「国境をなくせ」というのはグローバリストたちの合い言葉、かれらの究極の狙いは国家の破壊である。ビットコインやリブラという暗号通貨を叫ぶのも主として彼らグローバリストで、中央政府の発行する通貨に併行して無国籍通貨の流通を主張するわけは国家の破壊が究極の目標にあるからだ。
もともと中央銀行のほか、民間も通貨を発行すれば競合がおきて良貨が悪貨を駆逐すると、昔の諺のあべこべを言い出したのはハイエクである。
ハイエクを源流とするリバタリアン的な思潮はミルトンフリードマンに引き継がれ、一時期はマネタリズムが欧米を蔽ったこともあった。
だが、グローバリズムの頓挫は、難民問題から起きた。
シリア難民がトルコへ押し寄せ、ついでトルコからバルカン半島やハンガリールートを経由して数十万人がドイツへ押しかけた。
ドイツでは移民排斥の運動が勃興し、議会で大きな勢力となって、フランスやイタリア、オーストリアへと飛び火した。
ハンガリーのオルバン首相はナショナリスト、国境のバリケードを高くした。セルビアやポーランドも続いた。イタリアは地中海からやってくるアフリカ難民に手を焼き、EUいずれの国も移民問題が直接の動機となって、ナショナリズムの再活性化を見る。グローバリストたちの新聞は、これを「極右の台頭」と書いた。あるいはネオナチとも。
EUの団結は弛緩し、ユーロは通貨安の危機に瀕し、そしてスペインのバルセロナを中心としたカタロニア独立運動が再燃した。
激烈なデモ行進と抗議集会がバルセロナでは日常茶飯となった。警官隊と衝突を繰り返し、火焔瓶が投げられ、政府や公共物の破壊が行われた。まさに香港で起きていることが伝播した。SNSの呼びかけで忽ち参加者が膨らみ、激突も過激化する。
バルセロナといえば、年間数千万の観光客が押し寄せる名勝でもあり、ヨットハーバーには世界の金持ちの豪華ヨットが華を競っている。
もともとカタルーニャ(カタロニア)州は、フランコ独裁時代に独立運動が封じ込められていたが、強圧的統治が弛緩すれば地下のマグマが爆発する。カタロニア語は、スペイン語ではない。言葉が違うという意味は、カタロニアの人々はスペインの首都マドリッドの支配など受けたくないということである。ちなみにスペイン「名物」の闘牛はバルセロナでは競技場さえない。
▲独立運動は地下のマグマが吹き上げたのだ
独裁が緩むと一斉に不満が爆発して独立嗜好となるのはチトー亡き後のユーゴスラビアが証明した。スロベニア、ボスニア&ヘルツェゴビナ、クロアチア、セルビア、モンテネグロ、マケドニア……そしてまぐれ当たりで「コソボ」までが独立を宣言し、欧米が支援した。
それぞれ歴史、宗教、伝統、言語の違いから独立したのだが、きわめて速やかに国連は認めた。その欧米が、チベット独立や台湾独立に沈黙しているのは明らかに矛盾している。
コソボは独立の準備も国家としての準備もないままに、欧米が独立を唆したのもセルビアを困らせるためだった。コソボはいつのまにかアルバニア人が多数を占めていた。
そして英国でも独立運動が顕在化するのはBREXITの余波、スコットランド最大の都市=グラスゴーでは11月2日に「独立」派が大規模デモを組織化し、集会には「スコットランド民族党」(SNP)党首のニコラ・スタージョン(スコットランド行政府首相)も登場して気勢を挙げた。ちかく住民投票で独立の賛否を問うという。
この独立運動が意味することは、世界を覆ったグローバリズムの思想的破産であり、つぎなる独立運動の再燃は台湾、香港となるだろう。
習近平は、憮然としているに違いない。