フジテレビが国旗誤報事件で本会の書面による質問に口頭で回答

単なる「手続きミス」では済まされないことをフジテレビは理解せず

 日本李登輝友の会は、去る5月4日放映の「FNNスーパーニュース」の番組中、台湾
ラーメンのコーナーで中華人民共和国の五星紅旗を掲示した件で、5月30日に書面で質問状
を呈した。
 これに対して2日後の6月1日、フジテレビの「FNNスーパーニュース」担当者から口頭
で回答がなされた。当方が正式に書面で質問書を提出しているにもかかわらず口頭での回
答とは失礼な対応だが、それ以上に、その回答内容に問題がある。「旗は出さないつもり
だったのに、誤って出してしまったミス」であり、安藤キャスターのお詫びコメントは「
総合的な判断」であり、今後、訂正するつもりはないというのである。
 台湾を中国の一部として報道した責任を、単なる手続き上のミスで済ませようとするフ
ジテレビの姿勢には、事の重大性をどこまで認識しているのか、大いに疑問が残る。
 この問題は、中学校や高校の地図帳が台湾を中国の一部と表記したり、台湾出身者の外
国人登録証の国籍欄が「中国」とされている問題とまったく同根の問題である。
 日本政府は確かに「一つの中国」政策に立っている。しかし、ノービザ実施に明らかな
ように、また天皇誕生日レセプションを台湾と中国と別々に開催していることからも分か
るように、台湾を「統治の実態」と認識している。現実に、台湾と中国という別々の国家
が存在していることを前提として行動し始めているのである。
 ましてや公正な報道を求められる報道機関が、台湾ラーメンを紹介するところで、中華
人民共和国の五星紅旗を掲示して、台湾は中華人民共和国の領土の一部とする中国政府の
主張に立つような偏向報道は許されない。
 事は領土主権に関わることであり、放送法に抵触する問題なのである。「一部配慮に欠
ける表記」をしたと関係者を対象にコメントしただけでは済まされないことを、フジテレ
ビは理解していない。もし日本のテレビ局が尖閣諸島の写真を放映したとき、中国や台湾
の国旗を出したらどうなるか。「一部配慮に欠ける表記」をしたと関係者を対象にコメン
トしただけでは済まされないことは三歳の童子にだって分かる話だ。
 「5月4日、番組中、台湾ラーメンを紹介した際に誤って別の国の国旗を出してしまいま
した。視聴者ならびに関係者にお詫びします」と誤って初めて訂正とお詫びをしたという
ことになる。
 ここに、本会の片木事務局次長がフジテレビに対して送った質問書と、フジテレビから
の口頭による回答をご紹介する。
                   メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原正敬


                              平成18年5月30日

フジテレビ御中

                     日本李登輝友の会事務局次長 片木 裕一

 ご担当の部署等が分かりませんので、「フジテレビ」御中にて失礼致します。
 さて、5月4日の「FNNスーパーニュース」の番組中の台湾ラーメンのコーナーで中
華人民共和国の五星紅旗を掲示した件(以下、国旗誤報事件)と、5月8日の同番組内で
なされた安藤キャスターの意味不明コメントにつきまして、質問申し上げます。両件につ
きましては私どもの会員や他の台湾交流団体からいろいろ問合せあり、かつインターネッ
ト内でも再三採り上げられていることから、本会としましては可能な限りフォーマルな形
で対処したいと考えております。
 また、いただきました回答につきましては、私どもの会報に掲載すること、講演会等で
採り上げ、一過的な問題とすることはなく継続的に検討していく所存です。
 その際、回答本文に修正を加えたり恣意的に一部分を採り上げることは一切しないこと
をお約束申し上げます。
 以下、質問です。

1.国旗誤報事件について
  このコーナーは生放送ではなく、きちんと企画・製作されたものと考えられる。私自
 身ビデオで確認しているが、五星紅旗は立派に挿入されていると感じた。従って生放送
 にありがちな「ハプニング」ではない。

