壇』から日本へ」を寄稿されている。
三宅さんは現在、「台湾歌壇」事務局長をつとめる。代表の蔡焜燦(さい・こんさん)
先生の右腕として、歌壇同人の心の支えとなって全幅の信頼を受けている方だ。
歌壇同人の黄敏慧(こう・びんけい)さんは「その優美な短歌作品はいつも私たちの心
を打ち、優しく善良で謙虚でありながら毅然とした正義感に富んだ性格は、私たちの心の
中の『大和撫子』そのもの」と讃え、まるで姉のように慕っている。
今年4月に初の歌集『光を恋ひて』を出版されたことは本誌でもお伝えしたが、この寄稿
では一切触れていない。呉建堂(ご・けんどう)氏らが始めた「台湾歌壇」についてのみ
書かれている。特に、東日本大震災のときに台湾歌壇の同人たちが「居ても立ってもいら
れない気持ちに駆られ」、義捐金だけではなく、「歌に詠んで伝えたい気持ちに駆られて
歌がどんどん寄せられ、台湾歌壇第十五集に特集した」ことを紹介されている。
三宅さんはそのときの気持ちについて「台湾に住んでこの時ほど、台日の精神的な繋が
りの深さを感じたことはない」とつづられている。そして、歌壇同人の思いを「台湾の地
で歌による灯火を明々と命の限り燃え立たせてゆきたい、と歌壇の同人たちは願ってい
る」と伝える。
私事には一切触れず、「台湾歌壇」についてのみつづるこの一文に三宅さんの「大和撫
子」を見るのは編集子だけではあるまい。
この一文の後に、月刊「WiLL」編集部が東日本大震災に寄せた「台湾歌壇」の同人が詠
んだ歌を紹介している。三宅さんの奥ゆかしい一文と併せて味読いただきたい。
なお、月刊「WiLL」のこの号では東條由布子さん(NPO法人環境保全機構理事長)も
「台湾への感謝と慰霊の旅」を寄稿されていて、ここにも蔡焜燦先生や三宅教子さんとお
会いしたことが紹介されている。
最後に、月刊「WiLL」8月号へ苦言を呈したい。
東條由布子さんと三宅教子さんの2本の寄稿をもって「日台友好!」という小特集のよう
な編集となっているのだが、本文の柱に「日台友好!」の文字とともに、日の丸と中華民
国旗、すなわち「青天白日満地紅旗(せいてんはくじつまんちこうき)」が配されてい
る。青天白日の紋章が中国国民党の党章に由来していることは周知のことだ。
台湾の人々の中には未だに中国国民党による「台湾人虐殺」の記憶を留める方が少なく
ない。その虐殺のシンボルと写るのが「青天白日満地紅旗」だ。
月刊「WiLL」の常連執筆者の金美齢さんはこの8月号にも寄稿されているが、金さんが
「ありがとう台湾オリジナルTシャツ」をデザインされたとき、左の袖(そで)に「日の
丸」、右の袖に「台湾の島影が浮かんだマーク」を入れた。その理由を明確に書かれてい
る。「青天白日旗は国民党のマークをあしらった中華民国の旗ではありますが、党のマー
クの入った旗を国旗とすることはできません」と。
そして、この「ありがとう台湾オリジナルTシャツ」の背中には「台湾の民主化と自由
の象徴としての野百合をあしらって『I LOVE TAIWAN』の文字を重ね」たのだ
った。
蔡焜燦先生もまた「台湾歌壇」ホームページに掲載する「代表の言葉」において、その
ホームページに掲げた白百合の花につて「白百合は台湾の野に山に自生する凛として清ら
かな花であり、我々台湾人はこの花を台湾の国の花としています」と述べられている。
台湾独立建国聯盟の主席だった故黄昭堂氏は年下だったが、「ボス」と呼んで憚らなか
った蔡焜燦先生だ。金美齢さんの指摘したように「党のマークの入った旗を国旗」とは認
めていないはずだ。三宅教子さんも同様の思いだと思われる。
そのような台湾の人々の心をあえて逆なでるように中華民国旗を日の丸と一緒に配した
ことはいただけない。何らかの意図があったのか、あるいは単なる勉強不足なのか、理由
は忖度すべくもないが、蔡焜燦先生や三宅教子さんが快く思っていないことは確実だろ
う。ましてや金美齢さんがこれを知ったら激怒するかもしれない。
◆台湾にある日本を伝えたい[2006/1/10] *三宅教子さんへのインタビュー
http://www.tit.com.tw/page_j/food1_1.php?id=313&key=10&tit
◆月刊「WiLL」8月号(6月26日発売 定価:780円)
http://web-wac.co.jp/magazine/will/