今朝の共同通信の記事に、米国のバイデン政権で国家安全保障を担当するジェイク・サリバン大統領補佐官の発言を紹介していた。本誌でも何度か指摘してきたように、サリバン大統領補佐官は、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官、国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官と国家安全保障担当の大統領副補佐官を兼任するカート・キャンベル氏とともに、バイデン政権で対台湾政策と対中国政策に強い影響力を持つキーマンの一人だ。
サリバン氏はCNNテレビのインタビューで「これまでの米国の対中政策について誤りの一つは『米国の政策によって中国のシステムを根本的に変革させる』という考え方だった」と述べたという。また、その発言を補うように「バイデン政権の目標は中国に『根本的な変革』をもたらすことではない」とも説明したという。
短い記事だが、バイデン政権の中国観を端的に示す発言を紹介した重要な記事ではないだろうか。
それで思い出したのが、トランプ前政権で副大統領だったマイク・ペンス氏の2018年と2019年の演説だ。ペンス副大統領は2018年10月4日、米国の中国政策の転換を宣する「中国政策に関するコメント」と題する演説をハドソン研究所において行い、翌2019年10月24日にも、「米中関係の将来」と題する演説をウィルソン・センター主催で行っている。
2018年の演説では、中国共産党政権による知的財産権窃盗やキリスト教徒・仏教徒・イスラム教徒への迫害、借金漬け外交などを指摘するとともに、中南米3ヵ国への台湾との断交は「台湾海峡の安定を脅かす」と指摘。さらに「これまでの政権は、中国での自由が経済的だけでなく政治的にも、伝統的な自由主義の原則、私有財産、個人の自由、宗教の自由、全家族に関する人権を新たに尊重する形で、あらゆる形で拡大することを期待してこの選択を行ってきました。しかし、その希望は達成されませんでした」と述べ、中国政策を転換することを宣した。
2019年の演説では「米国は、台湾が民主主義を受け入れたことは全ての中国人により良き道筋を示すものだと確信している」と強調し、中国に関して「米国はもはや、経済的関与だけでは中国共産党の権威主義的体制を自由で開かれた社会に転換できるとは期待していない」と述べ、歴代米政権がとってきた、中国が経済的に発展すれば民主化が促進され、国際社会の一員として責任ある振る舞いをするとの幻想は抱いていないという立場を明確に示した。いわば、中国への決別宣言ともいうべき演説だった。
民主党政権下のサリバン大統領補佐官による「米国の政策によって中国のシステムを根本的に変革させる」という考え方は誤りだったとする発言は、あたかも共和党政権のペンス副大統領の演説を踏襲したかのようだ。
バイデン大統領は10月21日にCNNテレビの番組に出演した際、「中国が台湾を攻撃した場合、アメリカは台湾を防衛するのか」と質問されたのに対し「そうだ、われわれはそうする責務がある」と答え、10月26日にアントニー・ブリンケン国務長官は台湾の国連組織への参加を支持する声明を発している。
サリバン大統領補佐官は、バイデン政権の台湾政策と中国政策はトランプ政権をしっかり引き継いでいることを明らかした。
—————————————————————————————–中国の台湾圧力に「懸念」 サリバン米大統領補佐官【共同通信:2021年11月8日】https://nordot.app/830180402153684992
【ワシントン共同】サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は7日放送のCNNテレビのインタビューで、台湾への軍事的圧力を強める中国について「一方的な現状変更に反対する。安全と安定を揺るがす中国の活動に懸念を抱いている」と強調、台湾の自衛能力を支援する考えも示した。
一方で、米中関係については「新しい冷戦ではない」と指摘。これまでの対中政策について誤りの一つは「米国の政策によって中国のシステムを根本的に変革させる」という考え方だったと述べ、バイデン政権の目標は中国に「根本的な変革」をもたらすことではないと説明した。
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