【質問】
  この内容(台湾ラーメンのコーナーで中華人民共和国の五星紅旗を掲示する)で放送
 OKと判断した根拠は何か。

2.意味不明コメントについて
  「先週木曜日の特報の台湾ラーメンの放送に際しまして、一部配慮に欠ける表記があ
 りました、関係者の方にご迷惑をおかけいたしました」というものであるが、例えば中
 華人民共和国の北京でフカヒレ料理を紹介する際、日本の日の丸を掲示してしまっても
 同じだろうか。「誤って別の国の国旗を出してしまった、視聴者(ならびに関係者)に
 お詫びします」として初めて訂正とお詫びをした、ということになるのではないか。
 
【質問】
  (1)誤報部分を特定しなかったのは何故か
  (2)お詫びの対象を視聴者ではなく関係者に特定したのは何故か

 以上、よろしくお願いいたします。
 
 期限は一週間もあれば十分かと思いますが、諸事情で遅れることが確実な場合は、ご一
報くだされば幸いと存じます。
                                      以上


 本件に対して、6月1日16:25、FNNスーパーニュ−ス担当「イソガイ氏」から電話に
て回答あり。口頭での回答とし、書面はご容赦いただきたいとのこと。

【質問1】については、「本件は全くのミスであった。旗は出さないつもりであったが、
内部のチェックミスで出てしまった。今後は十分注意する」とのこと。

【質問2】については「関係者の方々に配慮を欠いた、結果大変不快な思いをさせてしま
ったということで、深く反省している。安藤キャスターも十分認識している。(誤報部分
を)特定しなかったこと、関係者へのお詫びコメントについては、社内で検討し、総合的
な判断で決定した。重ねお詫び申し上げる」とのこと。

 本会は「口頭であっても、この回答は質問時伝えたとおり会報に掲載したり講演会など
で引用する」旨念を押し、上記内容について再確認すると同時に、若干の補足質問を行っ
た。

Q.確かに「関係者」は不快であったが、それ以上にこのこと(台湾は中国の一地域であ
 る、と誤解させる)を自然に受入れてしまう何百万人の視聴者に対し、何が誤りであっ
 たかを伝えるべきではないか? 結果として、まさか台湾へ行くのに中国の大使館へ相
 談に行く人はいないとは思うが……貴社も台湾へ取材に行く場合は台湾の代表処へ相談
 にいくのではないか?
A.ご指摘の点は尤もであるが、総合的に判断した。

Q.社内検討にあたって、上記のこと(何百万人の視聴者に誤解を与えたこと)は議論に
 ならなかったのか?
A.社内で検討して、総合的に判断したので、ご理解いただきたい。

Q.一部ネットでは貴社はこれにて一件落着と考えている、といわれているが、本会は始
 まったばかり、継続的な事件と考えている。近い将来、別の機会にでも訂正する予定は
 あるか?
A.現時点ではその予定はない。

 以上である(内容は確認のため6月2日イソガイ氏へFAX、6日10:50イソガイ氏より
電話あり、了承済)。国旗誤報事件については、制作現場において担当者に知識がなかっ
たのか、意図的であるかは不明であるが、中国の国旗を盛り込んだ。実際、放映ではこれ
を除くよう指示が出ていた(と思われる)が、故意か過失かは不明であるがそのまま放映
してしまったと解釈できる。
 このこと自体問題ではあるが、番組終了間際にでも「異なる国旗を出してしまった、視
聴者に誤解を与えたことをお詫びする」と言っていれば、まだ大事には至らなかった。
 ところが、発生後4日もたってから出されたのが、何が間違いか不明でかつ視聴者には
何も関係のないようなコメントだったため、「ただのミス」が新たに「組織的で悪質」な
問題を生んでしまった。いかに民放とはいえ、報道は公正でなければならない。
 かなり以前の話ではあるが、テレビ朝日のニュースステーション(久米宏氏)は、これ
もラーメンの話で「シナチクを……」と言ってしまい、番組終了間際に「シナチクは、正
しくは『メンマ』と言うべきだった、お詫び申し上げる」とコメントした。このような些
細なことでも訂正するのである。
 思うに、フジテレビは「国旗間違い」は単に表現上の問題であり、事実と異なる重大な
誤りであるという認識がないのではないだろうか。ことは放送法に十分抵触する問題であ
る。本会はフジテレビが「重要な誤り」であることを会社として認識するまで、継続して
働きかけていく所存である。



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