平主席との首脳会談をめざしていたが、中国が難色を示して受け入れなかった。
中国との「祖国統一」を目指していた馬氏にとって、中国と首脳同士で政治対話をする千載一遇
ともいえる国際舞台だった。それが潰えた。
やはり、という感想を持たざるを得ない。なぜなら、台湾の人々は「祖国統一」も「中国との政
治対話」も望んでいないからだ。朝日新聞も、台湾社会の「中台接近への警戒感」の強さを挙げ
「こうした状況下で会談すればかえって台湾社会の反発を招く」という判断があったのではないか
と指摘している。
中国にしても、「一国二制度」を拒否し、香港デモを支持する馬氏と首脳会談したのでは、台湾
併呑を焦っている印象が強い。それ以上に、腰が安定しない馬氏への失望感がいっそう深くなって
いるからというのは穿ちすぎだろうか。11月の台湾の統一地方選挙の結果を見てからでも遅くはな
いと判断したのかもしれない。
中台首脳会談、実現せず 台湾は意欲示すも中国が難色
【朝日新聞:2014年10月8日】
台湾の馬英九総統は8日、11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会
議に、台湾代表として蕭万長・前副総統を派遣すると決めた。台湾は馬氏のAPEC出席と、中国
の習近平国家主席との初の中台首脳会談実現を目指していたが、中国が受け入れなかった。
馬氏は2008年の就任以来、中台関係の改善に取り組み、首脳会談の実現に意欲を見せていた。た
だ、中台はお互いの政権を認めていないため、台湾総統や中国国家主席としての会談は難しい。こ
のため、台湾側は各国・地域の首脳が「経済体の代表」として集まるAPECが会談に最適と位置
づけていた。
これに対し、中国側は「両岸(中台)の間の話であり、国際会議の場を借りる必要はない」など
と、一貫してAPECでの会談を否定してきた。台湾総統はこれまでAPEC出席を認められてお
らず、出席の「前例」をつくることを避けたとの見方がある。馬氏がオバマ米大統領や安倍晋三首
相らと会談した場合、「中台は別々」との印象を深めかねないとの懸念もあった。
また、今年3月には、馬政権下での中台接近への警戒感などから、台湾の学生らが立法院(国
会)を占拠。6月に初訪台した中国の張志軍・国務院台湾事務弁公室主任は各地で激しい抗議に見
舞われた。中台交渉に携わった台湾高官が秘密を漏らした疑いで更迭される事件もあり、中国側に
は、こうした状況下で会談すればかえって台湾社会の反発を招く、との判断もあったと見られる。
(台北=鵜飼啓)