今年も12月17日に台湾で天皇誕生日祝賀会を開催

5年前の平成15年(2003年)12月12日、この日は日台関係に関心を抱く人々にとって長
く記憶されてよい日だ。この日、台湾で天皇誕生日祝賀会が開催された。

 本誌では何度もこの意義を強調してきたが、強調しすぎることは決してない。天皇誕生
日祝賀会とも天皇誕生日レセプションとも呼ばれるこのイベントは、日本の在外公館が年
に一度、日本がナショナル・デー(National Day)と定める「天皇誕生日」に、現地要人
を多数招いて開く最大のレセプションだ。

 ナショナル・デー、すなわち「国家の日」とは、その国にとって最も記念すべき日とし
て定めた記念日で、アメリカなら7月4日の「独立記念日」、ドイツなら10月3日の「ドイ
ツ統一の日」、中華人民共和国なら10月1日の「国慶節」であり、日本は12月23日の「天
皇誕生日」を国家の日としている。

 台湾では、日本と台湾が断交して31年後、故内田勝久(うちだ かつひさ)氏が日本交
流協会台北事務所代表(駐台湾大使に相当)だった平成15年(2003年)12月12日に再開し
た。翌16年は12月16日、代表が池田維(いけだ ただし)氏に替わった平成17年は12月16
日、平成18年は12月19日、平成19年は12月12日に開催している。そして齋藤正樹(さいと
う まさき)代表に替わった今年は明日12月17日に開催される。

 台湾で天皇誕生日祝賀会が催されることは画期的な意味を持つ。同時期に、中華人民共
和国(中国)でも天皇誕生日祝賀会が行われているからだ。つまり、政府の予算措置を要
するこの天皇誕生日祝賀会が中国と台湾の両方で行われることは、日本政府が台湾と中国
を別々に認識していることを示し、台湾と国交はないものの、明らかに「統治の実態」と
して認めていることに他ならないからである。

 2003年12月12日の天皇誕生日祝賀会には外交部長(外相)や総統府秘書長なども出席し
たが、台湾を「不可分の領土」と主張する中国は、当然ながら激怒し、日本政府を強く非
難した。その翌14日、台湾で開催したことを「日本側の悪辣な影響」とののしり、「台湾
問題は中国の主権と領土保全に関わるものであり、中国側はいかなる国も台湾当局との間
でいかなる形式による公的関係及びそれに近いものの交流に反対する」と発表し、在中日
本大使館に対して抗議したことを思い出す。だから、2003年12月12日は長く記憶されてよ
い日なのである。

 内田大使が台湾で天皇誕生日祝賀会を開催するようになった経緯については、遺著とな
った『大丈夫か、日台関係』(平成18年5月、産経新聞出版刊)に詳細を記しているので
ご参照いただきたい。

 ちなみに、黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席は毎年、天皇誕生日レセプション会場に「祝
天長節」と立札に記した生花2基を贈り、主催者の交流協会台北事務所側は入口に据えて
招待者をお迎えしている。今年も贈る予定だという。

 昨年は黄志芳・外交部長が外交担当閣僚として初めて祝辞を述べ、また池田代表を「大
使」と呼んだ。外交部長が祝辞を述べるのは、アメリカのナショナル・デーと同じ扱いだ
という。また昨年は、台北ばかりではなく高雄でも開催している。次に、本会が台湾に寄
贈している桜の件でもお世話になっている神戸浩道(かんべ ひろみち)・日本交流協会
高雄事務所長の挨拶をご紹介したい。

 6月に起こった尖閣問題をめぐる台湾の「反日ムード」の高まりは、「新政権の側の、
危機管理の未熟さが主たる原因であった」(池田維・前日本交流協会台北事務所代表)
が、この天皇誕生日祝賀会が日本と台湾の関係を修復するきっかけになることを切に願っ
ている。

                    (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)



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