台湾が国連体系からの不当な排除はアルバニア決議解釈の誤りと指摘

 第78回国連総会が9月5日からアメリカのニューヨークで開かれる。9月19日から26日にかけて一般討論演説が行われる予定だという。

 台湾は国連総会の開催にさきがけ、呉[金リ]燮・外交部長は8月26日、イタリアのメディアに寄稿し国際社会に対して「台湾を国連体系に入れるよう」呼びかけたという。

 また、台湾の外交部は8月29日にニュースリリースを発表し、国連加盟を目指す台湾の立場を下記の4つの観点から伝えたと「Taiwan Today」誌は伝えている。

(1) 国連第2758号決議の誤った解釈により、台湾に住む2,300万人が国連体系から不当に排除されている状況につ   いて改善すべきである。(2) 国連は、わが国の住民やメディアが国連を訪問、会議に出席、取材する権利を不当にはく奪している。即刻   これを改めるべきである。(3) 国連は台湾海峡及び近隣地域の平和と安定、安全の保護・維持に積極的に努めるべきである。

(4) 国連は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)関連の会議、メカニズム、活動に台湾が有意義な参加を果たす ことを受け入れ、且つ貢献できるようにすべきである。

 国連第2758号決議とは、国連総会の1971年10月25日に採択された「アルバニア決議」のことで、「中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であり、中華人民共和国が国連安全保障理事会の5つの常任理事国の1つであることを承認する」と採決した。つまり、常任理事国は合法的な代表である中華人民共和国であることを承認した決議だった。

 しかし、この決議には「蒋介石の代表を、彼らが国連とすべての関連組織において不法に占領する場所からただちに追放することを決定する」とあったことから、決議に抗議し中華民国は国際連合を脱退した。

 最近、台湾は「決議は誰が『中国』という加盟国を代表するかを確定したに過ぎない」「台湾(中華民国)が国連から不当に排除されているのは、2758号決議の誤った解釈による」という観点を掲げ、「台湾を国連体系に入れるよう」呼びかけている。

 呉[金リ]燮・外交部長はイタリアのメディアに続き、日本の産経新聞にも寄稿し、本日付で掲載された。その全文を下記に紹介したい。

—————————————————————————————–今こそ台湾の国連参加を呉[金リ]燮・台湾外交部長【産経新聞:2023年9月2日】https://www.sankei.com/article/20230901-WFP2J2AYIFPATLWNJBS2KP7ASQ/

 冷戦が終結して以来、国連憲章が掲げる国際紛争を平和的に解決する原則によって、ルールに基づく国際秩序と世界平和が維持されてきた。だが、ロシアによるウクライナ侵略はその原則に反し、人権を著しく侵害している。

 この戦争がもたらした人道危機と経済的な衝撃は、グローバル時代において危機が国内にとどまらないことを人々に気づかせた。地球規模の安全保障上の脅威は、自国周辺以外の地域でも発生を防がなければならない。とりわけ、民主主義の台湾は中国からの巨大な挑戦に直面している。

 台湾を一度も統治したことがない中華人民共和国は、台湾を力で奪い取ることを宣言し、武力行使の放棄を拒否している。台湾は常に冷静沈着に台湾海峡の平和と安定の現状を維持してきたが、中国の経済力と軍事力が強くなるにつれ、北京は台湾に軍事力を見せつけて脅迫するようになり、われわれの民主的な生活様式を脅かしている。

 台湾海峡の平和と安定を共に維持していくことは、各国の利益と一致する。この地域でどんな衝突が発生しても、世界経済に災難をもたらすことになる。近年、国際社会では数多くの共同声明で、台湾海峡の平和と安定が地球規模の安全保障に極めて重要であると強調されている。戦争を回避するためには、包容性や対話が必要であり、そして最も重要なのは団結だ。

 国連は今も対話の最良のプラットフォームであり、たびたび団結や包容性をもって問題解決に取り組むよう呼びかけている。台湾はその努力に参画する意欲も能力もある。しかし、中国が国連総会第2758号決議(アルバニア決議)の解釈をミスリードし、台湾は国連から排除されたままだ。同決議では、台湾が中華人民共和国の一部だとは言及しておらず、中華人民共和国に国連と関連機関における台湾の人々の代表権を与えたものでもない。

 逆に、同決議は誰が「中国」という加盟国を代表するかを確定したに過ぎない。これは1971年に同決議が可決された際、国際社会と中国がいずれも認めた事実である。中国の誤った解釈と国連憲章が堅持する基本的原則は矛盾するもので、必ず正されなければならない。

 われわれは国連に対し、国連が掲げる「誰も取り残さない」という原則を堅持し、国連システムへの台湾の参加を認め、地球規模の協力が必要な議論から台湾を排除しないよう呼びかける。もし国連が、台湾の市民や記者の関連会合への出席や取材を許可し、「持続可能な開発目標」(SDGs)に関するメカニズムへの台湾の意義ある参加を認めるなら、それは良い始まりとなるだろう。

 国連システムへの台湾の意義ある参加を認めることは、世界が共に対処すべき地球規模の課題の解決に寄与するとともに、世界が脅威に遭遇した際、国連が一致団結して世界平和を守る決意を示す象徴となる。

 団結は力なり。今こそ台湾を国連に組み入れるときだ。

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