た。そうしたら、宮崎正弘氏より友愛記事に間違いがあるとご指摘いただいた。それは、
西日本新聞が伝えた友愛グループが発足したきっかけとなった事件の説明だ。記事では下
記のように伝えている。
≪日本統治が終わった終戦後、台湾では、国共内戦に敗れて逃れてきた蒋介石率いる国民
党が独裁体制を築く。北京語を“国語”として強制し、日本文化を禁じた。
その中、ある事件が起こる。作家川端康成の妻が訪れた際、通訳を担当した台湾人が日
本語訳を間違え、同行した小説家北条誠の怒りを買ったのだ。「日本語を正しく話そう」
との北条の言葉を聞いた台湾人7人が非合法で「友愛日本語クラブ」を発足したのが友愛ク
ラブの前身だ。≫
この記事だと、川端康成の妻の日本語の通訳が間違っていて、同行した北条の怒りを買
ったとなっている。
しかし、事実はそうではない。これは宮崎正弘氏が「諸君!」に発表した一文に事の成
り行きをつづられていて、それを友愛グループが発行している「友愛グループとは?」で
転載して紹介している。
≪当時の台湾はと言えば蒋介石政権のもと、日本の映画は御法度、大学で日本語コースは
二、三校しかなく、台湾の歴史教育は「大中華思想」で反日的だった。
この頃のことである。川端康成遺品展の打ち合わせで台北を訪問中の川端未亡人と北条
誠氏の通訳をした「日本語専門家」の秘書が「あなた様」と訳す筈を北条氏に向かって「貴
様は」と言ったのだ。怒髪天を衝いた北条氏が、このときの無念さを陳兄弟に語った。
これが「美しく正しい日本語を台湾に残そう」という文化運動への伏線となった。≫
つまり、川端の妻ではなく、同行した北条氏に「貴様は」と秘書が通訳してしまったの
である。この日本語を通訳した秘書は「貴様」が最高の敬語と誤認していたからという、
笑うに笑えないエピソードなのだ。
後日、北条氏が日本語の堪能な「ボランティア通訳」で知られていた、友愛グループを
はじめる陳絢暉氏と兄の陳燦輝氏にこのことを話したことが、そもそもの発端だったので
ある。
西日本新聞の記事は、スペースの都合もあったのだろうが、端折って書いたことで正確
性に欠けてしまった。せっかくのいい記事なのに、このような間違った歴史事実が一人歩