台湾の公民投票は中国国民党発議など4案すべてが否決

 12月18日、台湾で行われた公民投票では、4案とも反対票が賛成票を上回って否決され、不成立となりました。

 中国国民党は4案のうち第18案と第19案を提案し、4案すべての成立を目指し、この公民投票を蔡英文政権に対する不信任決議と位置づけていました。しかし、逆に台湾の人々から不信任決議を突きつけられた形になりました。

 中国国民党は10月23日、民進党と選挙協力関係にあった「台湾基進」所属の陳柏維・立法委員(台中市第2選挙区)に対するリコール活動でリコールを成立させたことから、次のターゲットを民進党に近いフレディ・リムこと林昶佐・立法委員(台北市第5選挙区)をターゲットとし、1月9日にその投票が行われます。しかし、これで前途に暗雲が立ち込めたようです。

 一方、民進党は4項目の成立阻止をめざし、「国家の重要政策が悪質な政治闘争の犠牲にされてはならない」「台湾が混乱することを防ごう」と反対投票を呼び掛けていました。

 ちなみに、中央選挙委員会によれば、全有権者数は1,982万5,468人。今回の成立要件は、有効賛成票が反対票を上回り、有効賛成票が有権者数の4分の1以上(495万6367票以上)でしたが、反対票が賛成票を100万票以上も上回る結果となりました。

 下記に、台湾国際放送の記事から賛成と反対の得票数を抜き書きします。

・第17案:建設が凍結された「第四原子力発電所の建設再開と稼働」に賛成するか。 【否決】 賛成票:380万4,755票  反対票:426万2,451票。 *黄士修氏(政治評論家)発議

・第18案:政府が、赤身を増やす飼料添加物「ラクトパミン」が使用された豚とその肉、内臓、及び関連製品の輸入 を全面的に禁止すべきことに賛成するか。 【否決】 賛成票:393万6554票  反対票:413万1203票。 *林為洲・立法委員(中国国民党)発議

・第19案:国民投票案が成立した後の一ヶ月から六ヶ月の間に全国レベルの選挙があった場合、公民投票はその選挙 と同じ日に行うべきことに賛成するか。 【否決】 賛成票:395万1882票  反対票:412万38票。 *江啓臣・立法委員(中国国民党前主席)発議

・第20案:台湾中油(中油、CPC)の液化天然ガス(LNG)受け入れ基地(略称:三接)は北部・桃園大潭藻礁海岸と その海域から撤去すべきことに賛成するか。 【否決】 賛成票:390万1171票  反対票:416万3464票。 *潘忠政氏(元小学校教師)発議

—————————————————————————————–台湾の国民投票、全て不成立 蔡総統「民主主義は最も強力な後ろ盾」【中央通信社:2021年12月18日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202112180008

(台北中央社)台湾で18日に行われた国民投票で、4件全てが不成立となった。蔡英文(さいえいぶん)総統は同日夜、総統府で記者会見を行い「台湾が課題に直面する際、民主主義はわれわれの最も強力な後ろ盾になると信じている」と語った。

 国民投票にかけられたのは、成長促進剤「ラクトパミン」使用の豚肉などの輸入全面禁止▽第4原子力発電所(新北市貢寮区)の稼働▽液化天然ガス(LNG)受け入れ基地の建設地の移転▽全国を対象とした選挙と国民投票(住民投票)の同日実施─についてそれぞれの賛否を問う4件。

 最大野党・国民党が4件全ての賛成を求める一方で、蔡氏が率いる与党・民進党は反対を呼び掛けていた。いずれも成立条件となる賛成票が有権者数の4分の1に達しなかったほか、反対票を下回り、不成立となった。

 蔡氏は、今回の投票結果が示した国民のメッセージとして、国際社会への積極的な参加▽エネルギー転換と電力の安定供給および経済成長の維持▽経済と環境保護両立の重視▽公共政策に関する情報の透明化と理性的な議論─を求めているとした。

 また、われわれの前には多くの課題に向き合わなければならないと強調。引き続き努力して台湾人の期待に応えたいと意気込んだ。

 一方、朱立倫(しゅりつりん)国民党主席(党首)は同日、党全体に向け謝罪。責任を負うと述べた。

(劉冠廷、葉素萍/編集:齊藤啓介)

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