同体」にあり、協力して中国に対抗しなければ、全て失われてしまう。

 具体的に、台湾が取られてしまったら、日本も危なくなる。中国が第一列島線を突破し、日本は孤立させられる。さらに中国は、南に向かって、フィリピン、アジア太平洋諸島、東南アジアを支配下に置くことになる。

 また、台湾を守れなかったアメリカの威信は大きなダメージを受け、アジアから追い出されてしまう。そして台湾を守ろうとしなかった日本に対して不満を持ち、日米の摩擦が生じ、日米同盟の解消になりかねない。

 簡単に想像できるこれらの最悪のシナリオを避けるために、日本が一層、インド太平洋地域の安全保障に貢献する必要がある。それができるようになるためには、日本にとって、日米同盟にとって、そして世界にとって、台湾の重要性をしっかり理解する国会議員を選ばなければならない。

◆全候補にアンケートを

 そこで、筆者は、総選挙に出馬する、全ての候補者に対してアンケートを実施すべきだと思う。「台湾を支持していますか、それとも、していませんか」と尋ねる。台湾を支持しない政治家、曖昧な返事をする政治家を、絶対に国会に送り込むべきではない。なぜなら、台湾を守ることは、日本を守ることと同じだからだ。台湾を支持しない候補は、日本を守る意志がないのと同じである。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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