日本では常識として知られるが、中国と中華民国(台湾)が尖閣領有を主張し始めたの
は、国連機構アジア極東経済委員会の調査で、近海海底に豊かな石油や天然ガスが埋蔵さ
れていることが明らかになった1970年代に入ってからである。
日本が尖閣諸島を領土に編入した1895年、国際法の「先占の法理」によって、1月14日に
沖縄県所轄の標識を立てた。当時の清国も、後の中華民国も、その後の人民共和国政権
も、中国で三度国家が交代してもずっと認知していた。
その前に小笠原群島の編入があり、その後に日清戦争の結果、同年4月17日の「下関(馬
関)条約」により台湾の領土編入があった。
もちろん日本の「常識」は、中国や台湾では「常識」ではなく、「古より中国の絶対不
可分の固有の領土」「未回収の固有の領土」だと主張して譲らない。
中国が「固有の領土」と主張する論拠は航海案内書「順風相送」(1403年)をはじめ小
説、文献、紀行、詩詞、神話、地方誌など数十に上るが、ただ「海上の標識」とか「船が
近海を通った」といった記述にすぎず、信憑性が不十分で「固有の領土」を論証すること
ができなかった。一言で言えば、2つの中国の主張は「捏造」と「無法」に尽きる。
アメリカが沖縄施政権を日本に返還する際、アイゼンハワー、ケネディ両大統領をはじ
め、キッシンジャー国務長官も尖閣は沖縄に帰属すると認めており、日本に返還すべきと
の見解を示す文書が残っている。
固有の領土の歴史的論拠も、国際法的論拠も、実効支配の現実によって成り立たない以
上、中国に残された最後の手は、陸の「反日デモ」と、海の「領海侵犯」という嫌がらせ
のみである。
中国が、陸からも海からも日本に対して、ゆすりたかりを行う真の目的とは何か。主に
以下のいくつかが挙げられる。
(1)「尖閣は台湾のもの、台湾は中国のもの。だから尖閣も中国のもの」という3段論
法。「台湾統一」を正当化するためのプロパガンダである。「解放沖縄」「収回琉
球」のスローガンが叫ばれたように、次の目標は沖縄の領有である。
(2)中印、中ソ、中越戦争終結後、戦略的国境線の防衛として海洋進出を目指してい
る。「海に出なければ21世紀の中国はない」と極論。南シナ海、東シナ海で、周辺
諸国と島嶼(とうしょ)争奪をしながら制海権を支配する。
(3)反日デモでは「日本人狩り」「企業襲撃」「商品略奪」といった無法行為が横行し
た。「反日無罪」どころか、反日なら、憲法や国際法も超越し、すべての「無法」
が認められている。「反日」が国是国策として、すべてに優先することを内外に明
示する。