昨日の「大紀元」紙が、王立強氏が入社した香港の上場企業名などを挙げつつ、これまでの報道より踏み込み、「蔡英文落選工作」など、戦慄が走るような陰謀工作の実態を報じている。
同紙は、在米の中国時事専門家は中国共産党政権70年で最大の情報漏洩だとする見方を伝え、王立強氏が入社した香港の上場企業・中国創新投資は「中国共産党のスパイを育成する香港の中共前線機関で、トップは上級スパイ」であることを明かし、台湾での新しい任務は「2020年の総統選挙の情報操作に協力し、台湾独立への支持を失わせ、蔡英文大統領を落選させる」ことだったと暴露したという。具体的には、以下のような陰謀工作に携わっていたという。
・台湾で「ネット軍」を設立して政治論争の方向や立候補者の支持率を誘導。・レストランやIT企業を買収して、(中共が)気に入らない候補者がいれば、虚偽アカウントを大 量生産して、候補者のフェイスブックアカウントを乗っ取り、反民主的なメッセージをたくさん 作る。・旺旺グループのスポンサーになることでニュースを左右し、中共が支持する候補者が有利になる よう操作。・総統候補の韓国瑜氏らの動きに対してメディアが多く取り上げるように工作。・国民党の草の根政治組織に資金を提供。・寺(廟)への寄付。・総統選挙介入の役割の一部は「台湾のヤクザ」三合会との連携。 (台湾の三合会は、中国共産党政権の意向を受けて動く犯罪組織だと言われる)
台湾の選挙動向を左右する一つに宗教組織の存在が挙げられ、多くが中国国民党支持と言われているが、まさに裏社会での動きであり、その実態はよくわかっていない。三合会や、白狼の異名で知られる「竹連幇」元トップの張安楽氏が設立した親中派政党の中華統一促進党などとの結びつきもあると言われている。廟を拠点とする宗教組織へ多額の寄付をすることで陰謀工作を有利に導くことは十分に考えられる。
—————————————————————————————–豪に中共スパイが亡命 諜報工作を暴露 専門家「70年来の最大の情報漏えい」【大紀元:2019年11月25日】
https://www.epochtimes.jp/p/2019/11/49343.html写真:豪で中共スパイだった王立強氏がその工作と体験について暴露した。在米の中国時事専門家 は中国共産党政権70年で最大の情報漏えいだとみている(王立強氏提供)
中国共産党のスパイだった王立強氏がこのほど、オーストラリアに政治亡命を求め、同国メディアに対して、香港と台湾への政治介入や妨害工作を行ってきたと暴露した。王氏は、同国情報当局に中国共産党の機密情報を提供したという。当局は現在、情報を精査中としている。在米の中国時事専門家は、中国共産党政権70年の歴史の中で最大規模の情報漏えいだと見ている。
◆「普通ではない投資会社」に入社
10月、王氏はオーストラリア安全保障情報機関(ASIO)に自身が中国共産党のスパイであると申し出て、工作情報を提供した。11月23日から、現地紙やメディアの取材に応じている。帰国すれば死刑になる恐れがあるため亡命を希望している。
福建省生まれの王立強氏(27)は安徽財経大学で油絵を学び、卒業後は大学の上層幹部の推薦を得て、香港の上場企業・中国創新投資(China Innovation Investment Limited、CIIL)に入社した。王氏によると同社は「普通の会社」ではなく、多くの中国共産党のスパイを育成する香港の中共前線機関で、トップは上級スパイだという。
2015年、油絵を特技とする王氏は、同社CEOである向心氏に接近する機会を得た。向CEOの妻に絵画を教え、香港の自宅に何度も招かれるほど親密な関係を築いた。「CEOの妻に気に入られたことは、社内の核心チームに選ばれたカギだった」
CIILの公式情報によると、向CEOは、中国趨勢控股有限公司の会長も兼任し、中国科学技術教育基金会創設者兼会長でもある。
王氏によると、向CEOの本名は「向念心」であり、中国軍が掌握する共産党国防科学技術委員会のメンバーで、新型武器開発に注力していたという。向氏の上司は、90年代に国務院副総理を務めた鄒家華氏で、外国の軍事技術を入手し、中国の軍事発展を支援していたと語ったという。
