去る5月18日、台北駐日経済文化代表処の代表に津田塾大学名誉教授で台湾・
清宜大学教授の許世楷博士(元台湾独立建国聯盟主席)が就任することが発表さ
れました。この許世楷氏こそ、宗像隆幸氏が初めて会った台湾人であり、来日
当初、宗像隆幸氏に当時の台湾の現状を訴え、『台湾青年』の編集を手伝ってく
れないかと声を掛けた人でした。当時、許氏25歳、宗像氏22歳。
また、許世楷氏の駐日代表を発表されたのが、宗像氏と長い交流を持つ陳唐山
外交部長(外務大臣)でした。本誌でも陳唐山氏のことは何度かお伝えしまし
たが、先に宗像氏が「メールマガジン『台湾の声』」にその人となりを紹介され
ましたので、ここに再録してご紹介します。
尚、アジア安保フォーラム幹事を務める宗像隆幸氏は、5月30日付で日本李登
輝友の会の理事に就任されています。 (編集部)
素晴らしい外交部長 陳唐山博士の人となり
3月20日に行われた台湾の総統選挙で陳水扁総統が再選されたのは、統一派に
対する独立派の勝利であった。前回の総統選挙で3位だった連戦と2位だった宋
楚瑜が総統・副総統候補として手を組んだとき、ほとんどの人が彼らの勝利を疑
わなかった。前回の総統選挙で当選した陳水扁の得票率は39%で、連・宋の得票
率を合わせると、60%もあったからである。
昨年の9月28日に陳総統が「2006年に国民投票で新憲法を採択する」という明
確な独立路線を打ち出して以来、陳総統の人気はぐんぐん上昇した。ところが12
月9日、中国の温家宝首相と会ったブッシュ米大統領は、「現状を変えようとす
る台湾のリーダーによる発言や行動に反対する」と語り、陳総統に冷水を浴びせ
かけた。さらに12月29日、日本外務省はブッシュ発言に悪乗りして、「陳総統の
住民投票や新憲法制定を行うという発言が、中台関係をいたずらに緊張させる結
果を招いていることを憂慮する」と、台湾総統府に申し入れた。その結果、連・
宋は「アメリカも日本も陳水扁の政策に反対している」とキャンペーンを繰り広
げることになり、陳総統は大変な苦戦を強いられたことになった。それでも信念
を貫いた陳総統が僅差ながら勝利を得たが、このことはいかにアメリカと日本が
台湾の実情に無知であるかを示している。
このようなとき、台湾にはまことにすばらしい外交部長(外相)が登場した。
4月9日に新外交部長に就任した陳唐山博士である。米連邦政府商務省に勤務し
てワシントンに住んでいた陳唐山博士は、米国の有力政治家たちと親交を結び、
台湾のために大きな業績を残した。1979年にカーター米政権が中国と国交を結ん
で台湾の蒋政権と断交したとき、台湾との関係が疎遠になることを心配した米議
員たちは台湾関係法を制定したが、陳唐山博士はその草案づくりに協力した。だ
からこそ、台湾の民主化と人権の向上を促進することなど、台湾関係法には台湾
に対する深い理解と思いやりが込められているのである。また1986年、戒厳令に
よる政党結成禁止を無視して民主進歩党が結成されたとき、その4カ月前に、ケ
ネディー、ペル、ソラーズらの米有力議員が「台湾民主化委員会」を結成して、
戒厳令の解除や政党結成の自由化などの要求を蒋経国に突きつけ、民進党を弾圧
せぬよう圧力をかけたのも陳唐山博士の努力に負うところが大きい。
陳唐山博士が『台湾青年』停刊記念号(2002年6月、第500号)に寄せた文章を
紹介しよう。これを読んで頂ければ、陳唐山博士の人となりがよくわかると思
う。*************************************************************************
『台湾青年』の一冊一冊は美しいしい史書・詩篇と化すであろう
陳唐山/立法委員・前台南県長・地球物理学博士
2002年7月29日
一九六四年、米オクラホマ州の小さな自分の部屋で、濃厚な郷愁に包まれな
がら、初めて『台湾青年』を読んだ時、私は強烈に震撼させられた。もともと台
湾統治当局に対して疑念を抱いていたが、わずかに残っていた当局への希望も木
端微塵に砕かれたのである。そして、知識人としての台湾に対する責任感の覚
醒が、唐山を毅然として台湾独立運動に投入させた。以来二十九年間、台湾統治
当局のブラックリストに登録される身となったが、それを悔いたことは一度も
ない。当時、アメリカ大陸に留学した多数の台湾青年が、私と同じように『台湾
青年』に啓発されて、次々と台湾独立運動に参入し、波瀾万丈の台湾建国運動を
絶え間なく推進する事になったのだ。
『台湾青年』は、その段階的な任務を遂行して停刊することになったが、これ
ほど台湾独立運動に強力な影響力を及ぼした刊行物は他にない。『台湾青年』は
、微力な草の根の力を結集して、強大な権威主義体制に対抗させる事に成功した
希有な実例と言えよう。
海外にいても、国民党特務が台湾人の間に滲透して脅迫し、分裂工作や買収工
作を行った国民党独裁時代から、『台湾青年』は四十二年間も台湾人意識を宣揚
結集させる中核的な役割を果たしてきた。こうして海外から、精神的物的支援が
絶え間なく台湾に注ぎ込まれた結果、台湾の万年国会は解散に追い込まれて国会
の総選挙が行われ、さらには国民による総統直接選挙も実現し、台湾人はやっと
台湾の主人公になる事が出来た。
停刊となった後も『台湾青年』は、決して歴史の片隅に忘れ去られる事はなく
、台湾の独立建国が完成した暁には、その一冊一冊が美しい史書・詩篇と化すで
あろう。
『台湾青年』によって、台湾民主化の炎が燎原に点じられて以来、台湾独立の
思想は暗闇の一角から燃え広がり、今や台湾の主流的価値観となった。このよう
な刊行物を四十二年間、五百号も続けて刊行する事は、超人的な意志力がなけれ
ば出来ない事である。
全台湾人と共に唐山は、『台湾青年』の刊行に尽力してきた先輩達に、最大の
敬意を表したいと思う。台湾独立建国の完全な成功に、天佑のあらむ事を!!
[中文より謝佳玲訳]
【平成16年5月12日付「メールマガジン「台湾の声」より」】
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