に父が行っていたということで取材を受け、平成21(2009)年4月5日放映のNHKの「J
APANデビュー」に出演している。
放映後、この番組が父たちを「人間動物園」として見せ物にしたと報じたことを知り、6
月下旬、牡丹郷郷長や屏東県議会議員を歴任した、同じ高士村出身の華阿財氏とともにN
HKに対して抗議文を出した。
この抗議文で「高士村の人々が共有する博覧会の美しい記憶として後世に語り継がれて
きたものを、なぜ突然『人間動物園』という見方に変えてしまったのか。大変理解に苦し
みます」とつづり、また「我々村民一同は、上述の真相を明白にすることを強く求めると
ともに、日本の関連当局が速やかにNHKを招請して再調査し、事実を明らかにし、報道
することを希望します」と記した。あの放送は高許月妹さんばかりでなく、高士村の人々
の名誉も傷つけ侮辱する内容だった。
11月28日に言い渡された控訴審の判決は、「人間動物園」という言葉が「人種差別的な
意味合いを感じさせ」「嫌悪感すら感じる言葉」で、「人間動物園」と「見せ物」とが同
義であるなどということは到底ありえないと指摘し、高許月妹さんの名誉を侵害したとし
て損害賠償を認めた。
それとともに、パイワン族の方々などの請求は棄却したものの、「日本は台湾に対する
加害者であり、台湾には今も日本統治の深い傷が残っているなどと報道したことにより、
日本に対して友好的で好意的な思いを持つ多くの台湾の人たちに不快な思いを抱かせてし
まったことは、誠に残念なこと」と述べ、日本の加害性を否定し、そして台湾の人たちに
与えた不快な思いに言及し、「日本を代表する報道機関の看板番組の一つとしては軽率で
あり、批判されても致し方ない」とまで批判した。
高許月妹さんは判決後、「訴訟はお金のためではなく、パイワン族の尊厳を取り戻すた
めだった」と、改めて訴訟の目的を語っていることを台湾メディアが報じている。
番組放送から4年半を経た。84歳になる高許月妹さんがNHKへの抗議文をつづった心情
にいささかの変化もないことに驚きつつ、パイワン族の方々がいまだに大事にしているパ
イワン族全体の尊厳性や誇りに改めて崇高な思いを感じさせられた。
なお、記事中、高許月妹さんの発言として「最高裁は潔白を取り戻してくれた」とある
が、正しくは東京高裁の誤り。
「JAPANデビュー」問題 勝訴の女性「ほっとした」=台湾
【中央通信社:2013年12月1日】
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201312010003.aspx
写真:「日台歓迎交流の夕べ」で挨拶するパイワン人原告の華阿財氏(平成21年10月6日)
(台北 1日 中央社)日本の台湾統治を検証したNHKのドキュメンタリー番組内容をめぐ
る裁判で、名誉毀損が認められた台湾原住民の女性は「最高裁は潔白を取り戻してくれ
た。ほっとした」と安堵の気持ちを述べた。台湾の複数のメディアが伝えている。
先月28日の東京高等裁判所での判決を受け、屏東県牡丹郷高士村に住む台湾原住民・パ
イワン族の高許月妹さん(84)は、「訴訟はお金のためではなく、パイワン族の尊厳を取
り戻すためだった」と改めて訴訟の目的を語った。関係者の話によると番組内では月妹さ
んの父親が参加した日英博覧会の写真に「人間動物園」の字幕を加えた上で、意味を歪曲
して放送されたという。
訴訟の先頭に立った華阿財さん(=写真左1)は、当時日英博覧会に参加した原住民はパ
イワン族の精鋭で、英国女王も狩りの様子や結婚などの儀式を参観し、翌年には植物学者
が訪問し、月妹さんの父親たちが接待したと“誇り”を語る。今回の高裁判決は、原告37
人全員でなく、1人への名誉毀損を認めただけだが、華さんは「不満だが、受け入れる」と
コメントしている。
この裁判をめぐって原告側は番組内で「人間動物園」や「見せ物」などと表現されたこ
とで辱めを受け傷ついたとして訴えていた。
(編集:齊藤啓介)