また、向CEOは、1993年から香港で情報工作に従事していると王氏に話した。CILLは中国中央軍事委員会総参謀部に所属しており、同社の目的は「香港金融市場への浸透と軍事情報の収集」という。海外とくに米国の武器を購入することで技術情報を入手した。向CEOは、自身が米国の監視対象だと自覚しているという。
CIILの主要な取引先には、中国軍の受注を受けて武器を研究、開発、製造する北方工業公司(Norinco)がある。
◆香港銅鑼湾書店員の拉致
王氏は、2015年に中国共産党を批判する書籍を出版する銅鑼湾書店の李波氏を本土へ拉致する行為に関わったと述べた。ほかに6人の工作員が派遣され、CILL内部の人がこの拉致で司令塔の役割を果たしたという。王氏は、拉致工作について、向CEOの家で報告をしているという。
この書店から5人全員が拉致され、香港市民に中国共産党の脅威を知らしめる一大事件となった。香港メディアによると、書店員は本土の収容施設で拷問を受けた。李波氏は当時、中国国営テレビ(CCTV)に出演して「家族で本土に帰る」と語ったが、王氏によると、これは李氏の本音でないという。
銅鑼湾書店員拉致の工作は、「中国共産党にとって不都合な書籍を出版したから」が理由という。
王氏によると、この拉致事件が引き起こした香港市民への恐怖は意図的なものだという。「中国共産党は徹底的な抑圧を望んでる」
王立強氏はCILLは、北京中枢からの指示を香港の実行者たちに伝達する役割を担っているとした。王氏はまた、向CEOや習近平氏担当の事務室役員と個人的な関係を維持しているという。
◆香港の大学は中共工作員の「主戦場」
香港の大学生たちがこのほど、民主主義のために堅く決意して暴力的な香港警察に立ち向かう姿は、多くの西側メディアに報じられてきた。実は、香港の教育界は、かつて王氏の「主戦場」であった。
王氏は、香港の多数の大学に、CIILの向CEOが設立した中国本土資金の慈善団体「中国科学技術教育財団」などを通じて、中国共産党の指導要領を伝え広めていた。「学生と意見を交わし、愛国心と党指導者への愛について語り、香港の独立と民主抗議の支持者への反論を行ってきた」
また、民主派に対するネット中傷工作組織にも関わったという。香港独立派を支持する学生や家族に対して、個人情報を公に晒し上げて、多数のアカウントで対象者を誹謗中傷するというものだ。
王氏は、CIILのもうひとつの工作は、香港メディアの制御だと述べた。多数のメディアに投資して中国共産党のプロパガンダを代弁してもらった。そして、内外の異見者の声を抑制するためにメディア企業上級幹部に、親中派の人物やスパイを就任させるという。
「香港での中国共産党最上級の情報工作員の一人は、アジア主要テレビネットワークの上級幹部だ」と王氏は述べた。
◆寺院、地方行政、メディア 台湾であらゆる組織に浸透
王氏によると、中国共産党は台湾現政権を「敵」とみなし、圧力を加えている。「目標は蔡英文総統を落選させ、親中の人を総統に据えること」だという。
中国共産党情報機関は、台湾で「ネット軍」を設立し、台湾の政治論争の方向や立候補者の支持率を誘導したりしている。
「台湾にはあらゆる機会で浸透する。たとえばレストランやIT企業を買収して、(中共が)気に入らない候補者がいれば、虚偽アカウントを大量生産して、候補者のフェイスブックアカウントを乗っ取り、反民主的なメッセージをたくさん作る」
王氏は、CIILは多くの台湾メディア企業に投資し、台湾のテレビ局と秘密の連盟を設立し、ニュースの操作と審査を許可させたという。さらに、食品大手であり、メディア大株主である旺旺グループが重要な取引先だとした。「スポンサーになることでニュースを左右し、中共が支持する候補者が有利になるよう操作した」
更に、台湾の総統候補である韓国瑜氏らの動きに対して、メディアが多く取り上げるほか、国民党の草の根政治組織にも資金を提供しているという。
「私たちは国民党候補に対して、全力をあげて支持してきた。寺に寄付金を払い、中国と香港を往来し、統一戦線を宣伝し影響を与えた」
