日本訪問にひき続き、6月2日、トランプ大統領は英国に国賓として招かれ、エリザベス女王と会談し、メイ首相と共同会見に応じた。
日本での公式行事、とくに首脳会談、皇居における晩餐会に加えて安倍首相とのゴルフのことが大きく報じられたが、訪日最終日に、横須賀基地で護衛艦「かが」へ乗船したことは大きく報じられなかった。
その日、5月27日は「海軍記念日」である。米国が、わが海上自衛隊に「海軍」としてのお墨付きを与えたと比喩すべきイベントである。「かが」は軽量級とはいえ、事実上の空母である。
さて、日本では大きく報じられなかったが、重要なニュースがまだ幾つかある。
トランプ大統領は6月1日、士官学校の卒業式に赴いて、軍人幹部候補生らを激励した。その卒業生のなかに台湾からの交換軍人がいた。会場には中華民国の国旗が飾られていたのである。台湾重視策がここでもあらわれていると見るべきではないか。
豪では奇跡の再選を果たしたモリソン政権を「祝福」するかのように、中国海軍艦隊が、予告なくシドニーを親善訪問した。
これは豪に脅威を与える軍事的な示威行動なのか、シドニーは50万人のチャイナタウンをかかえており、鉄鉱石などでは中国が最大のバイヤー、しかし、モリソン政権はトランプの要請を受けてファーウェイの排斥に乗り出している。やはり豪もファイブアイズのメンバーだけあって、米豪の間には眼に見えない連携がある。
6月4日、モリソン豪首相は突然、ソロモン諸島を訪問した。ソロモン諸島は台湾と外交関係を維持する国であり、地政学的にも航路の要衝にある。
モリソン首相はソロモン諸島に向こう5年間で188億円を支援すると打ち上げ、あからさまな中国との対決姿勢をしめした。ファーウェイの進出が激しいソロモン諸島は、いまや豪ではなく、中国との貿易がトップを占めるようになっている。
モリソン政権は、ファーウェイ問題でトランプと同一軌道の外交を進めており、たとえばパプアニューギニアへの海底ケーブル・プロジェクトの入札でも中国を排除した。
南太平洋地域で台湾と外交関係のある国々とはナウル、ツバル、キリバス、マーシャル群島、パラオだ。
もしソロモン諸島が北京に転べば、太平洋地域でもドミノが起こる危険性がある。2018年3月にも蔡英文総統が外交関係の維持をはかるべくナウル、パラオを訪問したことは記憶に新しい。
▲南シナ海から南太平洋にまで進出する中国
昨夏来、台湾と断交した国にはパナマ、ドミニカ、エルサルバドルがあるが、2007年に札束攻めでコスタリカが中国に転んでからは中米でさえ、依然台湾と外交関係を保つのはニカラグア、ベリーズ、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラスとなった。
トランプ政権は、台湾重視政策を増強させており、台湾と断交したパナマ、エルサルバドル、ドミニカから大使を召還する措置をとった。
こうした状況下、シンガポールで恒例「シャングリラ対話」が行われ、米国からはシャナハン国防長官代行、中国からは魏鳳和・国防大臣が出席した。この席で米中両国は角突き合わせる火花を散らした。
米国防長官代行のシャナハンは「南シナ海から南太平洋にかけての軍事的プレセンスは近隣諸国に脅威となっている。すみやかに引き揚げ平和を回復すべきだ」
対して魏鳳和は「われわれは世界一の軍事ヘゲモニーで米国の立場にとって替わる意思もないが、そちらが望むのなら最後までつきあう。台湾が独立を言うのなら軍事的行動を辞さない。また天安門事件は正当な処置であり、ファーウェイは軍事組織とは無縁である」などと言いたい放題だった。