友愛グループが発足20年目を迎えますます意気軒昂

台湾に「正しく美しい日本語を存続させたい」という責務は果たされつつある

 李登輝氏が台湾総統として民主化路線の定着をはかっていた1992年10月、「友愛グループ」
が「友愛日本語クラブ」として発足した。今年で20年目を迎えた。今でも毎月、第3土曜日
の午後、定例の勉強会を開いている。

 20年目を迎えた様子を、西日本新聞の佐伯支局長が代表を務める張文芳(ちょう・ぶん
ぽう)さんと、運営委員の廖継思(りょう・けいし)さんにインタビューして伝えている
ので、下記にご紹介したい。

 なぜか記事には出ていないが、友愛グループでは機関誌『友愛 YOU&I』をほぼ毎
年1冊のペースで刊行し、これまで11号を出している。

 1999年12月に発刊したその復刊第1号の巻頭言において、代表を務められていた陳絢暉氏
は「否応なしに日本国籍を剥奪されて、体よく『中華民国国民』というシャッポを被された。
いうなれば『棄民』と相成ったのだ」と、戦後台湾における日本語世代の切ないありよう
を書き留めている。

 しかし、「日本語でコミュニケーションをし、思惟する空間がおいおいと狭まってきた
今日このごろ、なんとかして正しく美しい日本語をわがフォルモサに存続させたいとの思
い切なるものがある」と友愛グループの存在意義を説く。そして、友愛グループの重大な
責務は「後継世代の育成」にあると締めくくっている。

 ちなみに、台湾で第2外国語を選択できる高校は197校あり、3万人ほどが学んでいる。そ
の中で、なんと日本語は断トツの1位で、77.6%の2万2791人が選択している。2位のフラン
ス語(13.5%)や3位のスペイン語(4.2%)を大きく引き離している。また、交流協会が
実施している日本語能力試験の受験者数は、この制度が始められた1991年には922人と千人
に満たなかったが、2000年には2万人を超え、2009年には6万5482人と、この20年で70倍に
も増えている。

 記事には「次世代にどう活動を継承していくのかが大きな課題」とあるが、このような
観点からみれば、友愛グループの「重大な責務」は確実に果たされつつあると言ってよい
のではないだろうか。

 これまでの友愛グループの軌跡を書き留める機関誌『友愛 YOU&I』は、日本で唯
一、本会だけが取り扱っている。次にご紹介したい。また、廖継思氏の『いつも一年生』
も併せてご紹介したい。


戦前世代 友愛グループ20年 台湾で「正しい日本語を」
「美しい文化を、アニメ世代にも」
【西日本新聞:2011年6月6日】
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/245806

 台湾の日本統治時代(1895―1945年)に日本語で初中等教育を受けた世代の台湾人が日
本語で語り合う交流団体「友愛グループ」が、20年目を迎えた。今年3月には、福岡市の女
声合唱団の呼び掛けに応え、台北市で合同合唱会を開くなど活動は盛んだ。一方で、会員
の平均年齢76歳と高齢化が進み、次世代にどう活動を継承していくのかが大きな課題とな
っている。                           (台北・佐伯浩之)

 「『骨折り損のくたびれもうけ』とはどのような意味ですか」。毎月第3土曜日の午後、
台北市の飲食店で開かれる定例勉強会。会員150人(日本人36人を含む)のうち、毎回約80
人が出席、日本語スピーチやことわざなどを学ぶ。

 代表を務める翻訳業張文芳さん(81)が日本語テキスト作成や会費徴収などの事務作業
を一手に引き受ける。「毎月の準備が大変だが、参加者は勉強する意欲があふれている」
と満足そうだ。

                     ◇   ◇

 日本統治が終わった終戦後、台湾では、国共内戦に敗れて逃れてきた蒋介石率いる国民
党が独裁体制を築く。北京語を“国語”として強制し、日本文化を禁じた。

 その中、ある事件が起こる。作家川端康成の妻が訪れた際、通訳を担当した台湾人が日
本語訳を間違え、同行した小説家北条誠の怒りを買ったのだ。「日本語を正しく話そう」
との北条の言葉を聞いた台湾人7人が非合法で「友愛日本語クラブ」を発足したのが友愛ク
ラブの前身だ。

 「『このままでは日本語が廃れる』と考えた末、(友愛日本語クラブの)設立を決断し
たと思う」と語るのはグループ運営委員の廖継思(りょうけいし)さん(87)。日本の大
学を卒業し、日本企業に勤めた経歴を持つ。台湾に戻り、北京語を覚えるのに苦労したと
いう。「日本人として教育を受け、日本の書物で勉強した者が、日本語で物を考えるのは
当たり前でしょう」と廖さんは語る。

 「会員には、子どもの頃、北京語教育を受けた人はほとんどいないんです」と張さん。

 “外来政権”に支配され続けた歴史に翻弄(ほんろう)された戦前生まれの台湾人たち
にとって、自分たちの心情や考え方を率直に表現できる手段が日本語だったのだ。

                    ◇   ◇

 例会には、活動を聞いた日本人留学生たちが参加することもある。グループ会員の執筆
業、吉岡生信さん(40)は「日本人でもあまり知らない故事成語を学ぶこともあり、レベ
ルが高い」と舌を巻く。

 発足時の友愛日本語クラブ会則には「次世代に美しい正しい日本語を伝える」とある。
だが、例会に若者の姿は少ない。日本のアニメを楽しみ、日本の流行歌を口ずさむ「哈日
(ハーリー)族」と呼ばれる若者たちがいて、町中に日本文化があふれているにもかかわ
らずだ。

 「うわべだけの日本語と文化を知るだけでは、本当の日本文化は分からない」。張さん
は、そう語る一方で、台湾と日本の結び付きがいっそう深まることを願っている。

 「もっと日本語を学ぶ人が増えるかもしれないし、グループの活動を幅広く台湾人に理
解してもらうよう努力したい」

写真:日本語への思いなどを語る張文芳さん(左)と廖継思さん=台湾・台北市



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