本誌ではこれまでバイデン政権の対台湾政策のポイントについて、1)トランプ政権の「自由で開かれたインド太平洋戦略」を受け継ぐかどうか、2)バイデン大統領による「国家安全保障戦略」の発表、それを受けて国防省が発表する「国家防衛戦略」、3)台湾への武器供与の3点を挙げ、バイデン政権の対台湾政策を見極めようとしてきた。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」については、戦略とまでは言及していないもののほぼ踏襲することを基本として菅義偉総理との日米首脳会談に臨み、共同声明でも「自由で開かれたインド太平洋、そして包摂的な経済的繁栄の推進という共通のビジョンを推進する」と記した。後はどのように戦略として展開するかで、これは大統領の「国家安全保障戦略」と国防省による「国家防衛戦略」の発表を待ちたい。
対台湾政策の大きな指標となるのが台湾への武器供与だ。トランプ政権以前の米政権のアジア戦略は、日本の尖閣諸島への対処によく現れているように「戦略的曖昧性」が特徴だが、武器供与はその曖昧性を払拭する米国の決断を示すと言っていいだろう。
4月19日付の日本経済新聞は、台湾のメディアが「バイデン政権では初めてとなる台湾への武器売却を、近く承認する見通しになった」と伝えていることを報じ、米国が開発した自走砲「M109A6(パラディン)」100両以上の購入を予定し、2023年から25年までに納入予定だと伝えている。
トランプ政権の4年間で台湾へは11回も武器を供与しているが、1回目は2017年6月29日で、魚雷「Mk-48Mod6型高性能重魚雷」46発やSM2艦対空ミサイル部品、早期警戒用レーダーの技術支援など7項目にわたった。
それに比べ、バイデン政権ではすでに4月に武器供与が持ち上がっている。日経によれば「台湾が現在保有する自走砲は20年以上前に米国から購入したもので、老朽化が進む。米国に長年、新型への更新・売却を求めていた」という。
未だ台湾への武器供与の続報はないようだが、バイデン政権が武器供与を決定したとすれば対台湾政策の本気度はトランプ政権並とみなすべきだろう。
—————————————————————————————–米、台湾にまた武器売却か バイデン政権で初【日本経済新聞:2021年4月19日】
【台北=中村裕】台湾の複数メディアは19日、米政府がバイデン政権では初めてとなる台湾への武器売却を、近く承認する見通しになったと報じた。米国が開発した自走砲の売却が予定される。トランプ前大統領は昨秋から台湾への武器売却を加速させたが、バイデン政権も流れを受け継ぐ可能性がある。
米国が新たに台湾への武器売却を正式承認すれば、中国の激しい反発は必至だ。台湾の複数メディアによると、自走砲「M109A6(パラディン)」の売却が予定される。米軍で配備が進む1世代前のモデルだ。外観は戦車に似るが、異なる。戦車は敵の戦車を撃破するのが主な目的で、自走砲の撃破対象は戦車に限らず、用途の広さが特徴だ。
台湾が現在保有する自走砲は20年以上前に米国から購入したもので、老朽化が進む。米国に長年、新型への更新・売却を求めていた。台湾は今回、自走砲100両以上の購入を予定し、2023年から25年までに納入予定だという。
米国による台湾への武器売却は、トランプ前政権時代に加速した。特に昨年10月から11月にかけては、軍用無人機(ドローン)やミサイルなど計5000億円の武器売却が決まった。トランプ前大統領は在任中、台湾へ少なくとも11回の武器売却を決定。中国への配慮から台湾への武器売却を限定したオバマ政権時代からは環境が一変した。
台湾の国防部(国防省)トップである邱国正・国防部長(国防相)は19日、「(新たな自走砲の)購入は以前から計画しているが、米政府からまだ正式な通知は受けていない」と語った。
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