台湾全22県市で各地方自治体のトップが選出される2018年統一地方選挙では、政権の野党である国民党が勝利した。王氏はこれらがスパイ工作による「大勝利」だと認識している。
この前回の「実績」を受けて、台湾で新しい任務に就いた。2020年の総統選挙の情報操作に協力し、台湾独立への支持を失わせ、蔡英文大統領を落選させることだという。また、現地の民主主義と人権の侵害を進めることもスパイの仕事のひとつだとした。王氏は2019年5月、偽の韓国パスポートで台湾に滞在した。
◆なぜ脱出しようとしたか
なぜスパイ活動から脱出しようとしたのか、との大紀元からの問いに、王氏は「中国共産党という組織が終わりを迎えると信じている」と述べた。
「中国共産党の香港へのコントロールは、天網(中国本土の情報監視システム)のように、個々人の意識や行動、生活を制御しようとしている。中国共産党の工作が世界の民主主義を破壊し、人権を侵害する専制政治であることも理解した。反共産党、反共産主義の心が次第にわかり、この組織を離れる決意をした」
王氏は米中国語メディア「看中国」のインタビューで、2017年にオーストラリアに移住した妻に子供が生まれたことで、将来を憂い、家族への脅威が増した。スパイ工作から足を洗い、世界の民主主義を破壊する中国共産党の行いを暴露することを決意した。
台湾の大統領選の介入の役割は、その一部は「台湾のヤクザ」とされる三合会との仕事に依存することになるという。このため、王氏は台湾の情報機関に逮捕されることを心配した。王氏は台湾で何時間も絵を描くことに没頭し、やがて、どう逃げだすかを考えるようになったという。「私に何かあったら、家族はおしまいだ。息子はどうしたらいい。誰が守ってあげられるのだろうか」と自問自答を繰り返したという。
王氏は2019年4月にオーストラリアを訪問し、台湾に戻らなかった。「オーストラリアでの滞在中、この国の民主主義と自由を感じとった。しかし、この平和を破壊する中国共産党を恥ずかしく思った。中国共産党の嘘を明かし、人間の民主主義と自由を守ることを選択した」
◆中国時事専門家「中共70年の歴史で最大の深刻な情報漏えい」
在米の中国時事評論家・横河氏は、中国共産党政権の70年の歴史のなかで最も深刻なスパイ情報の漏えいだと分析する。横氏によると、今回ほど内部からの重大な機密漏えいは起きておらず、唯一、米国に亡命した兪強生・元中国国家安全部北米情報部主任がいた。しかし、兪氏はスパイではなく、戦略の漏えいはなかった。兪強生氏は中国人民政治協商会議主席、共産党最高指導部メンバーだった兪正声氏の兄に当たる。
「今回ほど、中国情報当局から内部情報が暴露されメディアに報じられたケースは過去になく、前例のないことだ」と横氏は分析した。
王氏の暴露により、中国の情報機関は社会主義を拡大させる統一戦線の工作、民主主義国の破壊活動、共産党体制異見者の拉致など、多岐に渡る作業があることが分かった。王氏は主に、香港、台湾におけるスパイ活動を行っていたという。
中国共産党による海外の政治・社会・学術・マスメディアへの浸透工作は近年、オーストラリアのメディアを中心に報じられてきたが、実際にスパイであったという王氏が中国情報当局の資料を西側に提出するケースは初めて。横氏は、「ファイブ・アイズ(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報当局の情報共有する同盟)が中国共産党のスパイ情報を入手できることになる」と述べた。
横氏は、王氏の暴露は民主主義と平和を破壊するのが誰なのか、いまだに中国共産党のために諜報活動を行っている人へ強いメッセージを送っているとした。
オーストラリア安全保障情報機関のマイク・バーガス(Mike Burgess)局長は11月25日、声明を発表し、王氏に関する現地メディア報道を念頭にして、「外国スパイに関する諜報活動を注視し、民主・主権を守ることに力を注ぐ」とした。また、提供情報は現在、調査を行い、結論が出るまでは評価しないとした。
(翻訳編集・佐渡道世)