日本李登輝友の会は2004年以来、日本李登輝学校台湾研修団(略称:李登輝学校研修団)を台湾に派遣して今年で14年目となり、28回を数えたが、李登輝元総統のお元気なうちにきちんとお話を伺いたいというのが発端だった。
講師という形で毎回、6、7人の先生方をお招きして台湾情勢や日台関係をテーマに講義していただいている。これまで、李登輝元総統は毎回のことで、許世楷(元台北駐日経済文化代表処代表)、蔡焜燦(李登輝民主協会理事長)、羅福全(台湾安保協会会長)、黄天麟(台日文化経済協会会長)、李明俊(台湾安保協会副理事長)、黄智慧(中央研究院民族学研究所)、鄭清文(作家)、何瑞藤(台湾大学名誉教授)、黄昭堂(台湾独立建国聯盟主席)、彭栄次(元亜東関係協会会長)、張炎憲(元国立國史館館長)、呉密察(台湾大学歴史学部教授)など、本当に多くの方々からお話をお聞きした。
実は、お話もさることながら、いまでなければお会いできない方にお会いするのが本当の目的だ。
上に挙げた方々の中でもすでに蔡焜燦、鄭清文、黄昭堂、張炎憲の各先生は鬼籍に入られている。だから、お元気なうちにお話をお聞きしておきたい。それが、李登輝学校研修団の真の目的であり、日本人が台湾との交流をつむいでいく上で必ずや礎となると信じている。
いささか前置きが長くなったが、ここに紹介する『日台関係を繋いだ台湾の人びと』の主旨も李登輝学校研修団と同じだ。
本書の序文で酒井正文・平成国際大学教授は「日台関係の維持・発展は、多くの日本と台湾の人びとによる艱難の賜」と記し、本書では辜振甫、江丙坤、許世楷、曽永賢、蔡焜燦の4人を取り上げている。執筆者はいずれも日台関係研究会に所属する学者や大学院生など。
中でも、浅野和生氏が取り上げた曽永賢氏は、日本ではほとんど知られていない中国共産主義研究者だ。現在、93歳。李登輝氏が総統時代に見出した人物だ。李登輝時代から陳水扁時代に替わっても総統府国策顧問や資政という立場で重用されたという。
中国という覇権主義国家の正体を正確に見極めなければならない情勢にある現在、米国では中国共産主義研究が着実に進んでいる。しかし、日本はどうかという危惧の念は消えない。その意味でも、共産主義者から転向した曽永賢氏の軌跡を日本人が知ることは重要だ。
また、辜振甫、江丙坤、許世楷、蔡焜燦の各氏の軌跡をまとめて読む機会はまずないと言ってよい。ご一読を勧めるゆえんである。
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・辜振甫と日台関係 渡邉耕治(わたなべ・こうじ)・台湾経済の世界化を担った江丙坤 山形勝義(やまがた・かつよし)・許世楷駐日代表と日台関係の発展 松本一輝(まつもと・かずてる)・曽永賢の生涯と日台関係 浅野和生(あさの・かずお)・蔡焜燦氏逝去に哭く 加地直紀(かち・なおき)
・書 名:日台関係を繋いだ台湾の人びと・編 者:浅野和生・執筆者:酒井正文、渡邉耕治、山形勝義、松本一輝、浅野和生、加地直紀・版 元:展転社 http://tendensha.co.jp/index.html・体 裁:四六判、並製、250ページ・定 価:1,700円+税 ISBN978-4-88656-450-4 C0331・発 売:2017年12月15日