する独特の土壌がある。選挙翌日の「自由時報」に、歴史学者で世新大学や国立台北教育
大学でも教鞭を執る李筱峰教授がその点を衝いた論考を発表している。
日本ではなかなか分かりにくい台湾独特の土壌を理解するための参考として翻訳掲載す
る。 (編集部)
台湾に公平な選挙はない−国民党に有利な社会的条件 [李 筱峰]
【12月10日 自由時報】
選挙が終わり、私はマクロ的見地から台湾選挙の公平性について意見を述べたい。
選挙環境の公平性を見ると、台湾は一般の正常な民主国家と極めて異なる。中国国民党
が台湾に入ってから、台湾に公平な選挙が現れたことはなく、いわゆる「政党交代」後の
現在に至るも、この状況に変化はない。長期にわたって、台湾の全ての選挙は、国民党に
対して有利な選挙となっている。理由は簡単で、国民党は以下の通り、とりわけ恵まれて
いる条件を持っているからだ。
1、国民党は国庫から、国家が生んだ莫大な党資産と経費を盗み取っている。
他の政党に、これに匹敵する条件はない。国民党によって指名された候補者は、依然
として党の経費補助を取得しているが、本土政党にこのような優遇措置はない。国民党
は現在に至るも、依然としてこうした類の政治屋が集まって離れず、主にこの莫大な党
資産と経費に依存している。
2、国民党は広大なメディアという資源を保有している。
国民党は台湾に入るやいなや、マスコミを掌握した。過去の長期にわたる戒厳令と所
謂「反乱鎮定動員」体制の下では、新聞・ラジオ・テレビに至るまで、全て一党独裁の
国民党の手中に掌握され、マスコミはこの外来統治集団に対して、「喜ばしいことは報
じ、憂うべきことは報じない」状況だった。それに反して、当時の党外の政治活動家に
対しては、一方的に極めて歪曲・醜悪化して報道した。台湾民主化後、本土の声が現れ
る機会が過去と比べて改善されて来ているとは言いながらも、今日に至るも、依然とし
てメディアの生態は旧勢力が主流である。マスコミは2000年の所謂「政党交代」後も、
本土政権に対し、逆の「「憂うべきことは報じ、喜ばしいことは報じない」姿勢で臨み
、極めて醜悪化して報道している。その一方で、ブルー陣営(過去の蒋政権の残党勢力)
に対しては、「喜ばしいことは報じ、憂うべきことは少しだけしか報じない」姿勢で臨
み、このことが社会の善悪の価値観を混乱させた。例えば、この過去、不正事件が最も
多く、最も古く、最も長い政治集団は、最近意外なことに、ファースト・ファミリー(陳
水扁総統家庭)の案件を口実として、メディアを扇動し、「反腐敗」の「清流」となった。
3、長期にわたる「国民党教育」は国民党に有利な方向に働く。
如何なる一党独裁政権においても、教育は政権維持の為の道具に成り果てるが、国民
党もその例外ではない。早くも1950年代、「自由中国」誌は、国民党が実施している「
国民党教育」に対して批判を行っていた。(参考資料: 殷海光教授執筆の社説、1958年1
月16日発表の「我々の教育」及び1958年5月16日発表の「学術教育は政治から独立すべき
である」)「国民党教育」の他にも、国民党が台湾で実施した教育は、全て「脱台湾化」
の教育だった。台湾主体意識がなく、ただ中国に対してのみアイデンティティを求める
ものだ。これも、何故、台湾アイデンティティを望んでいない国民党が現在に至るも、
これほど多くの台湾人の支持を集めることが出来るかを説明できる原因の1つである。
4、司法と情報・治安部門は、ブルー陣営支持者が主体だ。
これは、選挙贈賄・買収など不正選挙の紛糾を巡っても、絶対的に国民党に有利な方
向に働く。
5、国民党には、中国共産党による背後からの支持がある。
過去、「反共抗ロシア、消滅共産匪賊」を使命としていた国民党は、2000年以降、一
転して過去の敵と結ぶ様になり、甚だしくは敵を使って台湾人民を威嚇するまでになっ
ている。中国共産党も背後で結託し、陰に陽に国民党に支援を与えている。本土政党は
国民党との競争だけでなく、「1つの中国」の同行者の攻勢にも対応しなければならず、
当然の如く不利な状況に置かれている。
国民党が持っている上記の非常に恵まれている優位な状況下で、台湾人民は長期にわた
って、マスコミと教育の制約を受け、洗脳された状況の中でも、本土政党は今回の選挙で
勝利とは言えなくても、失敗したとは言い切れない(台北市は41%の支持を得ており、前回
と比べて5%増加した)。
今後、いかにして上記の5つの不合理な条件を克服し、特にいかにしてブルー陣営に偏向
したメディアと教育の脱却を図り、正常化してゆくかは、単に台湾選挙の公平化の要件と
なるだけでなく、台湾本土政権を確保し、台湾の国家正常化を進めていく上で、当面の急
務となっている。
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